圧倒的な解像感のインパクトで、ローパスレス機がひとつのトレンドとなっている昨今だが、偽色やモワレが発生するリスクを恐れる人も少なくない。リコーイメージング(旧ペンタックスリコーイメージング)は2012年、ローパスフィルター付きのK-5 IIとローパスフィルターレスのK-5 II sを用意してそのニーズに応えたが、K-3ではローパスセレクターという機転の利いたアイディアを披露した。

これは、センサーシフト式手ぶれ補正で使われる機構SR(シェイクリダクション)を利用し、撮像素子を超微振動させることで微細なブレを作り出し、これをローパスフィルター代わりにするというギミック。OFF、TYPE1(弱)TYPE2(強)から選ぶことができる。偽色やモワレは風景(木々や岩肌)やテキスタイルなどで出るケースが多いので、これらを主な被写体とする人にはうれしい機能だろう。ただ、OFFでは偽色やモワレが出まくるかといわれるとそんなことなどなく、現実に活躍するシーンは希だと思う。ただし、いざ出てしまったときの対策が用意されていると思えば、大船に乗った気分で撮影に臨めるというものだ。

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ローパスセレクターの効果を検証。左から「OFF」「TYPE1」「TYPE2」。OFF時にスピカーネット右下で盛大に発生している偽色が「TYPE1」で消え、「TYPE2」でさらに画がスッキリしているのがわかる。反面、デッキ本体に目をやると、解像力とトレードオフになっていることもまた確認できる

最後に、動画についても触れておこう。K-5ではほぼオマケのような扱いだった動画撮影機能だが、K-3ではだいぶ気が配られている。前述のように操作系統が改善され、フルHD(1,920×1,080ドット)でフレームレート24p、25p、30p、60iに対応した。60pへの対応がなかったのは残念だが、確実な進歩だ。録音レベル調整ができるようになったことも評価したい。

ただし、動画撮影をするユーザーがもっとも関心があるだろう撮影中のAF駆動はほぼ進化がなく、実質的に置きピンかマニュアルフォーカスで撮るしかないのは従来通り。これはレンズの駆動ノイズも関係する問題なので、一朝一夕には改善できないだろう。しかし、K-3では予想外の付加価値「4Kインターバル動画」が撮れたりする。まったくもって、このメーカーは良い意味で侮れない。

PENTAX K-3 動画サンプル 25p

PENTAX K-3 動画サンプル 60i)

K-3を総合的に評価するなら、「底知れぬ性能を秘めたAPS-C機の最高峰」といえる。だが、一眼レフはシステムだ。カメラ本体の性能が大きく向上したことで、レンズの駆動音や速度といった従来から続く環境的な弱点が、今までより気になってしまうこともある。

それらを差し引いても、一眼レフで撮ることの楽しさと、フルサイズ機とも渡り合える表現力を存分に堪能させてくれる……K-3は、そんなカメラだ。冒頭で「価格的に買いやすくなった」と書いたが、実は2013年12月現在、ちょうど底値を過ぎて上昇傾向にある。来年の4月になれば消費増税もあるし、まさに今こそ買い時かもしれませんよ!