スマートアクセスのデバイス、磁気センサーを除去!

― そして、いよいよ中身の話へと入っていくわけですが。ついにMantaにもスマートアクセスを搭載されましたね。この薄いボディに、どのようにしてスマートアクセスの機構を収納したのでしょうか?

岡本「スマートアクセスには2つの特長があります。ひとつは、センターの3針(秒時分針)が独立して動くこと。そしてもうひとつは電子式リューズスイッチによるコントロールです。このリューズスイッチのユニットを組み込むのはかなり大変で、OCW-S2000では、その構造を大きく変えています。

OCEANUSで初めてスマートアクセスを搭載したOCW-T1000では、りゅうず操作の検出に磁気センサーを使った非接触式を採用していたのですが、今回はメカ接点でりゅうず操作を検出する接触式を採用しました。」

OCEANUSでスマートアクセスを搭載した2機種、OCW-S2000(左)とOCW-T1000(右)の基板。ピンセットの先が指しているのが磁気センサーで、OCW-S2000の基板上にはこれがないことが分かる

OCW-S2000の基板を横から見たところ。「コンマ数ミリの世界」という岡本氏の言葉に納得!

― えっ、OCW-S2000には磁気センサーが入っていないんですか!?

岡本「そうです。Mantaのステイタスである"薄さ"をキープするためには、この磁気センサーを除去する必要がありました。磁気センサーがなければ、その高さぶん薄くなります。さらに、LSIと受信ICも薄くしました。ほかにもありますが、この2点が大きなポイントですね。」

― 本当にギリギリの世界なんですね…。

岡本「腕時計の場合は、コンマ数ミリの積み重ねを繰り返して削減していかないと、薄くならないんですよ。」

― 我々素人が考えると、電子的なセンサーより物理的なメカ接点を使った方がモジュールが大きくなってしまいそうにも思えるんですが、そうではないのですね。

岡本「確かに、機構的には接触式の方が複雑ですね。ただ、磁気センサーという特殊なデバイスのせいで、(リューズスイッチのシステムとしては)非接触式の方が大きくなってしまう。これは、りゅうず軸が回ったりする動きを非接触で検出するための空間が、デバイスの中に必要だからです。といっても、もちろん、本当にわずかな空間なんですが…。それだけ、スマートアクセスのシステムが小さいということですね。」

りゅうずを回すことで、軸側の接点がU字接点に付いたり離れたりを繰り返す。これが接触式リューズスイッチの仕組み

― OCW-T1000にスマートアクセスを搭載することになったとき、最初から接触式でやろうという話は出なかったのでしょうか。

岡本「接触式は、機構は複雑ですが制御はシンプル。一方、非接触式は機構がシンプルですが制御は複雑、という特長があります。どちらを採用しようかという話はありましたが、カシオはすでにセンサーの技術を持っていたので、最終的にはそれを利用しよう、と。」

― それはカシオらしいエピソードですよね(笑)。 カシオとしては、制御の複雑な非接触式の方が実現しやすい。

岡本「接触式は、機能もよりアナログ的ですよね。その点、センサーを使うとアナログだけでなくデジタル技術とのコンビネーションが使えるんです。OCEANUSにはアナ/デジフェイスのモデルもありますし、先のことを考えて柔軟性が高いシステムを採用しよう、という当時の判断でした。OCW-S2000は完全にアナログフェイスなので、接触式もありなのですが。」

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