追加アプリなしとセキュリティで訴求し、iPhoneを使う理由となるか?

これまで繰り返してきた通り、iOS 8のメッセージ機能は、現在のモバイルメッセージングアプリのトレンドをほぼ全て踏襲した物だ。音声やビデオ通話についても、FaceTimeが利用でき、電話番号でもiMessageで利用しているメールアドレス宛にも、直接かけることができる。

メッセージアプリとの最大の違いは、iPhoneに入っている標準機能であるため、新たなアプリをダウンロードする必要がなく、アプリを購入するためにiPhoneユーザーの誰もが作るApple IDさえあればすぐに使い始めることができる点だ。

アプリのダウンロードとアカウント作成、友達の追加、といったメッセージアプリで必要なステップを経ることがない手軽さと、Macとのより深い連携を楽しむ事ができる点が、iOS 8の新しいメッセージの強みとなる。これに追い打ちをかけるのが、セキュリティ問題だ。

筆者の周りでも、LINEの乗っ取り被害に遭っている友人が少なくない。電話番号やメールアドレスの登録、パスワードの複雑化、他の端末でのログインを不許可にする、といった基本設定で防ぐことができるが、裏を返せばこうした対策をせず、アプリをダウンロードしてすぐにLINEを使い始めてそのまま使っているというユーザーが被害に遭っているのかもしれない。

iMessageの場合、Apple IDの認証が入るため、Apple IDのパスワードを厳重に管理しなければならない。もし漏れた場合、Apple StoreやApp Storeでの購入も可能になるため、LINE乗っ取り程度の被害では済まないが、端末全般で利用するメールアドレスとパスワードの1対をしっかり管理ほうがシンプルだ。

iMessageにはLINEのようなスタンプ機能はないが、簡単さと安心さ、そしてグループ機能などの楽しい機能の追加は、iPhoneユーザー同士の頼れるメッセージングプラットホームとして信頼できるものだ。定着するに従って、iMessageが「iPhoneを使う理由」の上位に位置するようになると、AppleによるiPhoneへの囲い込みに大きな効果を発揮することになるだろう。

松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を追求している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura