昨今、インテリジェント・エッジと呼ばれる形でコネクテッド・デバイスが急速に増えつつある。このコネクテッド・デバイスは、最終的にはクラウドに繋がってシステムを構成する。このシステムのうち、NXP Semiconductors(以下、NXP)はネットワーク・コネクティビティとして5G基地局向けのインフラや、ネットワーク・エッジ向けのソリューションを提供しており、ここが大きくクローズアップされることも少なくない。ただ実はNXPがその本領を発揮するのは、アプリケーション・エッジである。

  • NXPの見るインテリジェント・エッジの模式図

    NXPの見るインテリジェント・エッジの模式図

アプリケーション・エッジの場合、数もさることながら種類の多さがポイントとなる。様々な用途向けに、全く異なる要求が寄せられることは珍しくないし、性能要件や機能要件も様々である。ここで求められるのは、広範なニーズに応えやすく、さらに必要に応じて特定ニーズに対応できる余地を残した柔軟なプラットフォームということになる。NXPはプロセッシング/コネクティビティ/セキュリティという3つの要素技術を核に広範なソリューションをアプリケーション・エッジ向けとして提案している。

  • NXPのアプリケーション・エッジ向けソリューションを支える3本柱

    NXPのアプリケーション・エッジ向けソリューションを支える3本柱

NXPのMII (Mobile, Industrial & IoT) マーケティング本部長 大嶋浩司氏へのインタビューをもとに、それぞれの特徴や強みについて見ていきたい。

第1の柱 : プロセッシング とは?
~MCUとMPUを繋ぐクロスオーバーという選択肢~

NXPジャパン株式会社 マーケティング統括本部 副統括本部長 兼 MIIマーケティング本部長 大嶋浩司氏

NXPジャパン株式会社
マーケティング統括本部
副統括本部長 兼 MIIマーケティング本部長
大嶋浩司氏

アプリケーション・エッジと一口で言っても、下は単なるセンサー(気温や湿度、消費電力、ドアの開閉、体重計や血圧計、最近だとCOVID-19の対策でパルスオキシメーターなどもこの範疇に入る)程度のものから、上はホーム・ゲートウェイや産業用ロボット制御、ビル監視あたりまで非常に範囲が広く、ここで利用されるプロセッサの要件は消費電力やコストの要件とも絡んで複雑になっている。 NXPは、前者(Constrained Deviceなどと呼ばれることもある)のような、消費電力とコストに非常に厳しい制限があるものの性能への要求が高くないデバイス向けに、LPCシリーズやKinetisシリーズといったMCUを提供する。後者のロボット管理やホームゲートウェイのような、高いアプリケーション性能が求められる代わりコストや消費電力への要求は相対的に厳しくない用途向けには、i.MXシリーズLayerscapeシリーズのMPUを提供している。 ただ最近は、前者に向けたアプリケーションのマーケットが広がってきている。たとえばスマートスピーカーの場合、一番ローエンドは数千円のオーダーで販売され機能も最低限だが、ハイエンド向けは数万円で液晶ディスプレイまで付属していたりするのだ。これをMCUだけでカバーするのは能力的に厳しいし、MPUではむしろ性能過多になる。なにより、MCUとMPUでは全く異なるソフトウェア環境で、同じ使い勝手や見かけのアプリケーションを構築するという苦行を強いられることになる。

こうした用途に向けてNXPが提供するのがクロスオーバーMCU/MPUというラインナップである。「MPU並みの性能をMCUのソフトウェア環境で」提供するのがi.MX RTシリーズ、「MPUのソフトウェア環境をMCU並の手軽さで」利用可能なのがi.MX ULPだ。これにより「MCUベースで動作しているアプリケーションを、よりハイパワーな環境で動作させる」「MPUベースで動作しているアプリケーションを、より低価格な環境で動作させる」といったことが容易になり、最終製品のラインナップ強化を最小限のコストで実現できるようになる。 i.MX RTシリーズは最大1 GHz駆動のArm Cortex-M7を搭載、一部製品はマルチコア構成のうえ、2Dグラフィックエンジン搭載のものもある。昨今は低価格アプリケーションでもGUIが要求されたりすることが珍しくない。こうした用途をMCUで実現できるのがi.MX RTシリーズの強みである。

  • NXPのインダストリアル&IoT向けMCU/MPUポートフォリオ

    MCUからMPUまでシームレスな展開がされている

もう一つ、プロセッシング周りで忘れてはならないのがAI対応である。第1世代のアプリケーション・エッジだと「エッジ・デバイスは単にHMIの提供で、AIの処理はクラウドで行う」というものが少なくなかった。ただしこれは「遅延が大きい」「通信コストがかかる」「クラウドがダウンするとそもそもアプリケーションが使えなくなる」「プライバシーや機密データ保護に懸念がある」などの問題があったため、近頃は「ある程度のものはエッジ側で処理する」という方向になりつつある。Constrained Deviceではさすがに厳しいが、アプリケーション・エッジではそれなりのAI処理性能が求められるようになってきた。ここで重要なのは処理性能もさることながら、これを容易に構築できるフレームワークである。NXPはeIQ(イー・アイキュー)機械学習ソフトウェア開発環境と呼ばれる独自のソフトウェアツールキットを無償提供し、インプリメントやハードウェアへの最適化を容易にしているが、最近ここにeIQ Toolkitと呼ばれる新しい機能が加わった。

  • eIQ機械学習ソフトウェア開発環境の新機能「Toolkit」によるモデル・トレーニング

    これからニューラル・ネットワークを構築する場合は上段のフロー、既にあるモデルを利用する場合は下段のフローで実装が行える。これはすべてeIQ機械学習ソフトウェア開発環境下で実施できる

CNN(モデル構築手法の一種)などではまずニューラル・ネットワークを構築し(Training:学習)、ついでその機構をターゲットマシンに移植して実際に稼働させる(Inference:推論)。この学習、つまり新規にニューラル・ネットワークを構築する方法にこれまで標準的なものがなかったのだが、NXPはeIQ Toolkitでこの学習フェーズまでもカバーし、自身で必要となるニューラル・ネットワーク構築までワンストップで行えるようになった。これにより、アプリケーション・エッジにAIを利用した機能の実装が非常に容易になったことは見逃せない。

第2の柱 : コネクティビティとは?
~Wi-Fi+BluetoothからUWBまでカバー~

冒頭でも触れたが、アプリケーション・エッジはコネクテッド・デバイスであることが大前提である。したがって適切なネットワーク・コネクティビティが必要になる。ただしこれも用途によって異なり、スマートホームを前提にすればWi-Fiが主流だが、ウェアラブル・デバイスやConstrained Deviceのような省電力機器にはBluetooth Low Energy (BLE)が要求される。一方でスマートホームといっても一部の機器は省電力を考えるとWi-Fiでも厳しいということで、ZigbeeやThreadなどを使う例もある。

  • NXPの幅広い無線接続技術

    いずれは5GやFMAももっと広い範囲で利用されるだろう

加えてUWB(Ultra-Wideband)という要素も加わったが、まずはメインストリーム向けコネクティビティについて触れておきたい。 NXPは豊富なWi-Fi+Bluetoothソリューションを提供している。型番が"88"で始まるこのソリューションは、元はMarvellが提供していたもので、NXPは2019年に同部門を買収して引き続き提供を行っている。これにより、ワンストップでMPU/MCUとコネクティビティのソリューションが提供されるようになったことの効果は、複数のベンダーからそれぞれ部材を仕入れて、自分で検証を行う手間を考えればおわかりかと思う。同様にZigBee/Threadについても、NXPからソリューションが提供されている。 こうしたコネクティビティの最新のものが、UWBである。

  • モバイルは新たなIoTユースケースを進化させるためのSEEDING PLATFORM

    たとえば落とし物タグ、Wi-Fiなどでは「部屋のどこかにある」レベルの探知なのに対し、UWBでは数cm単位の精度で位置を特定できるので、従来とは異なる利用の仕方が可能になる

UWB技術そのものは2000年前半位から急速に盛り上がったものの、一度ブームが去っている。ところが最近になって、cm単位の精度を持つロケーション認識、およびセキュアコミュニケーションとして再び日の目を浴びている。具体的には落とし物タグとか自動車のキー(Key Fob)で、この自動車の場合の応用例はこちらの後半で説明している。リピータ(Range Extender)を利用しての車盗難への攻撃に対する強力なソリューションとしてBMWなどで採用されたものだが、今後は自動車だけでなくモバイルペイメントやセキュアロックなど広範なニーズが考えられる。こちらは今後大きく展開される可能性を持った用途であり、NXPはTrimensionというブランドで製品や開発キットの提供を始めると共に、CCC(Car Connectivity Consortium)およびFiRa Consortiumという2つのUWB普及を図る団体に加盟、普及に向けた取り組みを行っている。

多様な無線技術に対応するNXPの幅広いラインナップはこちらにまとまっているので、アプリケーション要件で上記以外のコネクティビティが必要、という場合には確認してみるのが良いだろう。

第3の柱 : セキュリティ とは?
~セキュリティをワンストップで実現するEdgeVerse~

最後の柱がセキュリティだ。コネクテッド・デバイスには適切なセキュリティが必要であり、セキュリティ不備が理由で製品リコールといったことも現実に発生している。アプリケーション・エッジにセキュリティ対策なしはもはや考えられない。 その一方で対策が難しいのもセキュリティである。単にチップにセキュリティアクセラレータや暗号鍵ストレージなどが入っていれば良いというものではなく、アプリケーション側への対応や最終出荷製品への鍵のデプロイ、さらには生産から廃棄までの一連のライフサイクル管理なども必要になってくるからだ。こうしたセキュリティに関わる要素を備えたものがEdgeVerseである。

  • EdgeVerseポートフォリオ

    EdgeVerseはLPCシリーズやKinetisなどのMCUにも対応しており、Constrained Deviceでもある程度までのセキュリティ対応が可能になっている。

EdgeVerseはセキュリティやライフサイクルマネジメントなどに加え、そうしたセキュリティ対策が可能な製品ラインナップまでを包括した製品ポートフォリオとなるが、その中でセキュリティに直接関わるものがEdgeLockである。 EdgeLockはi.MXシリーズに搭載される形で提供されるSecure Enclaveや、単独チップで提供されるSecure Element、認証システムであるEdgeLock SA(Secure Authentification)などのソリューションに加え、これを正しく利用していることを確認するAssurance Program、さらにSecure Elementを利用したIoTプラットフォームであるEdgeLock 2GOなどから構成される。 どのようなセキュリティ要件が必要になるかは、使われ方や、どういったネットワーク・サービスに繋がるかによって変わってくるが、こうしたニーズに応じて必要となるセキュリティのソリューションをワンストップで実現してくれるのがEdgeVerseである。

NXPが提供するソリューションの魅力をまとめると

ここまでNXPのアプリケーション・エッジ向けソリューションを紹介してきたが、何しろ対象となる市場が広いだけに要件も様々で、画一的なソリューションですべてをカバーすることはできない。そのため、どれだけ幅広いラインナップをそろえ、それらを包括的にソリューションとして提供できるかが、自身のアプリケーションに適したハードウェアを選定するうえでのポイントになる。NXPが提供するソリューションは、非常に広い範囲のアプリケーションに対応できることがおわかりいただけたと思う。これから新規にデザインをスタートする、あるいは継続生産が難しくなったアプリケーションを作り直す、といったケースでは一度NXPのアプリケーションエンジニアとお話されることをお勧めしたい。適切なソリューションが提供されるはずだ。

  • NXPジャパン株式会社 マーケティング統括本部 副統括本部長 兼 MIIマーケティング本部長 大嶋浩司氏

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