KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は18日、9月の社長会見を開催し、前日に総務省研究会がとりまとめた携帯電話業界に対する提言や、同じく前日に同社らが事業企画会社の設立を発表したモバイルWiMAX事業などについてコメントした。

奨励金がなくなればショップ網を維持できない

KDDI代表取締役社長兼会長 小野寺正氏

総務省の「モバイルビジネス研究会」が取りまとめた報告書の中では、「端末0円」を実現した代わりに月額料金の高止まりの原因とされている、販売店への販売奨励金の見直しが求められた。

これに対して小野寺氏は「奨励金をなくせばあたかも料金が値下げできるような話の流れがあるように見受けられるが、そう簡単なことではない」と、以前からの主張を展開。仮に奨励金がなくなった場合、同社自体にとっては良くも悪くもないとの認識だが、「販売店や端末メーカーにとっては死活問題になる」(小野寺氏)。「今奨励金の総額が減れば販売店はショップ網を維持できなくなり、店舗数を減らすだろう。販売店の数が妥当かどうかには議論があるが、エリア展開ということで考えると、妥当か、もう少し多くても良いと考えている。端末が故障したとき、いまはショップに持ち込んで修理の間は代替機をご提供できるが、これが郵送での対応になると1週間携帯電話が使えないなんてことになる。お客様から見て不便のない数の販売店がないと不満を惹起することになり、お客様満足度を下げることにつながる。(KDDIは)こういうことは絶対にしない」(同)とし、奨励金がなくてもショップ網を維持する仕組みなど、さまざまな課題を解決してからでないと業界構造は変わらないとの考えだ。

また、国際的に見た場合日本の端末メーカーは競争力がないとされる点については「こんなことを申し上げていいか分からないが」と前置きしながらも、「海外のメーカーは基本的に"規模"でやっていらっしゃるが、携帯電話に限らずすべての製造業にはマスマーケットとニッチマーケットがあり、いろんな形があってしかるべきじゃないかと思う」と話し、日本のメーカーは必ずしもNokiaやMotorolaのような企業を目指す必要はないとの見解を示した。

モバイルWiMAXは携帯電話事業とは「全く違うサービス」と強調

既存携帯電話事業者の出資は3分の1以下という総務省の免許方針に沿いながらも、いよいよKDDIとしての参入が具体化したモバイルWiMAX事業。移動体によるデータ通信という点では同社の主力事業であるau携帯電話サービスと一部重複するのではないかとの見方もあるが、小野寺氏は「携帯電話の世界とは全く違うサービスを展開できるのではないかと期待している」と話し、あくまで両者は競合でない補完的関係であり、モバイルWiMAXはMVNOへの回線提供を前提とし事業の構造自体も異なるなど、完全に別物であることを強調した。

モバイルWiMAXという技術を選択したことについては、同社がWiMAXフォーラムで幹事会員として標準の策定作業などを行ってきた経緯を挙げ「(KDDIは)人とお金を費やし、汗をかいてきた」と、同技術へのこれまでの貢献をアピール。また、2.5GHz帯の事業免許取得ではライバルとなる次世代PHS技術に対しては「WiMAXも次世代PHSも国際的に標準化されている技術で、標準ということではどちらを使ってもいいのだろう。ただし、WiMAXはチップセットベンダーであるIntelがこれだけ強く推進しようとしている。かつてWi-Fiもそれほどは普及していなかったが、ある時点に来たらほとんどのラップトップPCに入ってきた」「当初からアメリカでも使えるし、周波数の問題はあるが、いずれヨーロッパそのほかの国々でも使えるようになるだろう。最近では海外から当社に対し、通信事業者だけでなく官庁からもWiMAXについての情報を求めて訪問が増えている」と話し、無線ブロードバンドのメイン用途となるPCへの組み込みではモバイルWiMAXが本命で、海外ローミングの点でもやはり最も有利であるとの認識を示した。

一方、「WIN」シリーズ携帯電話で使われている「CDMA2000 1xEV-DO」方式の高度化方式である同「Rev.A」については、「秋冬モデルの端末で対応は本格化する予定だが、ローエンド向けのチップセットがまだ供給されていないこともあり、この時点ではまだハイエンド機種中心。将来的にはWINが全部Rev.A対応になるだろう」と見通しを話す。

その後継技術としては、Rev.Aの倍程度から下り最大数十Mbpsまで拡張できるとされる同「Rev.B」や、次世代の高速無線通信技術「UMB(Ultra Mobile Broadband)」がある。これらは米QUALCOMMが中心となって開発を行い、KDDIでも技術的検討は行っているが、小野寺氏は「正直、携帯電話の形で本当に必要とそれるスピードはどこまでか。ある程度の速度まで上がってくると、端末の処理能力のほうが問題となってくるので、どこまで高速化できるかはそれにもよる。PCを想定したモバイルWiMAXではこういう問題はないが、携帯電話は消費電力も限られるので簡単には処理能力を上げられない」「高速化技術を導入すれば、確かにビットあたりの単価は安くなるが、設備投資の総額は増える。どちらがいいのかはよく考える必要があり、現時点では何に投資するかはまだ決められない」と述べ、将来どんな技術を採用するかについては慎重な姿勢だった。

また、PC向けデータ通信ではNTTドコモが10月より定額料金プランを提供すると発表したが、小野寺氏は同社でも引き続き検討はしているとしながらも「何らかの制限」がないと実現は難しいとし、導入するとしてもドコモ同様に一部の通信を制限することになる見通し。料金についても「料金競争をするつもりはない」とし、ドコモより安くすることにこだわりはしないとの構えを見せていた。