ストレージの価値はハードウェアからソフトウェアに

IDC Japan株式会社 サーバ/ストレージ/IPDS/PCs グループディレクター 森山正秋氏

IDC Japanサーバ/ストレージ/IPDS/PCs グループディレクターを務める森山正秋氏によれば、IT市場においては、メインフレーム、クライアント/サーバシステムに続き、クラウド/モビリティ/ビッグデータ/ソーシャル技術で形成される「第3のプラットフォーム」が台頭しつつあるという。

こうしたプラットフォームの世代交代のタイミングでは、システムにアクセスする人やデバイスの規模、そこで生成されるデータや稼働するアプリケーションの数が、幾何級数的に増大するという。特に、非構造化データは著しく増えることが予想され、IDCは年平均成長率を43%と見込んでいる。

「こうして増大する非構造化データを、どれだけ効率的に適正なコストで管理するか、これらのデータからどれだけビジネスに役立つ情報を引き出せるかが、大きなポイントとなります」(森山氏)

IT市場における第3のプラットフォームの台頭

そこで課題となるのがストレージだ。第2のプラットフォームに最適化された既存のストレージ技術は、柔軟性や拡張性、俊敏性、管理の容易性、コストという点で、第3のプラットフォーム時代への対応が困難である。そこで、サービスプロバイダーを筆頭に、新しい技術を採用する例が増えつつあるという。

森山氏は、今後のストレージ市場をけん引する要素として、クラウド、フラッシュ、SDS(Software Defined Storage)、コンバージドシステムという4つをあげた。こうした新しい技術の登場で、これまで実現できなかった効率性や俊敏性、高速性などを実現できるようになる。

ワールドワイドでは、パプリッククラウドストレージの利用が一般化し、Cloudianに代表されるSDSへの投資額も高い成長率を見せているという。SDS市場にはさまざまなベンダーが参入し、さまざまなデータ管理技術が登場し、ソフトウェアからハードウェアまで多様な製品が提供されるようになった。

「ストレージの価値が、ハードウェア中心からソフトウェア中心にシフトしようとしています。また提供形態が多様化することで、ユーザーの選択肢も広がっています。こうした新しい技術に投資する際は、過去の投資パターンや構築パターンにとらわれず、柔軟に最適なソリューションを選択することが重要です。新しい技術の複合的なメリットを最大限に生かすことを考えましょう」(森山氏)

Software Defined Storageを実現するフレームワークを持ったソリューション

インテル株式会社 クラウド・コンピューティング事業本部 シニア・スペシャリスト 田口栄治氏

インテル クラウド・コンピューティング事業本部 シニア・スペシャリストである田口栄治氏は講演の冒頭で、森山氏が紹介した第3のプラットフォームへの動きに賛同し、IT基盤が大きく変革する「激動の時代」に突入していると表現した。

「現代のITの最大の特長は、さまざまなセンサーやメディアから得られるデータを上手く活用し、ユーザーの生活を豊かにすることで、ビジネスの収益を伸ばすことにつきます。新しいデジタルサービス経済が生み出されるほどに、経済構造が変化しているのです」(田口氏)

現在は、アプリごとにシステムを組んでいた伝統的な時代から、アプリごとに仮想システムを構築できる時代に移ってきている。今後はさらに進化して、アプリが自動的にシステムを定義する「Software Defined Infrastructure(SDI)」の時代へ進んでいくだろう。

SDI: ソフトウェア・デファインド・インフラストラクチャー
クラウド型基盤の進化 サービス・アプリケーションがシステムを定義する世界

「現在の仮想化基盤は、まだ“ハードウェアボックス”への依存が高く、粒度の荒いリソースプールしかありません。CPUやメモリ、ストレージなどのあらゆる要素を細かく動的に割り当てられる、真のSDIが必要です」(田口氏)

真のSDIの実現において、ストレージの変革が非常に重要だ。最近では、「重複排除」によって絶対的なデータ量を削減したり、使用頻度の低いデータを安価なネットワークストレージに移行する「ティアリング」を用いたりする手法が増えている。安価なコモディティサーバをベースとして活用しつつ、こうした高度なソフトウェア技術で効率的なデータ管理を実現する、SDIの実現がポイントとなる。

田口氏は、SDIの実体は単一のシステム/ソリューションではなく、動的にポリシーベースでストレージ資源を管理できる分散型のストレージシステムであるとする。そこでポイントとなるのが、ストレージオーケストレータの存在だ。

Cloudianは、データを読み書きするだけのシステムではない。I/Oやオブジェクト化などのストレージ管理がフレームワーク化されている点で、SDSとなる可能性を持っていると、田口氏は評価する。

「今後、分散ハードウェアを活用してストレージを構築するソリューションが増えていくでしょう。まさに『ストレージ戦国時代』です。その製品が、自社の目的に適合しているかどうか、しっかりと見極めることが重要です」(田口氏)