保護者からの電話応対、生徒の出欠確認、配布物の管理。校務として明文化されにくいこれらの「名もなき校務」の対応に多大な勤務時間を割かなければいけないのが日本の教育現場の実態です。聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校では、そのような「名もなき校務」から教員の時間を解放するために、マイクロソフトのアプリケーション作成ツール Power Platform で校務を自動化するアプリを教員自らが作り上げ、校務を劇的に改善しました。この Power Platform は、プログラミングの知識なしに誰もがアプリを作成できる "市民開発者" という設計思想のもと、開発が進められています。同校の取り組みは、スキルに長けた担当者が一人で行うのでなく、現場の教員がみんなでデジタル化したという、理想の設計思想を体現した取り組みといえるでしょう。こうした動きは同校の生徒にも広がり、いまでは生徒が Power Platform によって社会問題を解決するアプリを作成するまでに。「校務 DX(デジタルトランスフォーメーション)」を果たした聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校が、探究学習のための時間を先生自らの手で生み出した取り組みに迫ります。
探究学習時間の確保には校務対応時間の軽減が不可欠
文部科学省が実施した『教育勤務実態調査』によれば、小中学校で働く教諭の平均勤務時間は毎日 11 時間以上。中学校では 6 割近くが“過労死ライン”と呼ばれる月 80 時間以上の残業をしていることが明らかになっています。
原因は 2020 年度からの学習指導要領改訂にともなう、学びの変化だけではありません。電話応対、出欠確認、各種申請書類の作成、保護者への配布物作成といった、あまり課題として挙がってこない学校事務作業(校務)の数々が、教員の重い負担となっているのです。
聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校 校長 湯澤 義文 氏は、多くの“名もなき校務” への対応負担がもたらしていた弊害を次のように振り返ります。
「探究的な学びを実現するためには、先生が生徒一人ひとりの興味関心に寄り添い、導かねばなりません。従来の教え方よりも、はるかに時間がかかるのです。本校が校務改善に着手する前は、稟議回覧や電話当番などの細かい校務に追われ、その時間を確保することが困難でした」(湯澤 氏)。
同校において校務の電子化を提案したのは、若手の教員でした。
「このままでは良くないということは、みんなわかっていました。若手教員からの課題提起がありました。大切な学校や生徒情報が安心安全に守られて運用できるのであれば、ICT を活用したより良い学校運営に取り組もうと考えたのです」(湯澤 氏)。
若手教員主導のもと、同校が劇的に効率化した校務のひとつは「申請作業」です。
手作りアプリで転記作業の自動化、申請作業の時間の 96% を削減
「毎日 2 時間かかっていた作業が、数分になりました」と、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校 教務部長 数学科教諭 宮本 昌浩 氏は笑顔で振り返ります。
「これまで、出張や有給休暇の申請書は紙で作って回覧していました。担当していたのは、書類を見ながら出張先・出張内容・日付などを複数のエクセルに入力する作業です。他の教職員に回覧する目的でしたが、競技大会のシーズンなどは数が多く、『授業以外の時間はずっとこの作業をしている』というほどの感覚でした。それが新たな自動化アプリのおかげで、数分で終わるようになったのです」(宮本 氏)。
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