(中山氏)「EX-F1の頃は、ハイスピード技術の意味するところは高速起動、高速連写にありました。ですが、ZRシリーズでは高速起動、動作による快適さと高速連写はすでに基本技術であり、さらに、その応用が可能にする新しい表現技術全体を意味するようになってきています。

例えば、高速連写した複数枚の画像を合成することで、1回のシャッターでは不可能な写真を実現するHDRアートやスライドパノラマ、マルチフレーム超解像ズームなどですね。さらに最新のEX-ZR300では、ミックス光でも光源ごとに正しいホワイトバランスを解析したり、肉眼では見えないような真っ暗闇でも昼間のように写すHSナイトショットを搭載するなど、連写した画像からより高品質な写真を紡ぎ出すことができるようになっています」

「EX-ZR10」
0.37秒の快適な撮影間隔やHDRアートなどで「使う楽しさ」を追求。センサーは1/2.3型1,275画素裏面照射式CMOS、レンズは28~196mm相当(35mmフィルム換算)、発売は2010年10月

デザイナーのアイディアを実現した「EX-TR100」

EX-ZR10から続く流れは、最新のフラッグシップモデル「EX-ZR300」(2012年8月現在)へとつながっていく。EX-ZR300については後述するとして、EXILIMの本流たるEX-ZR10発売の翌年、またもや世の好事家たちの視線を釘付けにするスピンアウト機が登場する。個性的なデザインと既成概念にとらわれない自由な撮影スタイルを提案した「EX-TR100」だ。

こういう製品を世に出せるところがカシオらしい。"フリースタイルカメラ"「EX-TR100」

(中山氏)「EX-TR100は、デザインセンターからの提案でした。デジタルカメラでもっと動画を撮ってもらうにはどうしたらいいだろう、をテーマに導き出されたフォルムで、動画と静止画を撮るスタイルを変えようというカシオからの提案でした。回転式のボディと広角単焦点という構成で自分撮りがしやすくなっていたり。でも、動画という部分は、正直あまり注目されませんでしたね。

ただ、海外では非常に評価が高かったんですよ。米国の大手流通でも、これは非常に新しいデザインでクールだと紹介されましてね。フェイスブックやツイッターでフォトコミュニケーションするツールとしてすごくいいと。これはアメリカで爆発的人気になるかと期待したのですが、ちょうど東日本大震災による製造の遅れなどがあり、国内外でタイミングを逃してしまいました」

しかし、そんなEX-TR100がその後、中国で大ブレイクする。

「EX-TR100」
液晶とフレームが回転する新しいスタイルで、今までにないアングルや撮影方法を提唱したモデル。ハイスピード技術も搭載する。センサーは1/2.3型1,275万画素裏面照射式CMOS、レンズは21mm相当の固定焦点(35mmフィルム換算)、発売は2011年7月

(中山氏)「EX-TR100で自分を撮影して、EX-TR100の液晶モニタをさらにスマートフォンで撮って、アップロードしている女の子がウェイボ(中国版ツイッター)で話題になったのです。この女の子の画像にいつもEX-TR100が写っていたおかげで、カメラも大変な人気になりまして。

せっかくスマートフォンがあるんだから、スマートフォンで撮ってアップすればいいのに、と思うでしょ。でも、EX-TR100じゃないと自分をキレイに撮れないから、っていうんですね。プレミアムオートモードの画質の良さや人物メイクアップをすごく気に入ってくれたみたいです」

なるほど、それはEXILIMの特長の1つでもある。担当編集氏も、上海でのイベントを取材した折、EX-TR100を使っているブロガーを何人も見かけたそうだ。EX-TR100のレンズは21mm相当(35mmフィルム換算)の広角なので、人物と一緒に会場の風景もフレームインできて、ビデオレポートに最適なのだろう。

―― ところで、EX-TR100は、カシオさんのデザインセンターから提案された企画ということですが、このような経緯で製品化されるケースは多いのでしょうか ?

(中山氏)「デザインセンターのスタッフが新しいデザインを役員にプレゼンする、といったことは定期的にやっています。現在製品ラインとして手がけているものから、その先のビジョンまで含めて積極的に提案していますね。EX-TR100のときはタイミング的に、そろそろ新しいものをやらなければ、という方向性が特に求められていた時期だったこともあります」

「EX-H20G」
ハイブリッドGPSを搭載し、屋内でも位置情報の測位を実現。世界の地図データと約1万点の観光地の撮影スポット写真、約100万件の地名情報を本体に収録。センサーは1/2.3型1,448万画素CCD、レンズは24~240mm相当(35mmフィルム換算)、発売は2010年11月

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