日本アイ・ビー・エムは7月6日、パートナー事業に関する記者説明会を行った。同社は7月、パートナー事業を強化すべく、重点施策と新体制を発表した。新たなパートナー戦略では、これまでシェアが低かったミッドマーケットのシェア拡大を目指し、地方のパートナーとの連携強化に注力するという。

日本アイ・ビー・エム 執行役員 パートナー事業担当 岩井淳文氏

執行役員 パートナー事業担当 岩井淳文氏はまず、同社のパートナー制度とパートナー事業を強化するに至った背景について説明した。同社では、「IBM PartnerWorld」というパートナー支援制度を設けており、同制度にはリセラー・ディストリビューター、ISV、インテグレーターなど5,000社が参加している。同制度への加入は無料だ。

同氏は、「現在、IT市場においてサービスの伸びが顕著である一方、これまでパートナーの売上を支えてきたハードウェアやソフトウェアのビジネスにおける割合が減少しているとともに、クラウドやSOAなど新たなソリューションの登場によりビジネス構造が変化するなど、パートナーのビジネス環境に変化がもたらされている。こうした変化に応じてパートナーの売上・利益拡大が図れる仕組みを構築すべく、パートナー戦略の見直しを行った」と語った。

日本のIT市場動向と事業構造の変化

同社では、「同社のパートナー施策の再確認」、「パートナーの成長を支援する施策の展開」、「パートナー事業創造の支援」という方針の下、次のような5つの重点施策を立てている。

  1. 従来施策の改善と推進
  2. 環境の変化に対応した多角的な支援
  3. パートナーとのSmarter Planetの推進
  4. パートナーとのソリューション相互活用と新ビジネスモデルの構築
  5. One IBMでの支援

上記の施策のうち、クラウド・コンピューティングに関わりがある重点施策3と新体制に関する重点施策5について詳しく説明しよう。

重点施策3:クラウド・コンピューティングでの協業を推進

今年より、同社は「Smarter Planet」というコンセプトを推進しているが、同コンセプトは「New Intelligence」、「Smart Work」、「Dynamic Infrastructure」、「Green&Beyond」という4つの柱からなる。同氏は「Smarter Planetの推進にあたって、まずはDynamic Infrastructureを足がかりに進め、その具現化するITサービスの提供形態が"クラウド・コンピューティング"」と説明した。

パートナーとクラウド・コンピューティングについて協業するために、「IBMのパブリック・クラウドとサービスの再販」、「パートナーが提供するパブリック・クラウドへの支援」、「顧客が構築するプライベート・クラウドへの支援」という3つのモデルが用意されている。

プライベート・クラウドとはユーザー企業内に構築されるクラウドであり、また、パブリック・クラウドとはベンダーのデータセンター内に構築されるクラウドである。

同氏は、「今のところ、当社はベンダーの中でもトップと言ってよいほどクラウドに関する技術やノウハウを持っている。一方、パートナーはまだクラウドに関する経験が少ないので、当社のクラウドに関する技術力を提供していきたい。当社としては、パートナーのパブリック・クラウド内に当社の製品やサービスが組み込まれればシェアが増えることになる」と述べた。

パートナーとのクラウド協業モデル

重点施策5:仮想組織「One Team for Partners」の発足

パートナーを支援する体制として、各部署から人員を集約する仮想的な組織「One Team for Partners」が発足した。同組織は、マネジメント・ボード、パートナー営業、製品担当営業、テクニカルサポート、各部門の企画・マーケティング責任者、パートナー・ストラテジー&マーケティングから構成される。パートナー・ストラテジー&マーケティングは7月に新設されたチームだ。

これまで、パートナーの支援は製品事業部ごとに行われており、パートナーからするとわかりにくい体制となっていた。同組織の発足により、パートナーに対する窓口がパートナー営業に一本化されてコミュニケーションが向上し、全社的に整合性の取れた支援の提供が実現されるという。

「今後、パートナーとの窓口となるパートナー営業は重要な役割を担うことになる。したがって、そのための教育を行っていく」(岩井氏)