プロセッサはA5、ディスプレイ解像度は1024×768ピクセルと基本性能はiPad 2並みだが、フロントにFaceTime HDカメラ、リアにiSightカメラを搭載し、スピーカー、マイク、Wi-Fi、Bluetooth、各種センサー(Gyro、加速度、環境光、デジタルコンパス)を備える。LTE対応のW-Fi+Cellure版も用意された。

iPhoneは手のひらに包み込むように持ってより多くの情報を表示できるように、iPhone 5で16:9の4インチディスプレーが採用された。iPad miniの画面比率は、縦・横どちら向きでもスペースを損なわない4:3。ディスプレイ解像度は初代iPadやiPad 2と同じ1024×768ピクセルだ。これは既存のiPad用アプリをそのまま使用できることを意味する。

iPadでできることはiPad miniでもできる。iPadで動作するアプリはiPad miniでも使用できる。iPadの全てを、片手で持てる200×134.7×7.2ミリ(重さは308グラム)のサイズに凝縮した、文字通りiPadのミニ版がiPad miniである。

iPad miniを片手に持つフィル・シラー氏。「自分の手のひらに収まるかな?」と思っている人は、同じぐらいの幅のMagic Trackpadを持ってみよう

Nexus 7やKindle Fire HDはリアカメラを搭載しないが、iPad miniは5メガピクセルのiSightカメラを搭載

厚みは7.2ミリ。鉛筆の太さとほぼ同じ

そしてノートパッドのように軽い。比較が対象が本ではないのは、本よりも軽いから

10インチのiPadと同じようにWebページを表示する

iPadと同じように、縦・横どちらでも快適にアプリを使用できる

7インチのAndroidデバイス(Nexus 7だとしたら16:10)とWebページ表示を比較

ディスプレイサイズの数字の差はわずか0.9インチ(7インチと7.9インチ)だが、表示面積は49%も違う

横向きで比較すると……

67%も広い。Androidはホームボタンなどのバーが画面内に配置されているため、コンテンツ表示面積の差がさらに広がるのだ

キーノートで7インチとiPad miniの7.9インチ(4:3)の情報表示の違いの比較した際に、Nexus 7(16:10)と思われる端末がスクリーンに登場した。AppleがNexus 7やAmazonのKindle Fire HDなどを意識しているのは明らかだ。これらは199ドルという低価格で、7インチタブレット市場に消費者を呼び込むことに成功した。コスト割れ覚悟の価格で端末を普及させ、オンラインストアを通じたコンテンツ販売やサービス提供で長期的に利益を上げていくビジネスモデルである。

iTunes Storeを持つAppleも同様のビジネスモデルで対抗することは不可能ではなかったが、同社はそうしなかった。iPad miniの価格は329ドル(28,800円)から。代わりに同社が武器としたのは「Every inch an iPad.(隅から隅までiPad:Apple日本サイトの訳は"ミニなのは、サイズだけ")」であることだ。

現時点で199ドルのタブレットは、199ドルという価格を実現するためにストレージやカメラ、センサーなどが犠牲になっている。HD映画を扱えるのに、ストレージが8GBではいくつかのコンテンツだけで一杯になってしまう。カメラやセンサーが欠けているため、使えない人気アプリも出てくる。それでは汎用タブレットとして疑問符が付く。

iPad miniは、iPadでできること、iPadで使用できるアプリの動作が全て可能で、329ドルからという価格だ。発表前に、もしiPad miniの価格が300ドル以上だったら会場からブーイングもあり得ると思っていた。しかし、消費者にとってのiPad市場の価値、Every inch an iPadであることを丁寧に説明した後での329ドルという価格発表に対して、会場からはこの日もっとも大きな歓声が起こった。

iPadの全てを、片手で持てるサイズに凝縮したiPad mini

iPad miniと現在の7インチタブレット市場の関係は、しばらく前のMacBook AirとPCの低価格競争を思い出させる。PCが低価格を訴求点とするあまり、品質すら犠牲にする低価格化が起こり、結果的に利益とユーザーを失ってしまった。MacBook Airは特に秀でたスペックではなく、また価格も同程度のPCに比べて高い。ところがパソコンをより使いやすいものに変えようとするAppleの姿勢、ユーザー体験に焦点を当てた設計・デザインが生み出す違いに惹かれて、消費者はMacBook Airを選択した。

199ドルタブレットが注目されている今だからこそ、Appleは「Every inch an iPad」、言い換えるとユーザー体験にこだわったiPad miniを小型タブレット市場に投入するのだ。