漫遊費値下げでも大手キャリアに対する影響は限定的
中国証券大手の国泰君安証券(以下、国泰君安)と世界大手の証券会社UBSの中国法人である瑞銀集団は、公聴会の開催が発表されたことを受け、今年1月上旬、漫遊費の値下げがキャリアに与える影響をそれぞれ試算した。
まず国泰君安は、現行の漫遊費が非常に不合理な水準にあるとした上で、EU、日本などの海外キャリアの国際ローミング料金を参考にしつつ、漫遊費は0.32~0.40元/分に設定されるべきだと発表した。国泰君安の主張通り漫遊費を現行水準から0.32元/分にまで下げると、中国移動の売上げは1.7%減、純利益は5.2%減となる、との試算結果が得られた。
また、漫遊費を同じ水準に引き下げた場合、中国聯通の売上げは1.4%減、純利益は14.5%減となることが分かった。漫遊費の水準をこれから少し上げて0.40元/分として試算すると、中国移動に対する影響はほとんどないが、中国聯通の場合は、売上げが0.45%減、純利益が4.8%減少することが明らかとなった。
公聴会議案がキャリア寄りであることが判明
このような結果をみれば、漫遊費をEUなどの国際ローミング費と同水準に下げても、中国移動や中国聯通など大手キャリアに与える影響は極めて限定的であるといえる。なお、国泰君安が試算に用いた漫遊費の額が、前述の2議案で提案された上限基準のどちらと比較しても低いことに留意すれば、議案は元々キャリア寄りの立場で提起された、と言うこともできるわけである。
一方、瑞銀集団によれば、漫遊費は中国移動、中国聯通の売上総額の6%~7%を占めている。だが、漫遊費を値下げしても、逆に回線使用量とユーザー数が増加するので、漫遊費値下げによる損失分をほぼ完全に埋めることができ、経営に対する影響は微々たるものだという。ちなみに平安証券なども、国泰君安や瑞銀集団と同じ見方を示している。
これらの試算や評価を踏まえて考えてみれば、漫遊費の値下げを渋るキャリアは、漫遊費を収入源の一つとして温存しつつ、消費者が望むような競争激化は、なんとか回避しようとしていると言えるだろう。