消費電力(グラフ52~54)

さて最後はこちらである。今回も消費電力についてはワットメーターを使い、

High Performanceプロファイルにおける、何も作業をしていない待機状態の実効消費電力
Power Saverプロファイルにおける、何も作業をしていない待機状態の実効消費電力
SandraでDhrystone実行中の実効消費電力の最高値
SandraでWhetstone実行中の実効消費電力の最高値
MainConcept H.264/AVC 1.6.1でBlu-Ray HD 1-passでエンコード中の実効消費電力の最高値
3DMark VantageのExtreme ProfileでGame Test 1を実行中の実効消費電力の最高値
3DMark VantageのExtreme ProfileでGame Test 2を実行中の実効消費電力の最高値

をそれぞれ目視で確認した。

この結果はグラフ52に示すとおりである。とりあえず3DMark VantageについてはGPUの突発的なピークにあたったためか多少バラついているが、それ以外のテストについてはいずれもCore i7-980Xの消費電力はCore i7-975を下回っていることが明白である。コアの数が2つ増え、しかも同じ動作周波数でこれなのだから、コア当たりの消費電力は大幅に下がっているものと考えられる。

これを確認するため、ちょっとコアの数を変化させてみた。先のPhoto15で、"Active Processor Core"というメニュー項目があるのがお判りいただけるだろうか? これは何コアを有効にするか設定できるもので、1/2/ALLの3段階に切り替えられる。Core i7-975なら1/2/4コアだし、Core i7-980Xなら1/2/6コアとなる。これを切り替えつつ、かつHyper-ThreadingのOn/Offをしながら、SandraのDhrystone/Whetstoneの測定を行った結果をまとめたのが、グラフ53(Dhrystone)とグラフ54(Whetstone)である。測定値はグラフ中の丸で、破線は丸を繋ぐ近似値である。面白いことに、2つのグラフが非常に似た傾向を示している。つまり0コア相当になるY軸切片は、Core i7-975が140W程度、Core i7-980Xは130W程度である。マザーボードに加えRadeon HD 5870やHDD×2がぶら下がっているから、この値の絶対値は妥当であろう。重要なのは、要するにUncoreにあたる部分の消費電力が10W下がっていることである。

一方、この近似値の傾きが、それぞれコア1個あたりの消費電力に相当することになる。そこでこの近似値から傾きを出してみると、表4の様な結果となった。大雑把に言って、Core i7-980Xのコア1個あたりの消費電力は、同条件のCore i7-975よりも30%程度少ないと判断される。

■表4
Dhrystone Whetstone
975X 27.51 W/Core 24.93 W/Core
975X(noHT) 25.71 W/Core 17.36 W/Core
980X 19.71 W/Core 17.29 W/Core
980X(noHT) 17.07 W/Core 12.57 W/Core
消費電力比 71.6% 69.4%
消費電力比(noHT) 66.4% 72.4%

また、この数字を逆に当てはめれば、Core i7-975のUncoreの消費電力は20W程度、Core i7-980XのUncoreの消費電力は10W程度と考えられる。Hyper-Threading有効の条件でSandra Dhrystoneをフルに行った場合の消費電力を考えると、

Core i7-975 : 27.5×4=110.0(W)
Core i7-980 : 19.7×6=118.2(W)

となり、どちらもTDPが130Wに収まることを考えると、Uncoreの消費電力がそれぞれ20W/10Wとなる計算だ。これは先ほどのグラフで出てきた「Uncoreの差が10W」という結果にもぴったり合う。

まぁ実際はTurbo BoostをDisableにするとか、ピーク値ではなくもう少し精密に消費電力を測定するとかが必要なので、これは極めてラフな実験ではあるのだが、それでもCore i7-980Xが確かに省電力であることは確認できたと言える。