松下電器産業とパイオニアは、プラズマディスプレイパネル(PDP)事業に関する提携を発表した。

松下電器 森田研常務役員(左)とパイオニア 小谷進常務執行役員(右)

両社は、PDPパネルモジュールを、パイオニアの協力のもと、松下電器産業を主体に共同開発。このパネルを松下電器が持つ尼崎の生産拠点で生産し、2009年秋に投入するパイオニアのプラズマテレビに採用する。これまでパイオニアは、同社が持つ高発光効率化技術や高コントラスト化技術、パネルの薄型化技術を生かしたプラズマパネルの自社生産を行い、昨年からは、世界共通ブランドとなる「KURO」シリーズとして、高機能化戦略を打ち出していた。

だが、「コスト競争力の弱さが、販売量を落とし、さらにそれがコストに響くという悪循環に陥っており」(パイオニア 小谷進常務執行役員)、先頃、プラズマパネル生産からの撤退を発表していた。同時に、シャープとの資本提携を発表し、液晶パネルをシャープから調達。40インチ以上をプラズマテレビとしながらも、30インチ台を中心に新たに液晶テレビ事業へ参入することを明らかにしていた。

今回の提携は、自社パネル生産から撤退したプラズマテレビ事業を、松下電器からのパネル調達によって、継続することを明確に示したもので、「開発効率、生産効率の高い松下電器からのパネル調達によって、よりコスト競争力を持ったプラズマテレビが投入できるようになる」(パイオニア 小谷常務執行役員)としている。

今年6月以降、パイオニアのプラズマパネル開発の技術者を松下電器に転籍させ、パイオニアの高発光効率化技術や高コントラスト化技術に、松下電器の高効率化技術、環境対応技術を組み合わせることで、新たなパネル・モジュールを開発。「パネル・モジュールの開発者の層が厚さ、開発力を高めることにつながる。この提携では、消費電力を3分の1に、コントラストを無限大に、1インチ以下の究極の薄さ・軽さを実現した究極のプラズマテレビの実現を目指す。発光効率の改善によって、42インチのサイズで、かつての27インチのブラウン管テレビと同程度となる150Wの低消費電力を実現するほか、現在の42インチ程度の消費電力で、100インチを超えるプラズマテレビも実現できるようになる。また、将来的には液晶パネルの技術進化にも、成果が波及することになるだろう」(松下電器 森田研常務役員)という。

なお、パイオニアが持つプラズマパネルに関する特許はそのままパイオニアが保持。今後、開発した技術に関しては、両社で検討するという。

また、松下電器とパイオニアでは、プラズマテレビに、同じパネルモジュールを利用し、松下電器はVIERAとして、パイオニアはKUROとして、それぞれ製品化することになるが、「最終的なテレビとしての商品化の段階では、映像処理回路の違いなどから、それぞれが追求する画づくりで差別化が図れる」(松下電器 森田研常務役員)とする一方、パイオニアでも、「究極の黒を目指す姿勢は変わらない。この部分では松下電器と差別化を図ることができる。また、音響メーカーとしての高音質の追求、デザインでも差別化は可能である。プラズマテレビをAV機器の中核製品とし、ホームエレクトロニクス製品のブランドとして継続していく」(パイオニア 小谷常務執行役員)とした。

パイオニアでは、すでに開発済みのプラズマテレビを5月に北米で、6月に欧州で、10月には日本市場向けに投入する予定で、「これが自社生産パネルとしては最後となる」(パイオニア 小谷常務執行役員)とする一方、来年秋に発売する予定の松下電器から調達したパネルによる新製品も、これまでの高機能路線を維持していく考えを示した。

「KUROの価格は、競合メーカーのハイエンド製品の、さらにその上の価格設定となっていたが、松下電器との協業で、各社のハイエンドの範囲の価格で勝負できるようになる」(パイオニア 小谷常務執行役員)という。

生産および供給するサイズは、パイオニアが現在事業展開しているインチサイズを視野に入れるとしており、「パネルサイズは顧客ニーズを考えていく必要があるが、大きくは40インチを境に上はプラズマに、下は液晶と考えている。プラズマは42インチ以上の品揃えとなるが、液晶でも40インチ、46インチを取り扱うことも考えていく」(パイオニア 小谷常務執行役員)とした。

同社のプラズマテレビの出荷規模は、年間50万台弱となっているが、「今後も、最低限でもこの規模の台数をやりたい」(パイオニア 小谷常務執行役員)としている。