バッテリーユニットにはHDMI/MHL端子があり、別売りのMHLケーブルを使用することでスマートフォンを接続、画面を投影できる。もちろん、スマートフォンのゲームをT3Wでプレイしたり、動画を閲覧することが可能だ。

そこで、さっそく手持ちの端末を使って、ドライブゲーム「Beach Buggy Blitz」をプレイしてみた。このゲームはスマホ本体を傾けることでハンドル操作ができるので、スマホを直接見ることなくプレイできる。つまり、画面以外何も見えなくなるHDMにも最適というわけだ。

付属のステレオイヤホン。なお、T3シリーズは、7.1chバーチャルサラウンドに対応した

プロセッサーユニットとワイヤレスで繋がるバッテリーユニット

3D映像ではないものの、目の前に広がる750型相当のスクリーンは大迫力で、没入感が高い。仮想視聴距離が約20mと設定されており、正しくは「目の前に~」というより、小規模シアターの中央席から見ているような距離感があるが、映画館でゲームをプレイしているようで面白い。スマホの小さな画面でプレイするのとは、まるで違う感覚だ。

ケーブルの先にはヘッドマウントディスプレイが繋がっている

HDMI/MHLの入力端子×1も装備

スマートフォンをHMLケーブルで接続した場合、プロセッサーユニットは不要

ところで、T3Wと前機種にあたるT2では、表示画素数(1,280×720ドット)や視野角(約45度)、前述の仮想画面サイズなどの数値スペックに変更はない……と書くと、まったく進歩がないように見えるが、実はそうではない。形状や枚数を最適化した新規設計のレンズを採用、それに伴って画質も一からチューニングし直されているのだ。また、新設計の「HMZ専用LSI」を採用。今までHMDとプロセッサーユニットで行っていた映像処理をHMD側に集約することで、映像遅延が最小1フレームまで抑えることに成功したという。ゲームをプレイしやすく感じる理由はここにあるのだろう。そして、HMDとプロセッサーユニット間をワイヤレス化できた秘密も、実はここにあるのではないだろうか。T1からT2へのステップは「改善」だったが、T3では「進化」したといっていい。

再生機側に接続するプロセッサーユニットは、HDMI入力端子×3、HDMI出力端子×1、HDMIスルー出力×1、ヘッドホン標準端子×1を備える

かつてT1を使用した際、もっとも気になったのはその重量だった。映画を見るために長時間装着していると、次第に頭が垂れてきて、いつの間にか真下を向いているのである。肩や首も凝る。正直、これでは映画は観られないと思った。しかし、T3Wの重量はヘッドマウントユニットで約320g(ケーブル除く)。T1の約420g(同)より実に100gも軽量化された。これは大きい。ちなみにT2は約330g(同)。T3はわずか10gの軽量化ながら、装着時の感覚はそれ以上に大きい。これは、額のパッドの大きさや角度、ヘッドバンドの調整などを含めて装着時のバランスを取り直しているため、とのこと。場所やスタイルがフリーになったことと併せて、鑑賞時の快適さも進化していると感じた。

ただ、なまじ調整幅が広いため、映像がボケずにかつブレずに見える"スイートスポット"を見付けにくいのは難点かもしれない。片手でバイザー部を押さえつつ、ヘッドバンドの調整をするのも結構難しい。そこさえ克服できれば、映像は極めて美しいのだが。

スマホゲームの例としてプレイした「Beach Buggy Blitz」。迫力ある一人称視点に加え、スマホを見なくても操作できる(スマホを傾けてハンドル操作ができる)ので、HMDでのプレイに非常に向いている

見事にハイスコアを獲得! 面白さだけでなく、プレイもしやすいという証拠だ

「HMZ-T3」にスマホを接続すると、ホーム画面は強制的に横になる

基本的に、HMDはニッチな製品だ。SONY HMZ-T3の性能云々を語る前に、HMDには物理的に不利な点が山ほどある。使用中は手元が見えない、視度調整ができない(眼鏡をかけて使うのは辛い)、眼が疲れる、1人でしか見られない、ロボコップみたいだ…と、挙げれば枚挙にいとまがない。これらをT3のレビューとして書くのはお門違いとは思う(それでもいい、という人が買うものなので)が、私の周囲にも「買ってから初めて気付いた」という人がいるので、あえて書き添えておく。前述の見やすさや装着感も含め、できれば本物を実際に頭に装着してみてから、購入を決めるのがオススメだ。

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