ソニーが発売した「VAIO Fit 13A」は、ひとめ見た感じは、普通のクラムシェル型ノートPCだ。
だが、天板の中央部から液晶が反対側に回転し、スタイルが変形。タブレットとしても利用できる2in1 PCとなっている。兄弟モデルとして、同じデザインを採用した15.5型のVAIO Fit 15Aと、14.0型のVAIO Fit 14Aも用意しており、VAIO Fit 13Aだけがモバイル用途に最適化したUltrabook仕様となっている。
これらに共通しているのは、あくまでもクラムシェル型ノートPCとしての利用を前提に開発したPCであるという点。それが他の2in1 PCとは大きく異なる。ソニーがVAIOシリーズのなかで、伝統的なクラムシェル型ノートPCと位置づける「Fit」のブランドを冠したところにもその姿勢が見て取れる。
果たして、VAIO Fit 13Aはどんな狙いで開発されたPCなのか。
変形はVAIO Fit 13Aの"本質"
VAIO Fit 13Aを初めて目にしたとき、その斬新な変形ぶりに驚いた。天板の中央に刻まれた横一線の溝から、液晶部分が反対側にひっくり返り、それをたたむとタブレット端末に変身する。
これまでのPCの変形は、液晶部がスライドしたり、液晶全体がそのまま回転したり、360度反対側まで折り曲がるといったものであり、その変形の仕方にはだいたい予想がついた。だが、VAIO Fit 13Aは、予想だにしなかった部分を起点として、液晶が回転する。その構造に驚いたのだ。また、この構造は、一部の2in1 PCで見られていた、タブレットモードの際に、キーボード部が裏側にくるといったことがない点でも優れたものだといえる。
そして、なににも増して、最初の佇まいが、クラムシェル型のノートPCであるという印象しか感じさせない点が、明らかに他の2in1PCとは違うのだ。
実はそこにVAIO Fit 13Aの本質がある。
ソニー VAIO & Mobile事業本部VAIO企画部・佐藤洋輔氏は、「Windows 8によって、タッチ対応という新たなユーザーインタフェースが採用されるようになった。それにあわせて、タッチ対応に最適化した製品が登場しているが、当社のDuo 11に代表されるように、どれもフラッグシップに位置づけられる製品が中心となっている。マスボリュームに対して、しっかりとしたタッチ操作が提案できる製品、クラムシェル型ノートPCでありながら、違和感なくタッチ操作できるものが作れないか、という点に企画の発端があった」とする。
ノートPCの基本形であるクラムシェル型は、もともとタッチ操作を前提にデザインされたものではない。そのため、液晶をタッチすると画面が揺れたり、強くタッチした場合には、反対側に倒れてしまうということもあった。そのために各社は工夫を凝らした2in1PCを開発してきた。
だが、どれにも共通しているのは、いかにも「変形する」という雰囲気を醸し出していた点だ。つまり、一見、クラムシェル型のデザインとなってはいても、大掛かりなヒンジ構造などを見ると、変形する際に必要とされる稼働部分の堅牢性の追求などによって、ちょっと違和感を感じざるを得なかったのだ。
VAIO Fit 13Aは、そうした雰囲気がまったくない。完全にクラムシェル型ノートPCにしか見えないのだ。これは兄弟機であるFit 14AおよびFit 15Aでも同じだ。
「クラムシェル型ノートPCとしての使い勝手を犠牲にせず、それでいて、タッチ操作にもしっかりと対応することができる。こうした思いを具現化することができたのがVAIO Fit 13Aであった」とする。