―― さて、ではいよいよ本題ともいうべき世界初の2軸ブラケット撮影「プレミアムブラケティング」についてお聞きしたいと思います。

これは極端な例だが、プレミアムブラケティングは動く被写体が苦手。9連写するため、被写体が動くと位置が変わってしまう

マイナビニュース「プレミアムブラケティングについては、EX-10のCM表現についての取材でもお話をうかがったのですが、正直、今ひとつ分からなかったところがあるんですよ。

というのも、EX-10では機械シャッターで9連写していますよね。これだと、子供やペットといった身近な『動く被写体』を撮るときに、1コマ目から9コマ目にかけて被写体の位置が変わっていきます。風景写真でも、人の位置、車の位置、鳥の位置は表現に大きく関係してきます。

ならば、無理に9連写するより、3連写×3バリエーションの画像生成で計9枚としても良かったと個人的には思います。例えば、絞りのブラケットは3連写するしかありませんが、画像の明るさは画像処理でフォローできそうですし」

萩原氏「あえて9連写している理由として、まずパラメーターの中に画像処理ではどうしても不可能なものがあること、そしてシャッタースピードブラケティングを除くユースケースは、動かない被写体を撮ることを想定している、というものがあります。

プレミアムブラケティングは、専門的な撮影技術がなくても『9つの異なる表現から見て選べる』ことを主眼としていて、シャッタータイミングは過度に意識をしていないのです」

―― 1枚の画像からバリエーションを生成すると、処理時間がかかってしまうとか?

萩原氏「ケースによっては、それもあるかもしれません。画像処理で時間がかかると、次の撮影に進めないこともあります。サクサク撮れる、というのもEXILIMの基本性能ですから、ストレスを感じる動作になってしまっては、搭載する意味がありませんから」

―― 9連写するにしても、EXILIMが得意とする電子シャッターの超高速連写を使用するという手もあったかと思うのですが。

萩原氏「メカシャッターを使った最大の理由は、より高品位な本物のカメラに仕上げたかったからです。プロフェッショナル、あるいはハイアマチュアの方など、カメラに詳しい人ほど感じていただける『本当の品質の高さ』を提供したかった。スマートフォン同様の電子シャッターではなく、しっかりとしたカメラのシャッターで撮る手応えを感じていただきたいのです。

EX-10は、カメラの原点に立ち返った製品です。カメラの基本である光学的な足回りを充実させ、バックヤードでは先進のデジタル技術を駆使しつつ、ユーザーが直接感じることができる質感や手応え、満足感を大切にしています。それは『好画質』を追求していくという、カシオの画質に対する考え方にも共通しているといえるでしょうね」

好画質---。それはカシオのカメラ画質に関する哲学とのことだ。その具体的な考え方については、後編にて開発部門にお話をうかがう。お楽しみに。