こうして、先鋭的フォルムで衝撃的なデビューを果たした初代EXILIMのEX-S1だったが、実はスマッシュヒットとはいかなかったという。登場時のインパクトが大きく、EXILIMブランドを一気に周知させることには成功したものの、当時はまだデジタルカメラを買うのは初めて、という人も多かった。カード型で単焦点、134万画素という割り切った仕様のEX-S1は、1台目のデジタルカメラとしては選びにくいモデルだったのだ。3ヶ月後にはセンサーを大型化した200万画素モデル「EX-S2」が発売されるが、大勢に変化はなかった。
(中山氏)「本当に人気が出たのは、EXILIM ZOOM (EX-Z3)から。3倍ズームで300万画素という当時の主流スペックをクリアしながら、ボディをできる限り薄くしたモデルですね。ズームレンズを非常に薄くできたのが大きかった。このために、ペンタックスさんと共同で、スライディングレンズ(編注:鏡胴を格納するときにレンズが横方向へ待避する)というまったく新しい機構を考え出しました。
また、当時、他社では1.6型が主流だった液晶モニタを、EX-Z3では2.0型にしました。これは店頭で非常に大きなインパクトだった。EX-Z3は、大きい液晶モニタを積むことを前提にボディサイズを決めたんですよ。それが成功したんですね。国内で9~10ヶ月間連続で売り上げ1位になりました」
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「EX-Z3」 |
―― 液晶モニタで見る、撮る、というのはQV-10からのコンセプトでしたよね。
(中山氏)「そう、液晶モニタはデジタルカメラの基本装備です。今ではそんなこと当たり前ですが、当時はカメラ本体のコンパクト化やコストダウンが最優先で、液晶モニタが少々おろそかになる風潮がありました。1.6型や1.4型、中にはコストダウンのために液晶モニタを省いたモデルもあったんですよ。QV-10でさえ1.8型モニタだったのに…。だから、2.0型モニタを搭載したEX-Z3の存在感は、なおさら大きかったんです。
―― 今のEXILIMがあるのは、EX-Z3のおかげということですね。
(中山氏)「そうですね。ただ、やはりエポックメイキングだったEX-S1、EX-S2のカメラとしての評価は今でも高く、このシリーズの後継機は出ないのかと言われることがあります。今まで市場になかったものが登場したという意味では、歴史に残るのはEX-S1なのかなと思いますね」
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「EX-Z1000」 |
そして、あの「EX-F1」が登場
大成功を収めたEX-Z3以降も、EXILIMは長い電池寿命を実現した「EX-Z40」や「EX-Z30」、コンパクトデジタルカメラとしていち早く1,000万画素機の「EX-Z1000」を発売するなど、常に業界の流れをリードしていく。そして2008年3月、突然変異ともいえる、(カシオにしては)大型機の「EX-F1」が登場する。
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