カメラ部と液晶モニター(コントローラー)部が分離するという斬新なスタイルで衝撃的デビューを飾った、カシオのデジタルカメラ「EXILIM(エクシリム) EX-FR10」(以下、FR10)。前回はカシオ計算機 QV事業部長の中山仁氏に、コンセプトや目指すものについて語っていただいた。今回は、開発スタッフのキーマンを直撃。FR10の技術や開発において苦心された点など、より掘り下げてお話をうかがった。

新しい撮影スタイルを可能にしたEXILIM EX-FR10。本体カラーは、ホワイト、オレンジ、グリーンの3色

一番苦労したのはBluetooth

ご対応いただいたのは、カシオ計算機 QV事業部 の野仲一世氏、 柳和典氏、そして隅秀敏氏。お三方とも現在はQV事業部の所属となっているが、FR10の開発時には、事業部を離れた独立プロジェクトチームとして活動していたという。つまり、通常ラインの製品とは無関係なFR10専属の開発部隊だ。このことからも、FR10は肝いりのプロジェクトであったことが分かる。

カシオ計算機 QV事業部 第二開発部長
野仲一世氏

カシオ計算機 QV事業部 第二開発部
室長 柳和典氏

カシオ計算機 QV事業部 第二開発部
隅秀敏氏

野仲氏「最初は数人のチームで進めていたのですが、開発が追い込みに入るにつれて人が増えていき、最後はQV事業部一丸となって取り組みました。あれは、今考えてもすごいエネルギーでしたね。」

柳氏「みんな、新しいものを生み出そうという気概にあふれていました。だから、私たち(プロジェクトのコアメンバー)にとっても、通常の製品ラインから隔絶された環境と時間をもらえたのは大きかった。既存の価値観を気にすることなく、自分たちの信じた道を進めましたから。」

―― 中山事業部長に、FR10の開発には3年を費やしたとうかがいました。

隅氏「最初は、6カ月で開発するスケジュールだったんです。でも、ウェアラブルから分離型になり…と、コンセプトや仕様、デザインがどんどん変わって行きました。で、気が付いたら3年たっていた。たとえるなら、短距離走に参加したのに、走り終わってみたら長距離走だった、という感じです(笑)。」

―― 形状も仕組みも従来のデジタルカメラと大きく異なるFR10ですが、開発時に苦労された点も多かったのでは?

野仲氏「一番苦労したのは、分離型(による通信)を実現するためのBluetoothまわりです。本体サイズとバッテリー容量などの兼ね合いもあり、最初から通信技術はBluetoothで行こうと決めていました。

カメラ部とモニター部の通信には、Bluetooth 2.1を使用

ただ、Bluetooth 3.0は通信は速いものの、消費電力が大きい。一方、消費電力の小さいBLE(Bluetooth Low Energy)だと、画像をストレスなく転送できるほどのスピードが出せません。

FR10にはWi-Fiも搭載しましたが、あくまでスマートフォンとやりとりするための装備という位置付けです。Wi-Fiも消費電力が大きいので、カメラ部とモニター部をワイヤレス接続する通信手段には使えません。そこで、Bluetooth 2.1を使うことにしました。」

隅氏「Bluetooth 2.1でも、仕様を考えると本当は遅いんです。開発部内からも、この企画そのものに無理があるんじゃないかという意見も出ました。でも、いろいろと工夫をした結果、Bluetooth 2.1の限界に近い速度を出せたと思います。」