「アルゴリズム」と「組織」を見直して、さらに高速化

―― 具体的に、どんな工夫でBluetooth通信を高速化されたのですか?

隅氏「FR10での使い方、つまり画像転送を前提としたり、クイックレスポンスを実現するためのBluetoothプロトコル(編注:通信を行うための約束ごと)を独自に設計しています。あと、これはカシオの得意な部分なのですが、アルゴリズムの無駄を省くことですね。

プログラムを細かく検証して、遠回りや重複といった無駄な処理をひとつひとつ潰していく、という地道な作業を重ねていくことで、全体のシーケンスを高速化しています。チリも積もれば…的な作業です。」

EX-FR10は「カメラスタイル」「自分撮りスタイル」「セパレートスタイル」という3つのスタイルを持つ。上段左がカメラスタイルで、ひんじ部分を伸ばして自分撮りスタイル(上段右)、下段はセパレートスタイル。カメラ部と液晶モニター部(コントローラー部)が分離していても合体していても、両者はBluetoothで通信している

野仲氏「組織全体を見ることも大切です。各ブロック単位で担当者を決めて、それぞれがプログラム開発を進めていくのですが、それらは必ずしも共通の約束事で進んでいるわけではありません。そこで、別の人間がこれら縦割りの作業を貫くように横串の視点を通してやる。すると、効率化できる部分が見えてきます。」

隅氏「プログラムを担当する人間は、できるだけ人数を増やさない、というのも1つのコツです。一人の人間が多くの部分を把握して作業したほうが、各プログラムが共通の約束事のもとに自然と効率化されますから。」

柳氏「高速化は本当に大切ですね。FR10は、カメラ部とコントローラー部が分離しているか合体しているかに関わらず、両者の通信を常にBluetoothで行っています。

分離しているときはともかく、合体しているときはワイヤレス通信しているように見えないので、ユーザーの目が厳しくなるんですよ。操作感をなるべく一般的なカメラに近付けないと、動作が遅くて使いにくいと思われてしまう。Bluetooth接続しつつ、操作感を一体型カメラにどれだけ近付けるかは、非常に大きな課題でした。」