ジョブズ体制からクック体制へ

昨年まではiPhoneが9月、iPadが10月のアップデートでサイクルが固定されていたが、今回iPhoneとiPadが同時に発表されたことで、このサイクルも崩れることになった(ただしiPad Proの販売時期は引き続きズレている)。これはある意味、ジョブズ時代のサイクルへの離別なのではないかと思っている。

iPhoneに代表される製品戦略は、基本的に故スティーブ・ジョブズCEOが築き上げてきた戦略に沿って進められてきたものだ。思い返せばジョブズの死後4年間で、厳しい秘密主義からリークの容認、ジョブズが否定していた7インチ級iPad(iPad mini)のリリース、ファッション業界など他業種からの積極的な人材登用、iPhoneの2サイズ展開、新しい製品ラインとしてのApple Watchなど、クックCEOはジョブズ体制を継承しつつ、徐々に自分の体制に置き換えてきたように思う。今回の新製品でも、例えばiPad Proではジョブズが否定していたスタイラスペンが導入された。

そして今回、製品サイクル自体も動かすことで、ジョブズ体制からクック体制の移行が完全に完了したのではないだろうか。冒頭でも書いたが、製品の発表数も多いとはいえ、異例の規模の発表会に多数のメディアを招待したのは、クック体制が完成したことをアピールするという意図があったのではないだろうか。