AIを真のパートナーとして、顧客の「熱量」をリアルタイムに捉えたコミュニケーションをしていく――。そんな次世代のマーケティングが現実のものとなりつつある。AIデータクラウドのSnowflakeと、顧客データ活用のTealium。両社のキーパーソンにデータマーケティングの最新戦略を聞いた。
インタビュイー
(左)Tealium Inc.
グローバル・パートナーシップ&アライアンス担当シニア・バイスプレジデント
Matthew Gray氏
パートナー企業と協業しながら、世界の企業がAIとクラウドを活用し、リアルタイムかつプライバシー重視の顧客データ活用を実現することを支援している。
(右)Snowflake Inc.
インダストリープリンシパル(マーケティングテクノロジー担当)
Patrick Crosby氏
マーケティングテクノロジー担当としてSnowflake AI Data Cloudを活用し、企業がAI駆動型のマーケティングを実現できるよう支援している。
AI時代に必要なマーケティング戦略とは?
──本日はよろしくお願いいたします。まず初めに、SnowflakeとTealium、それぞれがマーケティングエコシステムで担う役割について教えていただけますか?
Crosby氏:Snowflakeは、世界で11,000社を超えるお客様が利用しているAIデータクラウドプラットフォームです。「使いやすさ」「連携性」「信頼性」に優れていることから、データ基盤として世界中の企業に選ばれています。マーケターの視点からSnowflakeを見ると、顧客データを一元化しつつ、他のエンタープライズデータと連携させて利用することが可能となります。
Gray氏:Tealiumは、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)によって、あらゆるタッチポイントから顧客データを収集・統合・活用する、顧客データオーケストレーションのグローバルリーダーです。私たちは、マーケティングエコシステムの中で、生の顧客データと意味のあるエンゲージメントの「橋渡し役」を担っています。収集したデータは、同意取得済みのクリーンな状態で、マーケティングアクションにリアルタイムで活用できます。
──続いて、現在のマーケティングを取り巻く環境についてお伺いします。お二人は最新のトレンドをどのようにとらえていますか?
Crosby氏: Snowflakeが昨年発行したレポートでも触れていますが、大きなトレンドは3つあると考えています。すなわち「生成AI」「プライバシーと規制」「データグラビティ(引力)」です。
最近はAIエージェントの導入が目に付くようになりましたし、データの世界では、新たなデータ管理や測定・クレンジングにも生成AIが用いられるようになってきています。また、「プライバシーと規制」は、世界各地で継続的に注目されていますね。そして、集積したデータの近くにアプリやサービスが引き寄せられる「データグラビティ」については、この傾向が加速しています。バラバラにサイロ化された状態ではなく、規模感のあるデータを一元化し、その近くにマーケターが利用可能なアプリを置くこと。このテーマこそ、Snowflakeが支援できる領域です。
Gray氏: Crosbyさんが説明した3つのトレンドに基づき、マーケターは従来の考え方を進化させていかねばなりません。
AIがコンテンツ作成だけでなく、リアルタイムな意思決定にも用いられるようになっていますが、AIが正しい判断を下すためには 、クリーンで高品質なデータが不可欠です。この際、プライバシーへの対応は競合との差別化要因になるでしょう。とくに日本では、ユーザーの同意取得や透明性の確保は必須だと考えています。
データがSnowflakeのようなクラウドプラットフォームに集約されるようになった今、私たちTealiumは、「プライバシー対応」と「リアルタイムアクティベーション」の2つの軸を両立できる環境が必要だと、世界中のマーケターに訴えています。
「顧客のいま」と「企業の全データ」を繋ぐ
──変化の激しい時代を生き抜くためのソリューションとして、TealiumとSnowflakeは、どのようなデータフローで連携されているのでしょうか?
Gray氏:まずTealiumが、Webサイトやスマホアプリ、実店舗など、あらゆるチャネルから顧客データを収集し、クレンジングします。具体的には、お客様から同意を得たデータを取得し、そこから重複を排除するなどの標準化をおこなったものです。また、データ利用を拒否したにも関わらず、その意思が反映されていなければ、自社の評判を大きく損ねることに繋がりかねません。そういった意味で、常に最新のデータであることも重要です。
そして、Snowflakeの「Snowpipe Streaming」という機能を通じて、クリーンなデータをリアルタイムでSnowflake環境にストリーミングします。すべてのデータが存在するSnowflakeを通じて、マーケターはスピーディーにデータを活用することが可能になります。
Crosby氏:Snowflakeは、企業におけるデータの「背骨」のような存在です。顧客データだけでなく、在庫データや財務データといった企業のあらゆるデータが存在する「唯一の信頼できる情報源(SSOT:Single Source of Truth)」となるからです。Tealiumからリアルタイムで送られてくるクリーンな顧客データと、これらのエンタープライズデータを組み合わせてエンリッチ化することで、これまで得られなかった深い洞察を得ることができます。
──この連携がもたらすメリットは大きいですね。
Crosby氏:この連携により、マーケティングチームは、Tealiumから送られてくるクリーンで同意の取れたリアルタイムな顧客データを、Snowflake上にある他のデータと組み合わせて活用できるようになります。
小売業の場合で具体的に考えてみましょう。「たった今、あるお客様が特定のスニーカーに興味を示した」という情報がTealiumから得られたとします。さらにSnowflake内を探せば、「そのスニーカーの在庫がある近隣店舗」を即座に把握することができます。そこまで分かれば、そのお客様にとって最適なアプローチを仕掛けることは容易でしょう。
両者の連携はさらに、データチームにとっても価値を提供します。多くの企業では、データチームがSnowflakeを活用して、「ロイヤルカスタマー」「解約の兆候」といった顧客モデルを構築していますが、Tealiumから常にクリーンで最新のデータが供給されることで、これらのモデルの精度を高めることができます。
つまり、Snowflake+Tealiumは、その企業に「モダンデータスタック(顧客データ中心の先進的なマーケティング基盤)」をもたらすことができるのです。
コンバージョン率54%向上。成功の共通項は「リアルタイム性」
──非常にパワフルな連携ですね。実際にSnowflake+Tealiumを導入されている企業のユースケースについて、具体的な事例を教えていただけますか?
Gray氏:3つの事例をご紹介しましょう。まずは金融大手のLegal & General社です。同社は、Snowflakeで顧客のライフタイムデータを統一しつつ、リアルタイムの行動 はTealiumで検知することで、真の「360度カスタマービュー」を実現しました。顧客の行動から購入意欲の高まりをリアルタイムに検知して、パーソナライズされた情報を提供することにより、コンプライアンスを担保しながら、コンバージョン率を54%も向上させたのです。
2つ目は、通信企業のSpark New Zealand社です。Snowflake上のネットワーク利用状況や課金データと、Tealiumのリアルタイム顧客行動を統合することで、データウェアハウスにデータを取り込む速度が90%以上改善し、マーケティングチームは20%もスピーディーに新しいキャンペーンを立案できるようになりました。カスタマーエンゲージメントやコンバージョン率においても大幅な改善が見られています。
3つ目は自動車企業の事例です。Tealium+Snowflake上で顧客のリアルタイムジャーニーを分析し、ディーラーの販売活動に活かした結果、6ヶ月間の販売台数が15%も向上しました。
Crosby氏:たった今、Grayさんが紹介した事例は、いろいろな業界にまたがっていましたが、共通項があります。それは、「リアルタイム性」と「強固なデータ基盤」です。
ある行動をした顧客に対し、その事実を即座に反映して次のオファーを提示できれば、顧客体験は劇的に向上します。逆に、コンバージョンしたにも関わらず広告が配信され続けているなら、それは広告費をムダにしているばかりでなく、信頼を損ねています。タイムリーなコミュニケーションは、機会損失を防ぎ、顧客との信頼を醸成する上で極めて重要なのです。
日本企業の「おもてなし」をデジタルへ―顧客の「熱量」を捉えるデータソリューション
──海外の先進事例をご紹介いただきましたが、Snowflake+Tealiumは、日本市場にもマッチするでしょうか?
Crosby氏:日本企業は非常に洗練されており、強固なガバナンスを期待しています。一方で、データの分断やシステムのサイロ化に悩まされており、顧客からの期待に素早く応えられていないという課題も抱えています。私たちの連携により、セキュリティガバナンスを担保しながら、データのサイロ化を払拭することができます。
Gray氏: Crosbyさんが言う通り、日本の市場には顕著な特徴があります。日本の消費者は、データの透明性や同意取得、そして企業による適切なデータ管理に高い期待を寄せています。それはすなわち、パーソナライゼーションの誤りが、顧客の信頼を大きく損なうおそれがあるということです。
Tealiumで同意を得たデータを収集し、Snowflakeを持つセキュアなデータ基盤を活用することは、既存環境を活かしたまま、オープンかつ連携性のあるモダンスタックの実現に繋がります。
Crosby氏:システムだけでなく、組織のサイロ化も解消すべきです。今後、マーケティングチームは、データチームや財務チームと密接に連携することが重要になってきます。Snowflake+Tealiumは、各部門が同じデータを活用できるようになるため、スムーズなコミュニケーションを促進できるでしょう。
Gray氏:私も強くそう思います。日本の企業においては、マーケティングとIT部門がまったく別の世界で働いている姿をよく目にします。私たちの連携は、そのギャップを埋めることができます。Snowflakeが「データグラビティ(引力) の中心」となり、Tealiumがリアルタイムのアクションを担うことで、両部門が共通のゴールに向かっていけると考えます。
──最後に、この連携における今後の展望と、データ活用によって実現する理想のマーケター像についてお聞かせください。
Crosby氏:未来は明らかに、AIネイティブでデータ中心の世界に移っていきます。TealiumとSnowflakeを組み合わせることで、マーケターは価値の高いデータを自らコントロールできるようになりますから、今後、新しいツール、新しい規制、新しいトレンドが登場しても、自信を持って対応できるようになるでしょう。つまり、Snowflake+Tealiumへの投資は、マーケティングを未来の変化から守る「フューチャー・プルーフ」にもなるのです。
Gray氏:AIは今後、単にレコメンデーションをするだけでなく、リアルタイムで行動を起こすエージェントになっていきます。この未来で成功するには、リアルタイムで精度を維持でき、プライバシーファーストの信頼できるデータ基盤が不可欠です。ここにSnowflake+Tealiumとして果たすべき役割があると思っています。
Tealiumは、今年の夏、「CloudStream」という新しい機能を発表しました。これは、Snowflakeのようなクラウド にデータを残したまま、リアルタイムのアクションを実行できるようにするものです。データのコピーや手作業での読み込みが不要になるため、従来は数週間かかっていたプロセスでも、数分に短縮されます。高度な分析基盤を用いながら、同時に、瞬時の顧客理解と施策実行が可能になるのです。この新しい機能に対する企業からの関心は高く、お客様からの引き合いも前四半期と比べて約65%の伸びを見せております。
日本企業の「おもてなし」は世界的に有名ですが、「デジタルの接客」となると、どうも自信を失っているように感じます。しかし私たちのソリューションならば、デジタルの世界における顧客の「熱量」まで見えるようになります。今後も、日本企業が自信を持ってイノベーションを進められるよう、より一層力を入れて支援していきたいと考えています。
[PR]提供:Tealium Japan

