既報の通りレノボ・ジャパンは17日、同社製ノートPC「ThinkPad」シリーズとデスクトップPC「ThinkCentre」シリーズの新世代モデルを発表した。これに合わせて都内で記者会見を開き、新モデルのデザインコンセプトや新たに採用された技術について解説した。

ThinkCentreも10周年のメモリアルイヤー

レノボ・ジャパン 執行役員常務の横田聡一氏

2012年ThinkPadは誕生20周年のメモリアルイヤーを迎えたが、ThinkCentreも前身のNetVistaからブランド名を改めて、今年で10周年を迎えたという。発表会の冒頭で挨拶を行ったレノボ・ジャパン 執行役員常務の横田聡一氏は、「(10年の間に)ThinkPadとの協業を通じて、デスクトップも多くのイノベーションを取り込むことができた」と話す。

ThinkPadからもたらされた技術として、横田氏がまず例として挙げたのは堅牢性だ。大和研究所で20年にわたって堅牢性にこだわり、蓄積してきたノウハウを「ThinkCentre」の開発にも生かしているという。

今回発表した手のひらサイズのデスクトップPC「ThinkCentre M93p Tiny」では、落下衝撃、粉塵、振動、高温、低温、高度、熱衝撃、湿度の8項目について米国軍用規格をクリアしている。ThinkPadでもこの米国軍用規格をクリアしており、「ThinkCentre M93p Tiny」の開発に当たってテスト基準の整合性を会わせたり、テスト方法について情報の提供を行っているという。

ThinkPadのノウハウをThinkCentreに提供

また、IT管理機能といったソフトウェアの部分や、内部の部品に関してもThinkPadと同じ部品を使うなどで、ThinkPadで培ったイノベーションをデスクトップでも展開している。

「ThinkPad」と「ThinkCentre」が長くにわたってさまざまな新しい技術を開発し、取り込む一方で、横田氏は「これまでの10年、20年の変化と比べても、ここ1~2年でおきてる変化は非常に大きい」と話す。

レノボは2013年第2四半期におけるPC出荷台数の世界シェアで首位に立ったが、横田氏によると「社内ではあまりお祝い気分ではない」という。その背景には、PCに変わってタブレットやコンバーチブル型など、新たなデバイスが浸透し始めていることにある。

PC市場が伸び悩む中、レノボはシェア、売上げともに成長しているという

「従来と違う形のPCが急激に伸びている中、私たちは"PC+"という戦略で、従来の枠組みを超えたコンピューティングスタイルに投資し、新しい技術をもってユーザーに提案していきたい」と横田氏は語った。

同社が掲げる"PC+戦略"

ワークスタイルの変化に合わせて、シングルデバイスからマルチデバイスへ

レノボ・ジャパン Think Client Brand Managerの土居憲太郎氏

レノボ・ジャパン Think Client Brand Managerの土居憲太郎氏から、エンタープライズ市場における、同社の「PC+」戦略について紹介した。

まず土居氏は、「企業のIT部門に関して自社の社員の働き方と支給するデバイスについて、オフィス内をメインとして働く場合はデスクトップPC、外回り中心の場合はノートPCといったように単純な分け方をしてきた」と話す。

従来はシングルデバイスでの働き方

ガートナーが発表した日本国内のモバイルデバイスの出荷予測では、2017年にかけて、タブレットの出荷台数は急激に伸びるが、デスクトップPCやノートPCも現在の市場規模を維持していくと予測されている。従来のPCがタブレットにそのまま置き換わるのではなく、タブレットやスマートフォンは「コンテンツを見る」、PCは「コンテンツを作る」とそれぞれの持つ役割が分かれるとしている。

ガートナーの市場予測

同社が2012年11月に発表した「ThinkPad Tablet 2」では、新しい形のPCとして、あるいはWindows 8の検証機といった位置付けでの導入が進んでいるという。「ThinkPadやThinkCentreで提供しているイメージングやキッティング、セキュリティ、サポートといったソリューションをThinkPad Tablet 2でも同じように提供できる点が強み」だと分析する。

ThinkPad Tablet 2の強み

また、ThinkPad Tablet 2は、NTTドコモとの協業によりLTE回線「Xi」に対応したモデルを投入する。土居氏も「出先でも社内に保存してあるデータにアクセスできるというメリットに加えて、デバイスを紛失した際のリモートによるデータ消去や、位置情報トラッキングといったMDM(Mobile Device Management)に代表されるようなセキュリティ面でのメリットがより高まる」と期待を寄せている。

LTE対応でさらに強みを生かす

土居氏は「新たなデバイスが出てきた際に、新しい仕事のやり方やあり方を検討する必要がでてくる。これからは、自分がいる場所に適したデバイスを使い分けることで生産性を向上し、どこで働いていても適切なアウトプットが出ればよしとする時代がくるのではないか」と語った。

これからはマルチデバイスによる新たな働き方へ

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