Amiga OSから発展的進化を目指す「Syllable」

前節では「AROS」を紹介しましたが、Amigaというコンピューターが持つ人気度の高さから、異なるクローンOSが存在します。Kurt Skauen氏が1994年からプロジェクトを立ち上げた「AtheOS」は、1998年にファーストバージョンとなるバージョン0.1.2がリリースされ、多くの開発者や賛同者が集まりましたが、同氏はほかのユーザーが投稿したパッチを採用しない場面が多く、自身の興味がほかに移ったことなども相まって、プロジェクトは停滞。

AtheOSはBeOSのBFSと同じく、64ビットジャーナリングファイルシステム化したAFS(AtheOS File System)を実装するなど、当時としては近代的なOSだっただけに、多くのフリーOS好きが残念に思ったそうです。現在では公式サイトの更新も停止していますが、Web上では同氏に対するインタビューを読むことができますので、興味のある方はご覧ください(Interview With The AtheOS Creator, Kurt Skauen@OSnewsAtheOS Wizard Kurt Skauen Tells All@Slashdot)。

その後、LinuxカーネルとXFree86を用いて、AtheOSのAPIを実装した「Cosmos(コスモス)」というプロジェクトも立ち上がりましたが、本命はAtheOSのソースツリーを元に立ち上げられた「Syllable」です。2002年に家庭や小規模オフィス向けのオープンソースOSを目指し、Kristian Van Der Vliet(クリスチャン・ヴァン・デア・フリート:通称Vanders)氏が中心となって開発が始まりました。図35は公式サイトから参照できるスクリーンショットですが、既にWorkBenchの面影は多くありません。アイコンなどはBeOSの影響をうかがい知ることもできます(図32)。

図32 Syllableのデスクトップ画面。既にWorkBenchの名残は見えません(公式サイトから)

SyllableはAtheOSと同じくAFSをファイルシステムとして64ビットジャーナリングファイルシステムを採用しつつも、FATやext2/3の読み書きや、NTFSの読み込みをサポート。独自のGUI構造を目指すオブジェクト指向型デスクトップ環境に、EmacsやVim、Perlなどオープンソース系のメジャーソフトウェアを移植しています。もちろん開発環境も整っており、C++指向のAPIはGCCなどに代表されるGNUツールチェーンでSyllable用ソフトウェアを書くことも可能です。そのためSyllableは、クローンOSというよりもAmiga OSやAtheOSをベースにした独自のオープンソース系OSに分類されるべきでしょう。

AROSと同じくコンピューター実機に導入することもできますが、公式サイトにはVMware用イメージファイルが用意されていますので、こちらを試してみましょう。ダウンロードページにアクセスし、「Syllable Desktop 0.x.x VMware image(YY MB 7-Zip archive)(.x.xはバージョン番号、YYはファイルサイズ)」をクリックしてファイルをダウンロードしてください。ただし、同ファイルは7-Zip形式で圧縮されていますので、同形式に対応した圧縮伸張ツールを用いましょう。展開したフォルダー内にあるファイル「Syllable.vmx」をダブルクリックすれば、VMware PlayerでSyllableが起動します(図33~37)。

図33 ダウンロードページにアクセスし、「Syllable Desktop 0.6.6 VMware image (55 MB 7-Zip archive)」をクリックします(数字はバージョンによって異なります)

図34 関連付けられた圧縮伸張ツールで7-Zip形式ファイルが開いたら、デスクトップなど適当な場所に展開してください。続いてフォルダー内にある「Syllable.vmx」をダブルクリックします

図35 VMware Playerが起動し、画面のような警告ダイアログが現れたら<コピーしました>ボタンをクリックします

図36 ゲストOSとしてSyllableが起動しました。パスワード「root」を入力してログインします

図37 これでSyllableが起動しました