ユーザー数が増え続け、日常の生活の中にも着実に定着している感もあるソーシャルメディア。ソーシャルメディアユーザーをターゲットに、各企業が情報発信を行うケースも急激に拡大している。

PC関連でも外資系企業を中心にTwitterやFacebookにアカウントやFacebookページを開設して情報発信を行うメーカーが増えてきた。そんな中、富士通も同社の個人向けPCブランド「FMV」シリーズの公式Facebookページ「富士通株式会社|Fujitsu FMV」(以下、「Fujitsu FMV」)を2012年5月9日からスタートしている。

企業がソーシャルメディアにアカウントを開設するとき、運用を担う立場として広報やマーケティング担当者など、PR系の業務に携わる部門が担当する場合が多いが、「Fujitsu FMV」の場合はユーザーサポートを担当する部門が中心となって、運営を行っている比較的珍しいケースとなっている。

そこで今回、「FMV」シリーズのFacebookページの運営を行っている富士通 パーソナルビジネス本部 コンタクトセンター統括部 部長 菅谷創一氏と、富士通 パーソナルビジネス本部 コンタクトセンター統括部 林功二氏、富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 プロモーション統括部 パーソナルプロモーション部 小川晃一氏の3人に、Facebookページ開設までの経緯や日々の運営、これからの課題について聞いた。

Facebookページ開設までの経緯

富士通 パーソナルビジネス本部 コンタクトセンター統括部 部長 菅谷創一氏

「Fujitsu FMV」としては、すでにTwitter(@fmworld_biz)で製品やサービスの情報を配信しているが、新たにFacebookページを立ち上げた理由として、菅谷氏はまず「成長性」を挙げる。

「Facebookに人が集まってきているという実感があります。『コンタクトセンター統括部』ではWebや電話窓口を含めて、ユーザーとのコンタクトチャネルを見ていますが、既存のWebサイトでの集客がどこまで伸ばせるかという懸念もあり、やはり人が集まって、成長しているところにチャネルを広げていく必要性を感じたのが一番大きいですね」と菅谷氏は話す。

2012年6月に発表された日本国内のFacebook推定ユーザー数は899万人。前月比で38.5万人増と急激に拡大している(参照記事)。

「ユーザーが実名で登録をしている場所で、こちらが配信する情報に対して反応がダイレクトに返ってきます。お客さまとダイレクトにお付き合いさせていただく、というコンタクトセンターの目的とも合致していると思っています」(菅谷氏)。

Webサイトとは違う切り口で

富士通 パーソナルビジネス本部 コンタクトセンター統括部 林功二氏

現在、Facebookページでは、製品や製品発表会、イベント情報、CM情報などの製品/プロモーション系のコンテンツを小川氏、サポートセンターの人たちの様子、「PCの使いこなし」などのコンテンツを林氏が取りまとめている。「開設したばかりなので、まだ見えない部分もあるがレスポンスは良好です」(菅谷氏)

「イベントなどはその場で投稿して臨場感を伝えています。プロモーション部門が展開しているTVCMやYouTube、雑誌記事など、マス中心の製品情報やプロモーション情報についても、知り合いや友達に伝えたくなるような情報をFacebookページで紹介していきたいですね」(小川氏)

6月22日に行われたUltrabook「LIFEBOOK UH75/H」のタッチ&トライイベント

富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 プロモーション統括部 パーソナルプロモーション部 小川晃一氏

製品情報では、Webサイトの製品ページには掲載されていないことも配信している。もともとは既存の製品ページと同じ内容を配信していく予定だったが、「独自情報の方がレスポンスがいいことが分かってきました。同じ内容でも切り口を変えて情報を提供していくつもりです」(菅谷氏)という。

例えば、同社が6月5日に発売したUltrabook「LIFEBOOK UH75/H」は、最厚部15.6mmの薄さが大きな特長だが、通常の製品ページでは横から見た写真で薄さを表現している。一方Facebookページでは、「LIFEBOOK UH75/H」を梱包する「箱」に注目。梱包する箱がまるでピザの箱のように薄いという写真を掲載した。

Ultrabook「LIFEBOOK UH75/H」の箱についての投稿

「箱のことはWebサイトにはもちろん、店頭でも表に出にくい部分なので、ちょっと変わった珍しい部分を面白がってもらえたと思います。こういう情報はFacebookページならではだと思います」(林氏)。

「現場感覚を持った」コンテンツ

「PCの使いこなし」は、同社のサポートページ「AzbyClub サポート」に掲載されている、膨大なQ&AやPC活用情報を再編集して配信している。特にFMVシリーズに限ったコンテンツではなく、PC全般のtips的な内容となっている。

「他社製品をお使いのユーザーにも有益な情報だと思いますので、ぜひ見てもらいたいですね。富士通がいろいろな情報を出しているというアピールにもなると思っています」(林氏)。

サポートセンターの情報も、実際にコールセンター、サポートセンターで働いている人が執筆したものを投稿している。サポート関連の情報は、ユーザーからは見えにくい部分であり、メーカーとしてもアピールする機会がなかなかなかった分野だ。

「『中の人』たちがサポートに関してどんな勉強をしているのか。どのように業務に取り組んでいるのか。センターの中の設備についてなど、スペック表には出てこない情報を提供することが有益だと思っています」(林氏)。

サポートセンターでの業務の様子

サポートセンターで行われているイベントについても投稿している

「現場感覚を持ったコンテンツを出していきたいですね」と菅谷氏。現在は工場に関するコンテンツを企画しているという。同社ではPCの開発、製造、サポート、リサイクルまですべて国内で行っている。そうした各「現場」で働いている人が普段何をしていて、どんなことを考えているのかということをユーザーに見せていく予定だ。

ユーザー数の拡大とコミュニケーションの頻度が課題

Facebookページの開設からまだ2カ月あまりだが、徐々に課題も見えてきたという。まずは「Facebookページのユーザー数(「いいね!」を押した人)」だ。「当初予定していた伸びよりも、じわじわという印象です」(菅谷氏)。

ソーシャルメディアでのユーザー獲得は、多くの企業が難しさを感じている部分だろう。実際に始めてみたはいいが、ユーザーが増えずにそのまま更新が途絶えてしまう、あるいはただリリースなどのお知らせを流すだけになってしまっている、といった話も聞く。

「始める前からもある程度予想していたが、ソーシャルメディアでのユーザー獲得は長期戦になるだろうという覚悟はしています」(菅谷氏)。

「現在、Facebook広告を展開しています。トライアル的に見せ方や効果などある程度検証したいと思います」(小川氏)。

コンテンツを出していく頻度やタイミング、内容もポイントになる。メールマガジンなどと同様にあまりに頻繁に来すぎると、次第に目に留めなくなったり、逆に邪魔になったりマイナスのイメージを持たれるという可能性もある。だからといって情報を出さないのでは本末転倒だ。

「自分でもいろんな企業のFacebookページを100社くらい購読してみましたが、スパム化してしまいます。基本的には知り合いや友人とコミュニケーションをするツールで、そこに企業が入りこんでくるのは本来邪魔。そこにどうやって興味をもってもらうか。お客様がほしいと思う情報をださないといけない、と考えています」(菅谷氏)。

「PCを使うことで楽しくなってもらいたい」

「PCを購入する意思があるときは、製品情報のページを見てもらったり、カタログを見てもらうことが多いと思いますが、PC購入というところを離れたときにお客さまとどうコミュニケーションするのかが重要」と林氏。Facebookページを通じて、ユーザーとのリレーションを高めたいという。

菅谷氏は「せっかくお客様とつながらせていただいた以上、PCを使っていて楽しくなってもらいたいですね。PCのサポートが重要視されるのは、PCはまだまだ使うことにストレスが生じているからだと思います。『PCの使いこなし』をはじめとしたコンテンツで、そのストレスを取っていこうと思います」と話した。

企業の公式アカウントによる、ソーシャルメディアでの情報発信はますます増えていくだろう。富士通でも引き続き、最新の製品情報やキャンペーン情報、パソコンの活用情報やサポート情報を提供していく予定だ。

企業自身、それもサポート部門による情報発信やコミュニケーションによって、ユーザーにどのような価値を提供できるか今後も注目したい。

富士通パソコンFacebook公式ページ「富士通株式会社|Fujitsu FMV」