お客様のかけがえのないパートナーに

あけましておめでとうございます。

読者の皆様方には平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

昨年はサブプライムローン問題に端を発した金融・資本市場での信用収縮がより深刻化し、欧米を中心とした景気の後退色が急速に深まるとともに、国内においても、円高の進行などにより、企業収益の悪化や個人消費の低迷など、先行きの不透明感が高まっています。こういう厳しい時代だからこそ、もう一度、私どもは原点に返り、「お客様起点経営」、さらに一歩進めた「お客様のお客様起点経営」をより一層希求することで、お客様の経営やビジネスの変革にお役に立てる、お客様にとってのかけがえのないパートナーになれるよう一層努力をしてまいります。

フィールド・イノベーションを加速する

富士通は、2007年から、IT活用の価値をより高めるために「フィールド・イノベーション」をご提案しております。これは「ITだけではビジネスは良くならない」という原点に立ち戻るということでもあります。従来のIT改善を目的としたソリューション提供だけでなく、お客様の業務にさらに深く関連していくことで、お客様の現場の内側から、業務プロセスや人の働き方やスキルの改善・向上に取り組み、お客様ビジネスそのものの進化をお手伝いさせていただこうというものです。

一昨年10月から、第一期生として、約150名に対して、ITを活用した業務の可視化や、お客様から問題点を探るファシリテーション技法、プレゼンテーション技術などのスキル強化に加え、社内実践、お客様の現場に入り込んでの実践を通して「フィールド・イノベータ」の育成に取り組んでまいりました。今年は、その育成期間も修了し、従来のSIerとは違う"FIer"として、お客様に実際の戦力としてご活用いただきます。

"FIer"は、お客様と同じ視点で語り、問題解決に取り組んでいくことで、従来のコンサルタントとは違ったアプローチで、お客様のビジネスの成功に向けて、お客様との新しい関係を築けることを目指しています。

社内実践による新世代ERPのご提案

富士通には四半世紀、巨大化、複雑化した、FOCSという受発注業務の基盤システムが現役で稼働を続けておりました。1279種のシステムインターフェース、400種類の帳票と100万種類の製品コードマスタを持ち、アド・ホックな開発の繰り返しによって業務プロセスが複雑化した巨大なレガシーシステムです。

この社内基幹システムを、当社の高信頼オープンサーバ「PRIMEQUEST(Linux)」のプラットフォームにSAP社のCRMを取り込み、再構築して稼働させました。そしてこの開発を通じて、SOA(Service Oriented Architecture)の考え方を実装したサービス・バスを活用して、1279種のインターフェースを、61の標準インターフェースに集約しました。

同時にXML(eXtensible Markup Language)技術の利点を活用して、明細データの履歴を含め一元管理し、情報活用を革新し、内部統制を明細データレベルで担保できるXML大福帳などの技術を開発してまいりました。社内実践で得た技術を体系化してビジネス・プロセス・プラットフォーム(BPP)としてお客様にご提供してまいります。

前述のFOCSの再構築では、このBPPを実装し、旧システムを並行稼働させつつ、リスクを最小限に留めながら段階的にSAP社の標準プロセスに改善を加えていく手法を採り入れてまいりました。

こうした基盤システムの老朽化は、世の中の多くのお客様が抱えている深刻な問題であると認識しています。富士通は、このFOCSの再構築の経験を活かし、新しい技術と考え方を活用した新世代ERPのご提案を進めてまいります。

真のグローバルカンパニーへ

ITの世界は、グローバル化が最も進んでいる分野です。この世界で、お客様にさらなる価値をご提供し続けていくためには、富士通自身がよりグローバルな企業になることが不可欠です。

そのために、私は昨年6月の社長就任以来、海外体制の再編、北米子会社の統合、グローバルな共通サービスの提供開始などに取り組んでまいりました。そして、その新たな一歩として、昨年11月4日に、当社は、ドイツに拠点を置く富士通・シーメンス・コンピューターズ(FSC)の全株式を取得し、今年4月1日に完全子会社化をすることを発表いたしました。現在は、統合に向けた作業を進めております。

FSCは、1999年に、それまでメインフレームの供給関係にあったシーメンス社と 50 対 50 でスタートした合弁会社です。約1万人の従業員を擁し、そのコアバリューは、これからのサーバの主戦場であるIAサーバの技術、プロダクトマーケティングの能力に加え、お客様との継続的関係を重視したサービスを含めたITのインフラストラクチャーの提供です。

私は、このFSCの統合を、単なる海外拠点の拡大ということではなく、富士通の変革の軸として位置付け、当社の国内を含めたグローバルビジネスを大きく変革していきたいと考えております。この変革により、富士通の「サービスとプロダクトの両輪」でのソリューションのご提供を、日本だけでなく、グローバルに展開し、真のグローバルなIT企業として、お客様へ、より高い価値をご提供できるパートナーとなることを目指してまいりたいと考えております。

最後になりますが、今年も、皆様には一層のご支援、ご指導、ご鞭撻を賜りますようにお願いして年頭の挨拶にさせていただきます。

富士通株式会社
代表取締役社長
野副州旦(のぞえ くにあき)

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