開放F値1.8のレンズと1/1.7型裏面照射CMOSセンサー、映像処理エンジン「EXILIMエンジンHS Ver.3 ADVANCE」、そして3.5インチ大型液晶モニタを搭載した、EXILIMの最新フラッグシップモデル「EX-10」がついに発売された。すでにオンエアされているTVCMを目にされた方も多いことだろう。そこにも使用されている「ある意味、9眼。」というフレーズ。なんとも思わせぶりな表現の真意を聞くため、カシオ本社へと赴いた。

■カシオ「EXILIM」、フラッグシップ「EX-10」購入者全員にQUOカード進呈
■カシオ「EXILIM」、2軸ブラケティングやWi-Fi対応の新旗艦モデル「EX-10」
■【レポート】哀川翔さんがカメラマンに!? - 新コンセプトを掲げたカシオのフラッグシップEXILIM「EX-10」発表会

ブラケット撮影の特長を分かりやすく

くだんのTVCMをまだ見たことがない、という方は、まずこちらをご覧いただきたい。

【動画】カシオ エクシリム EX-10 CM
(CASIO JAPAN Official Channelより)

前傾した軍艦部、開閉式レンズキャップから繰り出される大きな前玉、チルトアップした液晶モニタのアップが順に映し出される…。続いて画面に9台のEX-10が並び、シャッター音とともに、9つの撮影結果が1台のEX-10に収束…。表示される「ある意味、9眼。プレミアムブラケティング」のコピー。そして、9点の画像から選ばれた(であろう)写真をバックに「あなたに最高の一枚を…」の文字が浮かぶ。

と、これを見た一部のファンが、掲示板やSNSで「"ある意味"ってどんな意味よ?」「一眼ならぬ、9眼?」と疑問を投稿、ちょっとした話題となったのだ。そこで今回は、この「ある意味、9眼。」という表現に込められた真意について聞いてこようというわけ。対応してくださったのは、カシオ計算機 宣伝部の三浦文彦氏だ。

―― 今回のCMは、世界初の2軸ブラケット機能「プレミアムブラケティング」の訴求をメインに据えていますね。ただ、そもそもブラケット撮影という比較的高度な写真技術の専門用語を、わずか15秒のTVCMで訴求するには、かなり苦労されたのでは?

カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション統轄部 宣伝部 宣伝戦略グループ 三浦文彦氏

三浦氏「ブラケット撮影を改めてご説明すると、適正値が出しにくい撮影状況下で、明るさやホワイトバランスを少しずつ変えて連写することで、最適な画像を確保する撮影方法です。

EX-10の『プレミアムブラケティング』は、このずらす内容を『ホワイトバランス×明るさ』や『コントラスト×彩度』といったように、2軸の組み合わせで設定できるんですね。これはコンパクトデジタルカメラとして世界初の機能で、EX-10の製品コンセプトに直結する機能でもあります。」

―― その、EX-10の製品コンセプトについて教えてください。

三浦氏「EX-10のターゲット層は、フルオートでキレイに撮っただけの写真では満足できないユーザーです。自分の中に何らかのイメージがあって、それを反映させた写真を撮りたいというクリエイティブ指向のある方ともいえます。

とはいえ難しい設定はしたくない、という方も多いでしょう。専門的な写真技術はないけれど、自分のセンスを大切にして被写体に向き合いたい、そんな方のためのカメラです。」

EXILIM EX-10。スパルタンなデザインとカラーリングが印象的。液晶モニタはバリアングル

―― なるほど、「プレミアムブラケティング」は2軸によるブラケット撮影で、このCMのように撮影バリエーションがずらりと一画面に表示されますよね(全9枚)。この中から、自分のセンスに合うものを選べるんですよ、と。

三浦氏「そうです。高画質であると同時に、撮影者にとって好きな『好画質』を提供するカメラ。それがEX-10なんです。」

―― 撮られる側(人)にとっての好画質、もありますよね。

三浦氏「そうですね。『写真に正解はない』というのがカシオの考え方なんです。プレミアムブラケットで撮影される9枚の中にも、正解があるわけではないと思っているんですよ。

撮影者の好きな1枚、撮られる人が好きな1枚、あるいは撮る人も撮られる人も、そのときの気分や雰囲気で最高の1枚が変わると思うんです。明るく撮れたのがいいとか、いや、露出を抑えた感じがカッコイイとか、彩度が高くて派手なのが今の気分に合っているとか。

そういう9つの表現、9つの世界を提示してくれるプレミアムブラケィングを分かりやすく伝える言葉として、どんな言葉があるだろう、と。そこから生まれたのが『ある意味、9眼。』という表現と、EX-10が9台並んだあのビジュアルなんです。」

プレミアムブラケティングを使うには、モードダイヤルをブラケット撮影に合わせる

最上段は、カメラの設定を自動変化させながら連写する「オートブラケティング」で、2軸(3種類)、1軸(1種類)から選択可能。2段目からは、設定値を調整できる「マニュアルブラケティング」となっている

―― 私は「9眼」という言葉から、二眼レフ(のレンズが増えたもの)を想像しました。まんまとあのビジュアルに引っ張られたわけですが(笑)。でも考えてみれば、EX-10がいわゆる一眼レフや二眼レフの延長上にあるっていうのも、何か違いますよね。それなら、普通の一眼レフだって(ブラケット撮影はできるので)ある意味3眼になっちゃう(笑)。

三浦氏「写真好きな人から気にかけていただけるように、カメラ用語を意識して『9眼』という言葉を使ったのは事実です。そのために一眼×9と理解していただいても、それはそれで間違いではないと思います。

ただ、実際にレンズが9個あるわけではないですし、厳密には9眼じゃないですよね。『ある意味、9眼。』なんです。私たちが伝えたい『9眼』という言葉の真意は、先にも述べた9つの表現、9つの世界のことなんですよ。カシオならではのハイスピードテクノロジーを生かして、一瞬で9つの世界、9つの冒険に出会えるカメラを意味しているんです。」

EX-10が9台並ぶ広告のキービジュアル。三脚とカメラはCGではなく実物で、1列3台のカメラを3列に合成しているそう

―― プレミアムブラケティングでは、ちゃんと9枚を高速連写していますもんね。

三浦氏「それは、あえて『ブラケティング』という専門用語を使った理由でもあります。プレミアムブラケティングで撮影された9枚の写真は、どれも1枚ずつカメラの設定を変えて、しっかりと撮影された写真であることをアピールしたかった。

これはありがたいことでもあるのですが、カシオは特にデジタル技術に強いというイメージがあるようで、1枚の写真を画像処理で9バリエーションにしていると誤解される方もいらっしゃいます。

もちろん、画像処理がダメということではありません。でも、EX-10に関しては写真撮影の本質的な部分にこだわって、きちんと高度なブラケット撮影をしています。プレミアムブラケティングは、カメラとしての完成度の高さに自信があればこその機能でもあるんですよ。」