HT-CT260からのサウンド面での変化は、フロントスピーカーの2Way化と、サブウーファーの大型化だ。これらは、再生される音にどのような違いをもたらしているのだろうか。もっとも、今回使用しているのはHT-CT660だけなので、HT-CT260に関する部分は、記憶に頼ることになる。
まずは、テレビのプロ野球中継を聞いてみた。サウンドモードは「スポーツ」を選択した。リモコンには、サウンドフィールドをダイレクトに指定するためのボタン「スタンダード」「MOVIE」「GAME」「MUSIC」「P.AUDIO」「STEREO」が用意されている。このほかに、スポーツ、ドラマ、ニュースの3種類のサウンドモードを利用できるが、これらは、サウンドフィールドの「+-」ボタンで選択することになる。
ステレオ放送だったが、球場の環境音がよく表現され、なかなかの臨場感だ、HT-CT260との違いに関しては、HT-CT260を試したときに比べて、解説や実況の声が聞きやすくなっているような気がする。これが気のせいなのか、それとも実際にそうなっているのかは判断がつかないのだが、2Way化により音声域の表現力を向上させたということなので、その効果かもしれない。
続いて音楽の再生だ。HT-CT260を試した時と同様に、スマートフォンに保存した256kbpsのMP3ファイルをBluetooth経由で再生している。サウンドフィールドは、まずSTEREOモードを選択した。STEREOモードは標準的な音楽再生モードだ。HT-CT660の素の状態ということになるのだろう。
小型のスピーカーだと、パワーをかけないと音のバランスが保てない傾向があるが、HT-CT660では、そういった傾向は少ない。何か作業をしているときに、その邪魔にならない音量でも、バランスのよい再生ができる。
また、HT-CT260では、横方向の指向性の狭さが気になったのだが、HT-CT660では、それがわずかながら改善されているように感じられる。聴取エリアが幾分広がったようだ。
さて、HT-CT260でも、一体型のBluetoothスピーカーや低価格なミニコンポに比べれば、表現力は高く感じられた。それに比べて、HT-CT660はどうなのだろうか。スピーカーの正面に位置して、ボリュームを上げ、本格的に音楽を聴いてみる。全体的に密度があがっているように感じられる。特に中高域でその傾向が強く、ボーカルを中心としたソースでは、なかなか高い実在感を楽しむことができる。
モードをP.AUDIOに変更してみる。P.AUDIOモードは、ポータブルオーディオなどでよく使用される非可逆圧縮時に失われてしまう音楽成分を補間するモードだ。元になるソースによっても異なってくるのだろうが、256kbpsのMP3ファイルを再生した場合には、STEREOモードに比べて、わずかながら高域の伸びを感じられる。とくに弊害のようなものは感じられなかったので、サウンドフィールドはソースごとに設定できるので、Bluetooth経由で音楽を再生する場合には、このモードを標準的に使用してよいだろう。
MUSICモードは、音楽DVDや音楽番組などを再生するためのモードで、今までの2つのモードに比べると広がり感が強く、さらに残響や低域がプラスされているようだ。ライブ音源などの再生には向いているだろうが、そうでない場合、STEREOかP.AUDIOモードのほうが向いているように感じられる。
手軽さは少々スポイルされたが、サウンド面で進歩
以前のHT-CT260のレビューの際に、HT-CT260は"でかくて手軽なシステム"としてうまくまとめられていると書いた。
テレビの前というデッドスペースに設置でき、フロントサラウンドシステムとしても、スマートフォン用のBluetoothスピーカーとしても利用できるHT-CT660が、その延長上にあるシステムだということは間違いない。HT-CT660はHT-CT260に比べて、機能と音質の面で確かに向上している。
しかし、それと引き換えに、HT-CT260のもっていた手軽さという面が少々スポイルされてしまったようにも感じられる。この2製品は、優劣はつけにくい。より音楽や映画に浸りたいのならHT-CT660、手軽さを求めるのならHT=CT260というチョイスになるのだろう。