ポケモンの新規事業発表会が10日に都内で開催され、ポケモンの石原恒和社長、Niantic(ナイアンティック)のCEOを務めるジョン・ハンケ氏、GAME FREAK取締役開発本部長の増田順一氏、任天堂専務取締役の宮本茂氏が登壇した。

左から、GAME FREAKの増田順一氏、ポケモンの石原恒和氏、Nianticのジョン・ハンケ氏、任天堂の宮本茂氏

すでに報じられているとおり、ポケモン、Niantic、任天堂の3社合同によるAndroid/iOS向け新サービス『Pokémon GO』を、2016年よりスタートすることが発表された。石原氏が「一社単独で手がけるアプリ開発ではない」と発言したように、これは単なる新しいゲームタイトルではなく、まさにポケモンが見据えている新しいゲームの未来像を感じさせるものだった。

ポケモンがリリースしている『ポケットモンスター』シリーズは、1996年に第1作が発売されて以来、全世界でシリーズ累計販売本数は約1億9,800万本(2015年3月末現在、任天堂調べ)を記録した、ゲーム界の大御所中の大御所になっている。そのポケモンが新たなパートナーに選んだのが、位置情報ゲーム『Ingress』でスマホゲームに革命を起こしているNiantic。この決断にも、ゲームの新時代に向けてのポケモンの覚悟が垣間見えた。さらにゲーム界の巨人・任天堂を加えた3社は、ゲームに対する"哲学"を共有していたという。本記事では、会見で語られた内容を全文書き起こし、その"哲学"に触れていきたいと思う。

任天堂前社長・岩田聡氏と取り組んできたプロジェクト

石原氏:これまでポケモンはあまり大がかりな発表会は行ってきませんでしたが、このプロジェクトだけは、しっかりみなさんに直接伝えていきたいと考え、このような場を設けさせていただきました。実は、本日発表するプロジェクトは、2年にわたり、任天堂の前社長・岩田(聡)さんと取り組んできたものであり、本来であれば今日ここで一緒に発表したいと考えていました。そんな思いもあり、この発表会を企画いたしました。

それでは、新プロジェクトの発表を行います。まずはこのビデオをご覧ください。


いかがでしたでしょう? ご覧いただきました通り、今回の新プロジェクトは、スマートフォンを使った『ポケモン』の新たなゲーム『Pokémon GO』となります。

そして、この『Pokémon GO』を実現するにあたって、新しいチームが生まれました。今回、このプロジェクトの開発を手がけるのは、グーグルの社内スタートアップから始まった、Niantic labsです。先日発表がありましたが、このNiantic labsは、Niatic,inc.として独立し、新会社として設立されました。ポケモンは、Nianticをビジネスパートナーとして、『Pokémon GO』を推進します。そしてもう一社、任天堂も同様にビジネスパートナーとして参加していただくことになりました。本日はNiantic、任天堂、ポケモン、この3社で手がける新たなプロジェクトについて、お話させていただきます。

『ポケモン』と共通する哲学をもった『Ingress』との出会い

まずは、なぜこのプロジェクトが生まれたのかについて少しお話をさせてください。みなさんよくご存じと思いますが、『ポケモン』ではゲームの中で集めたポケモンを現実の友達と交換したり、バトルをさせたりすることができます。先日も、ボストンでポケモンのゲームとカードの世界一を決める大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス 2015」が開催されましたが、ゲーム内のポケモンがリアルなコミュニケーションのきっかけになって、世界中のプレーヤーとの交流が生まれています。また『ポケモン』では、日本の北海道や関東地方、そしてニューヨークやパリなどの実際の地方が冒険の舞台のモチーフになっています。

このように、ポケモンの冒険世界は現実世界に近く、そして現実の地図から想像しやすい形でもう一つの別の世界を形成しています。そして、ポケモンを探したり、交換したりすることによって、現実世界とゲーム世界の交流を促し、双方が豊かになることを目指してきました。そこである日、私が『ポケモン』の次の構想を練っていた時に、ベータテストを終えて間もなくの『Ingress』というゲームを持ってきてくれた人がいました。私はそのゲームに衝撃を受け、そして夢中になり、また同時に『ポケモン』と共通する哲学があると感じていました。そして、(『Ingress』を開発した)Nianticとなら、『ポケモン』の新しいゲーム世界が構築できると考えました。私に『Ingress』というゲームを持ってきてくれた人を紹介しましょう。NianticのCEO、ジョン・ハンケです。