AMD Chipset(表15・16)

表15

表16

続いてAMDのチップセットであるが、こちらはさらに寂しいことになっている。まずSocket AM3+系であるが、CPUの所でも説明したとおり現在のVisheraベースのFX-8300系は既存のAMD 900系を継続利用になっており、この後継が予定されているSteamrollerに関しても、早くて2013年末(恐らく2014年)となっているので、新チップセットを投入すべき理由が全くない。

先にCPUのところでは触れなかったが、このSteamrollerのメモリがDDR3なのかDDR4なのかというのはちょっと微妙なところ。当初はGLOBALFOUNDRIESの28nmプロセスを使って2013年中に投入の予定だったから、これはDDR3系列を想定していたが、2014年にSlipするとそろそろDDR4の対応を考えないといけなくなる。実体としてそういうものがあるかどうかはともかくとして、DDR4に対応したSocket AM4の存在は噂されていたが、SteamrollerがSocket AM3+になるのか、それともSocket AM4なのか、もしくはDDR3/DDR4の両対応になるSocket AM3++(筆者の勝手な命名)なのかは現状不明である。

実を言うと2014年にSlipすると、もう一つややこしい話が出てくる。それはCPU I/Fが何になるか、である。元々HT LinkはCPU間接続とチップセット接続の両方に対応したものとして用意されてきたが、AMDは2012年にSeaMicroを買収、同社が持つFreedom Fablicというプロセッサ間接続技術を入手した。この接続技術がすごいのは異なるアーキテクチャでも対応できることで、実際同社のSM15000というサーバーはCPU Optionが「最大64個のOpteron/最大64個のXeon/最大256個のAtom」という、確かにフリーダムなものになっている。AMDは2012年10月にARMより64bit ARMのプロセッサライセンスを受けており、これを利用したARMベースのOpteronを2014年に投入することを発表している。恐らくこのARMベースのOpteronもFreedom Fablicを使って接続する事を想定していると思われる。

こうなると、OpteronのHyperTransport Linkのうち、Processor間リンクの機能が要らないという話になってくる。つまりFreedom Fablicに繋がれば、後のプロセッサ間の通信や調停はFreedom Fablic側に任せればいいからだ。すると必要なのはFreedom Fablicとの通信で、例えばここをPCI Expressに切り替えてもいいことになる。HyperTransport Link 3.1だと、Zambezi/Visheraの世代では最大3.2GHzまで速度が上がっているので、帯域は片方向あたり3.2GHz×2×16bit=25.6GB/secという計算になる。PCIeは、Gen3ならば1レーンあたり1GB/secになるのでx16レーンを2本出せば32GB/secとなり、十分HyperTransport Linkの代替になる。これに加えてさらにx4レーンを1つ加えてチップセット接続用とすれば、完全にHyperTransport Linkを廃せることになる。となるとチップセットの接続も、現在のAシリーズの様にALinkを使って繋ぐという形に出来てシンプルになる。

このあたりは2014年以降のAMDのプラットフォームがどうなるか、に関係してくる話であるが、個人的にはそろそろHyperTransport Linkの寿命が終り始めていると感じており、案外こうした構成になっても不思議では無い気がする。ただ、こうなるとSocket AM3+からの互換性は完全になくなる訳で、Socket AM3++みたいな形にする意味も薄れてくる。現実的な可能性としては、SteamrollerにはDDR3サポートのものとDDR4サポートのものが出てきて、DDR3に関しては既存のプラットフォームそのまま(つまりHyperTransport Linkをそのまま利用)、DDR4に関しては全くプラットフォームを一新、というあたりではないかと思うのだが、そうなると現在のAMD 900シリーズは2014年に入ってもまだ使われ続けることになるかもしれない。

ただこのシナリオの場合、USBはともかくとしてPCI Express 3.0の対応がさっぱり、という事になるわけだが、元々AMDは2011年の時点でPCI Express 3.0の対応をSkipしてPCI Express 4.0で対応するとしており、これをそのまま踏襲していると思えば不思議ではない。

この推理が正しいかどうか、はもう少しAMDが2014年のプラットフォーム像を明確にしてくれないことには判断できないのだが、少なくとも2013年中にはSocket AM3+に関しては動きはなさそうな事は間違いないと思う。

ただこのSocket AM3+は(AMD FXが不振な事もあって)大勢にはそれほど影響が無い。メインはSocket FM1/FM2である。こちらは2012年10月のTrinityベースのリリースに合わせてA85Xが投入され、機能面でもIntelのチップセットとそれほど見劣りしなくなった。実際主な機能の差はPCI Express 3.0への対応(これはCPU側が未対応だからどうしようもない)と、SRT(Intel Smart Response Technology:これはAMDが同種の技術を提供していないからどうしようもない)程度でしかない。A85XではSATA/6Gのポートも8つに増やされているし、A75世代からUSB 3.0はNativeで統合されているから、機能的な不足を感じることはまずないだろう。

2013年の後半にはKaveriベースのAPUも投入される可能性があるが、こちらも当初はSocket FM2の筈で、後半になると(これもCPU編のところで説明した通り)DDR4への対応を行ったSocket FM2+とかが出てくる可能性はあるが、チップセットそのものは既存のA85/A75/A55のままで行くと思われる。

自作ユーザーにとっては、新しいチップセットを搭載したマザーボードを買うという楽しみが無いのはちょっと残念かもしれないが、マーケットシェアでIntelに圧倒されている現状では、既存のプラットフォームをそのまま利用できるということでユーザーの出費を抑えるほうがシェア獲得には重要ということであろうし、これは致し方ないところであろう。そんなわけで、2013年中はAMDに関しては殆ど動きが無い、ということになりそうだ。

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