「全廃は無理」、値下げ幅が大きい議案を選択

目下最大の話題は、果たして漫遊費の値下げが実現するのか、ということだ。前述のとおり、公聴会会場では全廃を求めた消費者代表や地域代表がいたものの、議案に対しては「二者択一」をせざるをえなかったため、消費者代表や地域代表の大半は、値下げ幅がより大きな「議案2」を選んだ。

だが、中国消費者協会のネット調査において97.6%もの消費者が2つの議案ともに反対している理由は、値下げ幅が小さいからである。要するに、消費者側にしてみれば、全廃という「最善の策」が現実では不可能で断念せざるをえないにしても、値下げ幅がより大きな「次善の策」を強く求めていくしかないわけだ。

漫遊費の値下げについては、あからさまに反対するキャリア代表は1人もいなかったが、難色を示す代表は多かった。中国移動代表の陸文昌氏は、「漫遊費にはコストがかかっているため、値下げすれば、当社の売上げと利益にある程度影響が出てくる。当社は引き続き漫遊服務(ローミングサービス)の質を向上させ、新たな通信料金体系の早期実現に向け積極的に協力していく」と、一応は前向きな姿勢を示した。

一方、中国聯通代表の丁銘氏は、漫遊費を徐々に廃止すべきだと主張。同氏は、中国聯通のバランスシートにおける負債率が高いため、議案は受け入れられないとした上で、「漫遊費の大幅な値下げはキャリア間の競争バランスを破壊させ、長期的に消費者の利益を損ないかねない」との懸念を表明した。その上で丁氏は、漫遊費の値下げを行うならば、通信産業全体の構造改革と結びつけて行うべきだと強調した。

さらに、中国電信(チャイナテレコム)、中国網通(チャイナネットコム)、中国鉄通など固定電話キャリアの代表は、漫遊費を含む通信料金の調整は漸進的に行わなければならないところで一致している。というのも、漫遊費の値下げが携帯電話による固定電話の代替を一層加速させ、固定電話キャリアがより厳しい立場に立たされるのではないかという共通の危機感を抱いているからだ。

中国移動以外は、漫遊費の大幅値下げに反対

総じて言えば、携帯最大手の中国移動以外のキャリアは、漫遊費の引き下げによる競争環境の流動化や業界再編を恐れているため、漫遊費を漸次小幅に調整していくか、願わくは現状維持を望んでいる。

しかし、消費者が望んでいるのはこれと正反対だ。網易のネット調査で「どのような方法で携帯電話通話料金を引き下げてほしいか」という問いに対して、最も多くの消費者(41.6%)が「携帯業界にさらに多くの競合他社を参入させ、ユーザーにより多くの選択肢を与えるべき」と答えている。競争激化を危惧するキャリアと、反対にそれを求める消費者との間の深い溝は、簡単に埋められそうもない。

結局公聴会では、消費者代表、地域代表、専門家代表、キャリア代表、政府代表の立場の相違があまりに大きかったため、なんら合意事項をまとめられないまま閉幕した。関係省庁は公聴会で出された意見を取り入れ、「早いうちに再度漫遊費値下げの議案を提出する」と約束し、大騒動となった第一幕をなんとか収めたのだった。