幅広い層へのスマートフォンの普及が進んでいる一方で、従来の携帯電話(フィーチャーフォン)を使い続けている人も多い。セルフ型ネットリサーチ「Fastask」を提供するジャストシステムが7月に発表した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2013年6月度)」の調査結果では、スマートフォンの利用率が46.5%だったのに対し、フィーチャーフォンの利用率は49.6%と、いまだにフィーチャーフォンの利用率がスマートフォンを上回っていることが明らかになった。

スマホ利用率は40%台で停滞

同調査結果を詳しく見てみると、フィーチャーフォンとスマートフォンの利用率の推移は、フィーチャーフォンが低下傾向、スマートフォンが上昇傾向にあるものの、最近のスマートフォン利用率の伸びは鈍化している。2013年1月に利用率40%を超えて以降、そのまま40%台に停滞しており、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が一段落したことがうかがえる。

フィーチャーフォンとスマートフォンの利用率の推移(出典:ジャストシステム)

また、年代別のスマートフォン利用率の推移では、10代から30代が利用率60%を超えている一方で、40代から60代は利用率40%以下であり、同年代の利用率の推移も停滞傾向にある。つまり、スマートフォン利用率の伸びが鈍化している背景には、40代から60代の利用率の低さがあり、今後フィーチャーフォンからスマートフォンへのさらなる移行を進めるためには、これらの年代のユーザーへの通信各社の働きかけが重要となってくるだろう。

年代別のスマートフォン利用率の推移(出典:ジャストシステム)

通信各社のスマホ移行支援策とは?

フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行を検討している人にとって、一番の障壁となっているのは、使いこなせるかどうかという不安だ。実際、ブームに乗ってスマートフォンを買ってみたものの、従来と同様のメールと電話しか使えず不満が鬱積する「スマホ難民」が急増しているという。今回の調査結果によれば、移行を検討している層は40代から60代が中心になると思われるが、これらの層やスマートフォン初心者の不安をどのように解消するかが通信各社にとっての課題であり、各社ともにスマートフォンへの移行支援策を展開している。それでは、各社の移行支援策についてそれぞれ見ていこう。

NTTドコモは、端末ラインナップによってスマートフォンへの移行を支援していく方針だ。夏モデルとして発売された「MEDIAS X N-06E」および「ELUGA P P-03E」は、初心者でも違和感なく使える「docomoシンプルUI」を搭載。さらに、シニア層向けとして「らくらくスマートフォン2 F-08E」も展開していく。また、キャンペーンとして「はじめてスマホ割」を9月1日まで実施し、フィーチャーフォンからスマートフォンへ機種変更するユーザーに対して、端末代金の割引を行なっている。ただし、はじめてスマホ割で割引額が大きいのは、「ドコモのツートップ」と呼ばれる「docomoシンプルUI」非対応の2機種であり、「docomoシンプルUI」と「はじめてスマホ割」という2つの施策には、"ちぐはぐさ"も見える。

KDDIは、ユーザーサポートを強化して、スマートフォン初心者の支援を行なっている。6月から提供開始された会員制サポートサービス「auスマートサポート」では、専任アドバイザーによる24時間体制の電話サポートを提供。さらに、自宅にアドバイザーが訪問して、スマートフォンの使い方を教えてくれる「スマホ訪問サポート」、事前にスマートフォンの使い勝手を検討できる15日間の「スマホお試しレンタル」も提供するなど、他社には無い手厚いサポートを展開する。また、立て続けに7月23日から「auスマホデビューキャンペーン」を開始。万が一スマートフォンを使いこなせなかった場合に、購入後8日以内の返品交換を可能とするほか、auポイントのプレゼント、「auスマートサポート」の初期利用料が半額になるという3つの特典を提供。フィーチャーフォンユーザーが、より気軽に安心してスマートフォンに機種変更できるように支援している。

ソフトバンクは、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行という点では、とくに目立った支援策は見当たらないが、同社初となるシニア層向けスマートフォンとして、「シンプルスマホ 204SH」を夏モデルのラインナップに加えた。実施中のキャンペーンにおいては、フィーチャーフォンからiPhone 5に機種変更した場合に、1年間のパケット定額料を割引する「かいかえ割」を用意。しかし、選べるスマートフォンがiPhone 5のみと選択肢は少なく、他のキャンペーンラインナップを見てみても、同社がフィーチャーフォンからの移行よりも、他社からの乗り換えに力を入れていることがうかがえる。

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ジャストシステムが発表した定点調査では、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が鈍化していることが明らかになった。通信各社にとっては、スマートフォンの使いこなしに不安を感じているユーザーをいかに取り込むかが課題となっており、各社ともスマートフォン初心者向けの支援策を打ち出している。中でも、24時間体制の電話サポートや自宅訪問サービス、お試しレンタルなど、これまでにないユーザーサポートを展開するKDDIの取り組みはユニークであり、スマートフォンの返品交換が可能になるauスマホデビューキャンペーンとあわせて注目しておきたい。