考察
ということで、長々とベンチマーク結果を交えて紹介してきた。筆者の結論としては、
(1) | Core i7-980Xが実際のアプリケーションを使う際に、Core i7-975より遅くなることは殆ど無い。 |
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(2) | ただし、Core i7-975よりも早くなるアプリケーションもまた、非常に限られる。現状でエンコードとかレンダリングなどの用途に使うのでなければ、Core i7-975をCore i7-980Xに買い換えるメリットは、殆どない。 |
(3) | 消費電力は間違いなく下がっている。が、コアの数が増えた分で帳消し。 |
といったあたりになる。
(1)については、L3キャッシュのLatencyの多さに起因して多少の性能低下が見られるシーンはあるが、むしろL3の大容量化でこれを補える部分もあり、実際のアプリケーションでこれを実感することは殆ど無いと思われる。Uncoreの消費電力半減とのバーター、と思えば十分許容できる範囲だろう。
問題はむしろ(2)である。4Core/8Threadでももてあまし気味なのに、6Core/12Threadともなると、非常に限られたシーンでしか活躍はできない。まぁ自宅でCGとか自宅でLINPACK、なんて人にはうってつけかもしれないが、とりあえずゲーマーには当分要らないと言って良いだろう。
(3)については、話はもう少し微妙だ。個人的にはWestmere-4Cという製品があったら、その方が多分ユーザーの満足度は高いと思える。Coreの数を減らし、その分のTDPマージンを動作周波数アップにあてたら、(2)の問題は簡単に解決するだろう。それを敢えてやらず、2Cと6Cしか製品ラインナップを出さないあたりに、Intelの明確な意思を感じる。というのは、そんな製品を出したら間違いなく馬鹿売れするのは明白だが、今しばらくは45nmの4コア製品も併売しないと供給が間に合わないことになるからだ。そこで、そうした事態を引き起こさないように4コアはラインナップせず、また6コアについても消費電力の帳尻をあわせることで、絶対的な電力の節約には繋がらない構成をラインナップした、と筆者には感じられる。
逆にそれゆえ、このCore i7-980Xを余り高く評価する気にはなれないというのが正直なところである。いや勿論(引き続き併売される)Core i7-975を買うくらいならCore i7-980Xを買ったほうがマシだとは思うのだが、なんというかExtreme Editionの名前を冠していつつも、Core i7-975からの性能の伸び代の余りに少なさが非常に気になるのである。で、「じゃ消費電力の少なさが実感できるか?」と言われると、それも現実問題として難しい。絶対値としての消費電力は、Core i7-975より若干下がった程度だからだ。
そんな訳で筆者としては、Core i7-980Xをそのまま使うことはあまり気が進まない。Intel純正のマザーボードでは不可能だが、恐らくサードパーティ品の中には有効コア数をBIOSで4つとかに減らせる製品が出てくるであろう。これを使い、更にTurbo Boostの設定も変えて、(コア節約で)余ったTDP枠を動作周波数向上に振り分けるといったオーバークロック前提の使い方が、一番好ましいように思える。
「すごく素材はいい製品なのに、この構成なのが残念」というのが、率直な筆者の感想である。