味の素ヘルシーサプライ株式会社は、「階段掃除は上から」を合言葉に、役員会の変革に始まる組織改善に力を注いでいる。そのプロセスにおいて重要なプラットフォームとなっているのが、TISが提供する“自律型人材の育成を実現させる”対話実践アプリ「Practice」だ。同社はこのアプリを使って、どのように役員間で深い理解と信頼に基づく対話を実現していったのだろうか。味の素ヘルシーサプライ 代表取締役社長 甲谷 真人氏に、Practice導入に至る背景とその効果について詳しく伺った。

  • (写真)甲谷氏

    味の素ヘルシーサプライ株式会社 代表取締役 甲谷 真人氏

組織改革へのもどかしさと、経営者としての自分に対する気づき

「アミノ酸」にまつわる原材料・製品を販売する味の素グループの一員、味の素ヘルシーサプライ株式会社。その領域は、食向けアミノ酸はもちろんのこと、医薬用アミノ酸や医薬用培地、アミノ酸系化粧品素材、敏感肌のためのアミノ酸化粧品、家畜用の飼料・植物向け肥料まで多岐にわたる。

味の素株式会社をはじめグループ会社での勤務を経て、2019年同社の代表取締役社長に就任したのが甲谷氏だ。当時の味の素ヘルシーサプライは「『良い会社』になる」というスローガンを掲げ、人事制度の見直しやコンプライアンス強化など、組織風土の改善に努めている最中だった。 味の素への入社以降、営業や冷凍食品のマーケティング、人事、スポーツサプリメント事業部などを担当してきた甲谷氏にとって、味の素ヘルシーサプライは「可能性の山」に見えたという。

「味の素の内側にいると『外部組織とタッグを組んで既存商品に価値を付加する』といったことはなかなかできないものです。しかし、味の素ヘルシーサプライは顧客との接点が多く、商社機能も持っています。単に味の素の製品を右から左に販売するだけではなく、顧客のニーズに対応してパートナー企業の製品・サービスと自社製品を組み合わせて新たな価値を生み出すこともできる。可能性に満ちていると感じました」(甲谷氏)

しかし、そういった思いとは裏腹に、当時は組織間の壁が厚く、付加価値を生み出す新しい提案が飛び交うようなことはまれだったと、甲谷氏は続ける。

「役員会議にしても、全員の知恵が結集するような場ではありませんでした。もったいないと思い、いろいろ発信もしたのですが、なかなかうまくいきません。そんな時期に、経営者向けの研修を受ける中で、そもそも『トップダウン型でいいのか?』という根本的な疑問を持ち始めたのです。自分の器を拡げなければ、組織も成長しないという危機感がありました」(甲谷氏)

「致命的な失敗を防ぎ 卓越した成果を生む」というコピーのもと、2021年に邦訳された世界的ベストセラー『多様性の科学』では、画一的集団の弱点が説かれている。最高の人材を誇っていたはずのCIAが、実は白人系に偏った組織構成により9.11テロの兆候を見過ごしてしまったこと。1996年のエベレスト大量遭難では、リーダーは超一流だったものの、隊員の意見を聞こうとしなかったこと。

「"昭和のおじさん"な僕は、つい強いリーダーであろうとしてしまいます。でも、こうした大変な事例を知ることによって、このままじゃいけないと考えたのです」(甲谷氏)

リフレクションとの出会いと、組織内対話実践アプリ“Practice”導入

自分と組織の新たなあり方を探求していた甲谷氏は、一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事 熊平 美香氏の本、『リフレクション』と出会った。リフレクションとは、自己を客観的かつ批判的に振り返る行為であり、ものごとに対して、流されるだけでなく新たな視点を加えることが可能となる。

「この技術は、是が非でも取り込みたいと思い、すぐさま講座に申し込みました。熊平さんは何気ない対話から、"自分の知らない自分"を引き出してくれる達人なんです。無意識に自分が握りしめていることや、凝り固まっていた呪縛を解きほぐしてくれました。それは本当に日本刀で突き刺されたような感覚で、とても痛快で、そして爽快でした」(甲谷氏)

熊平氏との対話の中で、ふと、問われる。「甲谷さんは、『徹底して』とか『やりこむ』とか、そういうワードが多いけど、その裏には何があるの? 」。言われて内面をじっくりと掘り下げると、小さい頃、仕事中の父の書斎に入ってめちゃくちゃに怒られた経験がそこにあった。いつもニコニコしていた父の、とてつもない真剣な姿。だからこそ、自分も徹底的にやらなくてはならない……そんな自分の無意識に気づくことで、また別の自分を獲得する余裕が生まれた。

同社ではもともと、自分の強みを見える化する“才能診断ツール”「ストレングスファインダー」を導入している。甲谷氏は、この仕組みとリフレクションのメソッドを組み合わせることで、さらなる相乗効果が生まれるに違いないと考え、TISの組織内対話実践アプリ“Practice”の導入を決めた。

Practiceは、組織内のリフレクションと対話を促すことで、互いに学び合い高め合うことを目的とした、TISが熊平美香氏と共同開発したアプリだ。「信頼を感じたことはなんですか? 」「嫌悪感を感じたことはなんですか? 」「成功体験を教えてください」などといったさまざまな問いがアプリから投げかけられる。その回答に、価値観としてのキーワードと、感情の色を添えて投稿する。オープンな投稿は他メンバーも閲覧でき、フィードバックやコメントを送ることができる。

2023年7月から、同社は役員8名でPracticeの利用をスタートした。週に一回はリフレクション投稿をするように取り決めて、フィードバックをする人を指定する。「今週使ったあなたの強み・資質は? 」といった、ストレングスファインダーの視点を深掘りするように、独自のカスタマイズも施した。

  • (写真)インタビューに答える甲谷氏

Practiceによって、役員同士の「関係性の質」が高まる

「相手の人生を垣間見る瞬間が多く、非常に面白いです」と甲谷氏はPracticeを利用する日々について次のように語る。

「熊平さんに『リフレクションは人を幸せにする』と言われていたのですが、Practiceの導入によって、確かにその通りだと実感しました。関係性の質が上がるんです。相手のことを理解するのに、とても良いツールだと思います」(甲谷氏)

Practiceは意見・経験・感情・価値観というメタ認知力を高める「認知の四点セット」をフレームワークにして設計されている。 自分に対して否定的な意見を聞いたとき、相手に反発を覚えることはよくあることだ。しかし、その意見の裏側には、どんな感情が秘められているのだろうか? どんな価値観にもとづいているのか? どのような過去の経験がその価値観を築いたのだろうか? Practiceを通じて、ただの意見で終わるのではなく、その深奥まで開示し合うことで、より質の高い対話が可能となる。

「役員会の雰囲気はずいぶん変わり、『社長の顔色をうかがう』というようなことは無くなりました。僕自身はぐいぐいと進んでいくタイプですが、ブレーキをかけるタイプもいます。今では、それは責任感がとても強いからだとわかっています。だからこそ、安心して議論をすることができるのです。お互いがお互いを活かしやすくなりました。もちろん、いろいろな取り組みをおこなった成果ですが、Practiceは一つの重要なプラットフォームでした」(甲谷氏)

  • (キャプチャ)甲谷氏のリフレクション

    実際に甲谷氏が投稿したリフレクション

  • (キャプチャ)甲谷氏のリフレクションに対するフィートバック①
  • (キャプチャ)甲谷氏のリフレクションに対するフィートバック①
  • (キャプチャ)甲谷氏のリフレクションに対するフィートバック①

    甲谷氏のリフレクションに対する、役員メンバーからのフィードバック ──こうしたリフレクションと対話が、個人と組織の成長につながる。

対話によって、組織に多様性の力を身につけていく

「階段掃除は上からだよね」が、同社の役員間での口癖となった。組織の風土を変えていくためには、まずは経営層が変わらなければならない。Practiceや熊平氏のセッションを通じて、一人一人がリフレクションを身につけ、そして、より深い対話を成し遂げていく。

今後は、こういった取り組みを従業員にも浸透させていく構想だ。

「部署別ではなく、挙手性にしようと思います。当社の各部署は専門性が高く、医薬品のチームと化粧品のチームはほとんど会話をしません。それを乗り越える一つの策として、Practiceを通じた対話の促進があると思っています。リフレクションという自己開示によって、組織間の対話が深まり、新たな価値を生み出していく。そんな企業にした上で、次代に手渡していきたいと思います」(甲谷氏)

MITのダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」では、お互いに尊重できるという「関係性の質」が一番目にやってくる。ともに考えるからこそ「思考の質」が向上し、「行動の質」が向上し、最終的な成果につながる。Practiceは、味の素ヘルシーサプライをそんな成功循環モデルへと導く助けとなっていくだろう。

最後に、甲谷氏は笑いながら付け加えた。

「ちなみに、リフレクションによって奥さんとの関係もだいぶ良好になりました」(甲谷氏)

  • (キャプチャ)甲谷氏のリフレクション②

    時には、こんなリフレクションも。

組織対話実践アプリケーション「Practice」
https://www.tis.jp/service_solution/practice/

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