―― 未来のコンパクトデジタルカメラ、すなわちカシオ第4世代のデジタルカメラの姿も考えられていると思いますが。

(中山氏)「そうですね…あまり具体的には言えませんけど(笑)。ご存じの通り、スマートフォンの性能が向上する一方、ミラーレス機なども含めて一眼レフカメラのハードルが低くなってきています。コンパクトカメラは、この両者の間を埋めていくことになりますが、それは市場拡大のチャンスでもあると思うんですよ。

実際、スマートフォンはどうしても似たような形になってしまいますよね。それに、形状的な制限から、ズームレンズも大型センサーも搭載できない。そして一眼レフもレンズ交換式である以上、一定以上のコンパクト化は難しい」

歴代EXILIMに囲まれて(余分な物も写っていますが…)

(中山氏)「でも、コンパクトカメラには"所有欲を満たすデザイン"を付与することができます。高倍率ズームも大型センサーも搭載できるし、さらなるコンパクト化の余地もある。さらに、カシオのハイスピード技術やリコンフィギュラブルプロセッサ(編注:LSIの構成を動的に作り替え、常に最適なハードウェア環境を作り出す)の技術が加わることで、スマートフォンのカメラアプリでは不可能なデジタル画像処理も実現できます。つまり、コンパクトカメラが一眼レフとスマートフォンの間を押し広げていく可能性は大いにあると思うのです」

―― スマートフォンの話が出ましたが、クラウドとの連携など、スマートフォン独自の機能にカメラが近づいていく可能性についてはいかがでしょう ?

(中山氏)「ネットワークとの親和性については、避けて通れないと思います。ネットとの融合は当然出てくるでしょう。ただ、カメラに通信機能を搭載するというより、むしろスマートフォンと共存する方向を考えたいですね。スマートフォンよりも高画質でありながら、今までとはまったく違う写真文化の追求を究める。そこに市場は必ずあると思うんですよ」

中山氏のこの発言については、スマートフォンとの連携を可能にするFlash AirおよびEye-Fiへの対応、そして「プレミアムオート PRO」モードの大幅な画質改善がなされた最新機種「EX-ZR300」にも、その裏付けが見て取れるだろう。EX-ZR300について詳しくは、以下の関連記事をご覧いただきたい。

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「EX-ZR300」
0.95秒の高速起動を実現した最新フラッグシップモデル(2012年8月現在)。熟成されたハイスピード技術と高度な画像処理能力が特長。センサーは1/2.3型1,679万画素裏面照射式CMOS、レンズは24~300mm相当(35mmフィルム換算)、発売は2012年6月

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今回、"EXILIM 10年"の歴史を振り返って強く印象に残ったのは、カシオの「異端を普遍に変える力」だ。EXILIMは、コンパクト化や大型モニタの搭載、GPSモデル、高速連写などなど、他社とはやや視点を異にするユニークな発想を次々に具現化し、やがてその多くがデジタルカメラ業界のスタンダードな潮流となっていった。何よりデジタルカメラそのものが、フィルム時代のカメラ業界では異端的な存在だったのである。しかし、今やカメラという概念が限りなくデジタルカメラと同一になりつつあることは、あらためて語るべくもないだろう。

余談だが、カシオには「もっと先へ行かなければ」というプレッシャー(らしきもの)が社風としてあるように、筆者は常々感じていた。それを中山氏に話したところ、「あぁ、それはありますね ! 世の中でやっていないことを探して突き進んでいこうと、社員みんなが思っていますよ」と笑って答えてくれたのだった。やはり、現在のデジタルカメラの先駆けとなったQV-10も、そしてEXILIMも、カシオから生まれるべくして生まれたのだ。

ちなみに、カシオでは今年(2012年)、EXILIM 10周年記念モデルを発売する予定という。しかも従来機のバリエーションではなく、新たに設計された完全な新機種になるとのこと。こちらについても、詳しい情報が入り次第ご紹介したい。