筆者からみて激動の年だったと思われる今年2013年の携帯業界。もともと変化の激しい業界ではあるが、今年は過去数年にわたって続いてきたトレンドの転換点に差し掛かっており、来年以降の変化に向けた兆候がいくつか散見されたと考えている。日本国内というよりも、いま世界のモバイル市場で何が起きているのかをグローバル的視点でみていこう。

ソフトバンクとSprintが起こす米携帯電話業界再編

日本でも大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)とMVNO数社という形で業界が収れんしつつあるが、米国ではデッドヒート状態から過去10年ほどをかけて大手2社(Verizon Wireless、AT&T)、そして3位以下の中堅グループ(Sprint、T-Mobile、US Cellular)とその他地域系キャリアという形で業界の趨勢がはっきりとしつつある。Verizon WirelessとAT&Tは顧客を着実に伸ばすとともに、小規模なライバルを吸収することでそれぞれが契約数1億オーバーの巨大キャリアとなった。一方で3位以下もライバルとの合併を繰り返すことで顧客数ベースで大手2社へと追い上げを続けている。2013年はその傾向が顕著に出ていたが、この業界再編の台風の目にいたのが業界第3位のSprintと、同社を買収したソフトバンクだ。

ソフトバンクによる最初のSprint買収観測が出たのは2012年10月11日だ。その数日後の15日、ソフトバンクは米Sprint CEOのDan Hesse氏を東京に招いての緊急記者会見を開催し、買収の意図やメリットを説明した。前述のように米国の携帯市場はトップ2社の寡占状態にあり、強力な対抗馬が必要というのが買収の意図だという。2社の顧客ベースを合わせて調達力を高め、スケールメリットで対抗していこうというのだ。とはいえ、海外企業による国内通信会社大手の買収ということもあり、多くの横やりが入るのは想定内のこと。米司法省から審査のためのストップ要請が入ったり、ライバルらが保安上の理由で妨害工作を仕掛けてくるなど(結果的に中国Huaweiなどのネットワーク機器を調達対象としないとの声明を出している)、道のりは平坦ではなかった。

もう1点問題を難しくしていたのはClearwireの存在だ。米国全土にWiMAXサービスを展開する同社は、2.5GHz帯の膨大な電波資産を持っている。これは世界的にTD-LTEで利用可能な帯域となっており、中国やインドといった巨大な人口を抱える地域をにらんだときに端末や機器調達で優位となる。過去の経緯からSprintはClearwireの大株主となっており、この周波数資産の存在もあって同社の完全子会社化を狙っていた。だが成長市場への事業拡大を狙い、携帯市場参入をうかがっていた米Dish Networkが突如Clearwireへの敵対買収を発表、さらにはまだソフトバンクによる買収の完了していなかったSprintに対して買収提案を行っている