バースタイルのフロントサラウンドシステムには、スピーカーをテレビの前に置くことで、設置スペースの問題を解決する、つまり見かけ上の設置スペースをほぼなくしてしまうことができるという特徴がある。このバースタイルのフロントサラウンドシステムにBluetoothスピーカーの機能も併せ持たせたのが、以前レビューを行った「HT-CT260」だ。

HT-CT260は、キャビネットサイズによるサウンドの余裕、左右のユニットの間隔の確保などにより、小さいワンボックス型のBluetoothスピーカーでは不可能な、より豊かなサウンドを手軽に楽しむことができる"でかくて手軽なシステム"だ。

「HT-CT660」

6月1日に発売される「HT-CT660」は、HT-CT260の上位モデル。HT-CT260では55×80mmのフルレンジだったフロントスピーカーは、φ20mmのツイーターと50×90mmのウーファーの2Wayとなっている。サブウーファーもφ130mmからφ160mmへと大型化し、キャビネット容量も増やされた。また、HT-CT260では音声信号だけだった入出力も、HDMIが加わったことで、より多様な機器との接続が可能となった。

φ20mmのツイーターと50×90mmのウーファーの2Way構成を採用

六角柱形状のフロントスピーカーとワイヤレスサブウーファーを組み合わせたスタイルは、HT-CT260と変わらない。フロントスピーカーの幅は、HT-CT260が940mmで、HT-CT660が1,030mm。2台を並べて比較すれば、HT-CT660のほうが若干大型化しているのがわかるのだが、HT-CT260自体が存在感のあるサイズだったため、HT-CT660がそれほど大きいという印象は受けない。

今回は、HT-CT660がHTCT260に比べてどのように変化したか、使い勝手の面、音質面を中心にレビューを行っていきたい。まずは、セッティングや操作性の変化についてチェックしていこう。

HDMIの追加で導入時の手間は増えたが、運用の手軽さは継続

HT-CT260の入力は、光と同軸のデジタル音声入力を1系統、それ以外にはアナログ音声入力を1系統と、Bluetoothというシンプルなものだった。テレビとの接続は、テレビのデジタル音声出力端子から光ケーブルで接続するというのが一般的なスタイルとなる。レコーダーなどは、テレビ側のHDMI端子に接続することになる。つまり、テレビとレコーダーがある環境にHT-CT260を追加するのには、HT-CT260をテレビのデジタル音声出力端子に光デジタルケーブル、あるいは同軸デジタル音声ケーブルで接続すればよいだけだった。

それに対してHT-CT660では、HT-CT260の持つ入力端子に加えて、入力3系統/出力1系統のHDMI端子を装備する。これによって、より幅広い機器との接続が可能となっているわけだが、そのぶん接続は複雑になっている。

フロントスピーカーの接続端子

既にテレビとレコーダーを使っている環境でHT-CT660を導入しようとすると、まずレコーダーのHDMI出力とHT-CT660のHDMI入力をHDMIケーブルで接続。次に、HT-CT660のHDMI出力とテレビのHDMI入力をHDMIケーブルで接続する。テレビとレコーダーがARC(オーディオリターンチャンネル)に対応している場合にはこれだけでOKだが、そうでない場合には、テレビ音声をHT-CT660で再生するために、テレビのデジタル音声出力からHT-CT660のデジタル音声入力端子に、光デジタル音声ケーブルまたは同軸デジタル音声ケーブルで接続する必要がある。ただし、これはHDMIを使用した場合のみで、デジタル音声入力のみを使用する場合には、HT-CT260と同じ接続方法でかまわない。

さて、HDMIを使用してレコーダーとテレビ、HT-CT660を接続した場合、レコーダーからの信号は常にHT-CT660経由でテレビに送られることになる。これは、一般的なAVアンプなどを使用した場合でも同様だ。

となると、レコーダーに録画されている番組をテレビで見るときに、サラウンド環境が必要ない場合、たとえばヘッドホンで再生するといった場合にもHT-CT660の電源を入れておかなければならないのかという問題が発生する。これは、既存のレコーダーとテレビとの接続に変化を加えないHT-CT260では起こらない問題だ。

HT-CT660は、こういった場合に、電源がスタンバイ状態になっていても、HDMIの信号を入力から出力にそのまま送り出す「HDMIスルー」機能を搭載している。これはアンプメニューのHDMIから設定できる(出荷時にはオフになっている)。

注意しなければならないのが、この機能がHT-CT660の入力切替に依存しているという点だ。HT-CT660では、入力は「TV」→「HDMI 1」→「HDMI 2」→「HDMI 3」→「ANAROG」→「BT AU(Bluetooth Audio)」の順で切り替わる。HT-CT660がスタンバイに移行する直前の入力が、HDMI 1~3であった場合、スタンバイに移行しても、そのままの入力が適用される。それ以外の入力、たとえばBluetoothで音楽を聴いていたというような場合には、HDMI入力からの信号は、テレビには送られない。

スタンバイ時にも使用できる機能は、これ以外にもいくつか存在している。テレビ関係では、「IRリーピート」機能がスタンバイ時でも使用可能だ。

バースタイルのスピーカーでは、テレビの前面にフロントスピーカーを設置することが多い。そのため、テレビの機種によっては、リモコンの受光部をスピーカーがふさいでしまい、リモコン操作に支障をきたす場合がある。このような場合に、HT-CT660の受光部が受け取ったテレビのリモコンコードと同じものを背面から発信するというのが、IRリーピート機能だ。アンプメニューのSYSTEMからIR.REPを選び、ONを指定することで設定できる(出荷時にはオフになっている)。

スタンバイ時にも利用できる機能のうち、テレビ関係以外で使用頻度が高いものの1つが「Bluetoothスタンバイ」機能だ。これは、HT-CT660がスタンバイ状態になっていても、スマートフォンやタブレットなどのBluetooth端末側から接続を行うと、HT-CT660が自動起動するというものだ。Bluetoothスピーカーとしては便利な機能だ。これも工場出荷時にはオフになっている。Bluetoothスピーカーとして使用することが多いユーザーはオンにしておいたほうがよいだろう。

Bluetoothスピーカーとして使用することが多いのなら、Bluetoothスタンバイ機能をオンにしておこう

さて、これらの機能は単独で見ると便利なのだが、HT-CT660は、テレビ用のフロントサラウンドシステムとしても、そしてBluetoothスピーカーとしても使われる製品だ。両方の用途で使うことを考えると、特にHDMIスルーとBluetoothスタンバイは、あまり相性がよくないように思える。HDMIスルーは、入力が目的のHDMI端子になっていることが前提なのに対して、Bluetoothスタンバイは入力を強制的にBluetoothに切り替えてしまうわけだ。

筆者は、同社の学習リモコン「RM-PLZ430D」を使用している。RM-PLZ430Dは、1つのキーで、複数のコマンドを連続して送ることができる学習リモコンだ。このような学習リモコンを使用すると、HT-CT660をBluetoothスピーカーとして使用したあと、「入力をHDMIに切り替え」「スタンバイに移行」という動作を1つにまとめられるので便利だ。

全体的に見ていくと、HT-CT660は、HT-CT260に比べると、接続の手間や操作のステップは少々増えているが、それは工夫で何とかなるレベルだといえるだろう。

次ページ: HT-CT260に比べて、さらに余裕のあるサウンド