各界で高まるディスクロージャーを求める声
実はこれまで、漫遊費のコストが公表されたことはなく、神秘のベールに包まれたままだ。高すぎる携帯電話通話料金の元凶とされているだけに、漫遊費のコストのディスクロージャーを求める声は日増しに強くなってきている。今回の公聴会開催を機に、コスト公開を求める声が再び噴出している。
公聴会で消費者代表として意見を述べた前出の黎氏は、「公聴会が行われても、消費者にとっては情報が不十分。漫遊費のコストを全国民にディスクロージャーすべき」と主張している。上海市代表で弁護士の江憲氏は、「電信条例の規定によれば、携帯電話の通話料金はコスト原則に従って決められることになっている。値下げでも値上げでも、ユーザーには知る権利があり、コストは公開されなければならない。キャリアから提供されている各種のセットプランをみれば、値下げの余地はまだある」としている。
さらに、北京市消費者協会 副秘書長の屈建輝氏は、「公聴会の両議案とも、漫遊費のコストという非常に重要な問題を避けている。正しいコスト情報がなければ、仮に上限基準が決められても、それが合理的な水準にあるかどうかを知る由もない。消費者には知る権利があり、なによりもまず、漫遊費のコストを公表しなければならない。ある専門家によれば漫遊費のコストは限りなくゼロに近いという。とにかく、独立した専門機関による調査、審査を経て公開すべきだ」と述べている。
コスト計算の難しさを指摘する声も
また、国家発改委 価格司副司長の許崑林氏は、「国家発改委は2007年10月から会計事務所に漫遊費のコストの洗い出しを委託しているが、キャリア各社とも、漫遊費に関する独立した会計システムがないため、(漫遊費のコスト精査が)難航している」と説明している。
信息産業部 清算司の責任者も、「世界的にみても、ローミングコストの精査は一つの難題だ。技術の進歩、サービスエリアの拡大に伴い、割当てコストも削減されてきている。EU加盟国の国際ローミング費用に対する規制などが良い例だ」と、漫遊費のコスト削減の可能性を示唆している。
公聴会の専門家代表で北京郵電大学教授の曾剣秋氏も、「ローミングには必ずコストが発生するが、正確なコスト計算は難しい。携帯最大手の中国移動(チャイナモバイル)や、同じく携帯大手の中国聯通(チャイナユニコム)の漫遊費を計算するとすれば、ネットワーク容量とユーザー数の変化に伴い常に変動しているため、正しいデータはなかなか取れないのではないか」と、漫遊費のコスト計算の難しさを指摘している。
このように、官庁や専門家の発言からみると、消費者などが要求している漫遊費コストに関する情報公開は必ずしも否定されてはいないが、かといって公開に向けての取り組みに関する約束もされていないのが現状である。技術上の難点などが強調されている状況からみれば、完全公開までにはまだ一定の時間がかかると考えられよう。