ここまで、個人情報保護法に違反した場合のリスクや実際の判例などについてお話してきました。もしかすると、個人情報を取得することについて及び腰になってしまった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、このデジタル時代において、顧客のデータ活用したマーケティングは、企業の成長戦略の鍵となります。激化する企業競争のなかで勝ち抜くために、避けては通れない道であるといえるでしょう。
言い方を変えれば、プライバシー保護法やCookie規制を遵守しさえすれば、顧客データを活用して顧客とより強い信頼関係を結び、より効果的なマーケティングを実現することが可能となります。本記事では、これまでの内容を振り返りつつ、リスクなく、顧客に寄り添うためのポイントをご紹介します。
これは絶対守るべし!顧客データ収集で重要なポイントとは?
1. 同意の取得
顧客データを収集することそのものは、決して禁止されていることではありません。ただ、取得にあたっては必ずユーザーから明確な同意を得ましょう。具体的な対応策としては、サイトにCookieバナーを設置し、ポップアップで利用目的を説明するなど、誰にも分かりやすい仕組みを導入することです。
しかし、同意が必要だからと言って、例えば「同意」ボタンしかないCookieバナーを設定するような行為は、ユーザーが意図しない決定にわざと誘導する「ダークパターン」に該当する可能性があります。ダークパターンへの規制は世界中で強化され、日本においても令和3年特定商取引法・預託法の改正において明確に禁止されるようになりました。あくまで消費者が選べる状態であることが大切です。
2. データの透明性
ユーザーから同意を得る際は、収集したデータの使い道や保存期間についての情報を、理解しやすい形で提示しましょう。最新のプライバシーポリシーで透明性を確保することで、法的リスクを避けられるだけでなく、企業としての姿勢を示すことにもなり、信頼性を高めることにもつながります。明示する項目としては、下記が網羅できるとよいでしょう。
3. 各国・地域の法規制対応
個人情報を取り巻く法律はさまざま。グローバル市場への進出も当たり前になった今、日本の個人情報保護法や電気通信事業法はもちろん、欧州のGDPR、カリフォルニア州のCCPAなど、国や地域ごとの規制に準拠することが不可欠です。これらは非常に幅広く、また頻繁に法改正がなされるため、ここでの紹介は避けますが、信頼できるマーケティングパートナーや法律の専門家の力を借りて、タイムリーかつ柔軟に対応していくことが求められます。
4. Cookie管理
2023年施行の改正電気通信事業法では、外部送信規律が新設されました。サードパーティーCookieを送信する際、利用者の同意取得や情報の明示が求められるようになりました。また、2022年施行の改正個人情報保護法では、Cookieも含む「個人関連情報」を第三者へ提供する際は、本人の同意取得が義務付けられています。これらCookie規制の対象になっているのは、主にサードパーティCookieであるというのがご理解いただけると思います。
自社で集めたファーストパーティCookieと異なり、ユーザーが訪問したサイト以外のドメインから発行されるサードパーティCookieは、知らず知らずのうちに第三者に行動履歴や個人情報を取得されてしまうリスクがあることから、近年規制の動きが強まっています。
法律以外の規制にも要注意
注視すべきは法律だけではありません。Cookie情報を保有する仕組みをもつ、ブラウザを提供する企業各社も、それぞれでCookie規制を進めています。
いまもっとも厳しい規制をしているのが、Apple社のSafariでしょう。Safariでは、2022年を契機に、サードパーティCookieは完全ブロックされるようになりました。また、Microsoft Edgeや Firefoxでも、ユーザーの閲覧履歴などを記録するトラッカーを規制しています。
Google社のChromeは、かねてより「サードパーティCookieを廃止する」という発表をしていましたが、2024年7月にそれを撤回。しかし、個人情報を取り巻く世間の目は徐々に厳しくなっていますから、この姿勢がいつ変わってもおかしくないというのが、全世界のマーケターの見立てです。
いかにしてファーストパーティデータを獲得するか
ここまで読んだ方はお察しの通り、サードパーティCookieへの規制が強化されている現在、サードパーティCookieに依存したマーケティングは避けるべきであるというのが、現在のセオリーです。
一方、自社でファーストパーティデータを獲得するのであれば、きちんと同意を取得しさえすれば、これらのリスクは低いといえます。もちろん、情報を扱うセキュリティ対策の強化や、定期的な監査といった、企業として当たり前に取り組むべきことは決しておろそかにすることはできません。ですが、前述したような抑えるべきポイントさえ抑えられれば、決して恐れることなく顧客データ活用に踏み切ってよいのです。
自社でファーストパーティデータを収集できる方法がないという企業もいらっしゃることでしょう。そうした場合は、顧客マーケティングのプロフェッショナルに、まず相談してみることをお勧めします。
企業各社が、きちんと法的リスクを回避し、消費者にやさしいマーケティング活動に踏み出してくれることを、心から願ってやみません。
監修
グローウィル国際法律事務所 代表弁護士 中野秀俊

元IT企業経営者という経験を活かし、IT・インターネット企業を法律面で支える弁護士として活躍。これまでの相談件数は1,000件以上を超える。著書に「ここをチェック! ネットビジネスで必ずモメる法律問題」など。URL:https://growwill-law.com/
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