ビジネスPC『ThinkPad』を手掛けることで知られるレノボ・ジャパンは、多くの企業に先駆け、テレワークへの舵を切ったことでも知られている。同社は、“テレワーク先進企業”として得たナレッジ・ノウハウを、どのようかたちで製品に込めているのか──ThinkPadの製品企画に携わる傍らで、ワークスタイル・エバンジェリストとしてテレワークの推進を先導する元嶋 亮太 氏に、同社における取り組みの現在地と、今年発売されたThinkPad新シリーズの特長を紹介いただいた。

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    レノボ・ジャパン
    コマーシャル事業部 企画本部 製品企画部
    モダンプラットフォームグループ マネージャー 兼 ワークスタイル・エバンジェリスト
    元嶋 亮太 氏


“テレワーク先進企業”レノボの現在地


無制限テレワークへと舵を切る

──テレワークのスタートについて教えてください。

「レノボはIT企業なんだから、できてるんじゃないの?」とよく言われますが、全然そんなことはなく、ゼロどころかマイナスからのスタートだったと思います。

制度自体は2005年からありましたが、ほとんど利用されていませんでした。当社にとってテレワーク元年と言えるのは2015年で、このタイミングで導入したのが日数に制限を設けない「無制限テレワーク」です。

最初の数カ月は物珍しさから利用する人もいたものの、あっという間に廃れました。当時は「テレワークを使ったら次の日は有給休暇」「テレワークだから会議に参加できない」という誤った認識もまだ根強く、テレワークという制度が正しく理解されていなかったのです。

──コロナ禍以前では、よくあった認識ですね。そこからどのようにしてテレワークを定着させていったのでしょうか?

レノボでは、経営陣からのメッセージや全社集会、年に数回のテレワーク・デイ(強制力を持ったテレワーク実施日)といった取り組みからスタートしました。並行して、人事部門など社内横断チームで実施した社内調査の結果などをもとに、改善を繰り返してきました。これらを4年ほど地道に続けて、ようやく一人ひとりに合わせた柔軟な働き方が定着してきたところで2020年・・・・・、コロナ禍が到来したというわけです。

いまでは多く企業がテレワークを取り入れ、なかでも在宅勤務はポピュラーなものになってきましたが、2020年に入り、感染症の蔓延状況によって随時ポリシーは変更していますが、テレワークを中心とした、柔軟な働き方を実践できています。スムーズに業務継続が行えている背景には、試行錯誤を繰り返した4~5年の下積みがあったからだと思っています。

──テレワークを導入したことで、どのような変化を感じていますか?

テレワーク導入の効果として一番よく言われるのはワーク・ライフ・バランスの向上だと思いますが、こちらは予想通り上がりました。社内調査では約97%がポジティブな反応を示しています。

予想より良かったのは生産性です。「生産性が落ちた」と答える人が多いと思っていたのですが、コロナ禍に入る前に実施した社内調査では、約50%が「上がった」と答え、約40%が「変わらない」と答えました。「上がった」という回答はもちろんですが、4割が「変わらない」と答えているのは、働き方改革を推奨する立場からすると褒め言葉ですよね。「どこでも変わらず働ける」と言ってくれているわけですから。

実は、無制限テレワークを始めるにあたり、社内では「テレワークを週何日に制限するか」という議論がありました。そのなかでは2日、3日という意見もありましたが、「なぜ制限するのか」合理的な理由が見当たらなかったんです。その結果、「問題があったら変えればいい」ということで無制限のまま走り出しましたが、幸いにも今日に至るまで大きな問題はなく、無制限テレワーク制度を継続できています。

──では、日本企業全体におけるテレワーク導入は、いまどのような状況にあるとお考えですか?

現在、多くの企業は3~4年先を見据えて制度や環境の検討を進めていると思います。当社が2021年に実施した調査では、感染症の蔓延収束後も約42%の企業がオフィスワークとテレワークのハイブリッドワークを選ぶという結果が出ています。

つまり、2020年に大きな変化が起こったということです。これを持続可能なものにするにはどうしたら良いのか……。それを皆が考えているが、テレワークの現在地と言えるでしょう。

機能しなくなるPCの"ワン・フィッツ・オール"

──レノボでは、テレワークに適したPC選びなども支援していますが、社内でのテレワークの取り組みは販売戦略にどのような影響を与えていますか?

はい。まず大前提として、お客さまは「PCを導入する」ことが目的ではなく、「ビジネスを遂行する」手段としてPCを導入したいわけです。「テレワークをする」手段としてPCを導入したい方が増えてきたという経緯から、当社もそのご相談に応じてきました。

ですが、どんなにハイスペックなモバイルPCを採用しても、テレワークに失敗するところは失敗します。なぜかというと、「環境」は働き方を構成する“ひとつの要素”でしかないからです。企業とは結局「人」ですから、環境と同じくらい「制度」や「企業文化(社風)」が大事で、この3つの観点を持ち続けないと、持続可能な働き方は実現できないと思います。

とはいえ、レノボの出自はデバイスメーカーですから、制度や社風のコンサルティングまで深く踏み込むかたちでお客様をサポートすることは現実的ではありません。それでも日本でビジネスをさせていただいている以上、日本社会に貢献したいと思っています。ですから、我々の知見を無形の学びとして、デバイスの提供と一緒に将来の働き方も見据えたご案内を行っている次第です。

この取り組みが、テレワークスタートガイドや各種環境ガイドなどの冊子に反映されています。これらの冊子の中には、レノボ自身の改善体験も反映されています。

──では、レノボ場合、PC環境の選択はどのようにされているのでしょうか?

緊急対応としてテレワークを始めた会社は多いと思いますが、今後、中・長期の視点で考えるとオフィスワークやコワーキングスペースなど、在宅勤務以外のサードプレイスでの勤務も含めたテレワークのなかで一人ひとりが最適解を見つける「ハイブリッドワーク」への移行が起こります。

つまり、より柔軟性の高い働き方が求められるわけで、レノボ自身も、従業員それぞれの働き方に合わせてPCを自由に選べるようにしています。なぜなら、働き方は人によって異なるという、考えてみれば当たり前のことをこれまで以上に考慮する必要があるからです。

私たちが実際に行ったテレワークから得た学びは、「働き方は画一的なものではない」このひと言に尽きると思っています。その意味で従業員全員に1モデルのPCを導入するワン・フィッツ・オールの形態は、すでに機能しないものになっていると言えるでしょう。


“オフィスから仕事を開放する”ThinkPadのブレないフィロソフィー


ThinkPadシリーズ2021年モデル、変わった点と変わらない点

──ThinkPadは、働き方の多様化に対してどのようなアプローチを行っていますか?

まず、なぜレノボがThinkPadを作っているのか、その点に関してお話しします。

1992年の初代ThinkPadから一貫して、「オフィスから仕事を開放する」ことをコンセプトとして作られたPCです。これは今日に至るまで一切ブレていません。もともとPCは"創る"ためのツールとして発展してきましたが、最近は"創る"だけでなく、"コラボレーション"のためのツールとしても用いられるようになりました。しかし、場所を問わずに最高の生産性を実現することをコンセプトとしていることに変わりはありません。

──ThinkPadシリーズ 2021年モデルの変更点について教えてください。

創るためのツール、コラボのためのツールという2つの観点からご説明します。まず創るためのツールという点で言いますと、変わってないところと変わったところがあります。キーボードの打鍵感をはじめとしたフィーリングや、ビジネスシーンで求められる堅牢性など、ThinkPadのコアとなるバリューは変わっていません。

たとえば、当社のフラグシップである「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」は、14インチの大画面と高い可搬性、そして堅牢性のバランスを重視しています。一点突破型で何かをトレードオフするのではなく、実際に利用されることを想定したThinkPadブランドならではのバランスを心がけています。

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    ThinkPadのコンセプトを体現しているフラグシップモデル「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」

もちろん、フレームの骨抜きやメインボードの高密度化によって軽く、小さくする努力は進めており、「ThinkPad X1 Nano」という13インチディスプレイを搭載したひと回り小型のより可搬性の高い、軽さ約906g~というモデルも展開しています。しかしここでも堅牢性・パフォーマンスにこだわっています。インテルの第11世代Coreシリーズのモバイル向けCPUはUP3とUP4に分かれていますが、「ThinkPad X1 Nano」ではCPUにより消費電力の少ないUP4を採用しつつも、他社のUP3並みの性能が出るように設計しています。

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    堅牢性やパフォーマンス、打鍵感に優れたキーボードといったThinkPadのフィロソフィーそのままに軽量化した「ThinkPad X1 Nano」

そのうえで最近、大きく変えた部分はディスプレイです。一部のモデルから採用を始めていますが、画面のアスペクト比を変えています。ここ10年ほど、画面のアスペクト率は16:9が主流でしたが、今年のThinkPadでは16:10を採用しています。縦に広がったことでウインドウを2つ並べた際に使いやすくなり、たとえば、外出先において、ThinkPad単体で仕事をするといったシーンでは、これによる生産性の向上が期待できます。

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    画面比率16:10のWUXGA(1920×1200ドット)、WQXGA(2560×1600ドット)液晶を搭載可能な「ThinkPad X13 Gen 2

このほか、パフォーマンスをより細かく制御し、使っているプロセスをもとに自動でチューニングを行って、高い性能を引き出せるようになりました。これによってバッテリー持続時間も延びています。

──コラボレーションという観点ではいかがでしょうか?

オフィスワークとテレワークが混在するなかで、オンライン会議の品質向上へのアプローチを強化しています。フェイス・トゥー・フェイスで会議をするときに良い体験を届けられるかどうかは、テレワークの普及に大きく影響すると考えています。

1つ目はカメラです。今年のモデルより、一部のモデルでフルHDのカメラを選べるようにしていますが、解像度以外にも、細かなファームアップを行い、カメラ体験を向上させています。とくに、オンライン会議の体験を損ねる要因の1つである"映像の暗さ"は大きく改善しており、明るさのみならず暗部ノイズも低減しています。

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    720Pカメラと1080P(フルHD)カメラの比較イメージ

また、これは2017年モデルの一部からの採用ですが、Webカメラに物理的なプライバシーシャッターを取り付け、セキュリティと利便性を両立させています。このシャッター機構も初登場以降、年々アップデートされており、よりストレスなく開閉ができるようになっています。

2つ目はマイクです。オフィスワークでもテレワークでも、必ずしも静かな場所で仕事をするわけではありませんから、外部ノイズをカットする機能は必要です。

2021年モデルの「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」と「ThinkPad X1 Yoga Gen 6」では新たに「Dolby Voice」に対応し、オンライン会議時にノイズとなる人の声や物音を低減できるようになりました。実はこのDolby Voiceは非常に雑踏に対して効果が大きく、外出先で利用するとその効果がわかりやすいと思います。

3つ目はスピーカーです。継続的に強化しており、「Dolby Atmos Speaker System」に一部モデルが対応しました。特に「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」や「ThinkPad X1 Yoga Gen 6」、「ThinkPad X1 Nano」では4つのスピーカーのうち高音スピーカーは表面に、低音スピーカーは底面に配置し、聞き取りやすく立体的な音響を実現しています。オンライン会議で役立つだけでなく、プライベートで動画や音楽を楽しむ際にも活躍します。

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    「Dolby Atmos Speaker System」でのサウンドイメージ

このほか、5GやWi-Fi 6への対応など、最新の通信規格も選べるようになっています。高速な携帯回線や無線LANを利用することで、より良いテレワークを体験できるでしょう。

2021年のテレワークで求められるスペックとは?

──それでは、2021年モデルのなかで、とくにオススメはありますか?

ThinkPadはどのモデルでもThinkPadであり、どれを選んでも根本的なユーザー体験は変わりませんので、すべてのモデル、自信をもっておすすめできます。とはいえ、企業の皆さまには予算という大きな検討要素もありますから、2021年現在のスペックの指標についてお話しさせてください。

テレワークでオンライン会議を行うことが一般化し、スペックの制定基準は確実に上がりました。オンライン会議を立ち上げつつ、アプリも快適に動作させるためには、これまでとは異なった尺度でスペックを検討する必要があります。

メモリに関していうと、「16GB」以上をお選びいただく割合が急速に増えてきています。昨年までは「8GB」が主流だったのですが、オンライン会議アプリケーションの利用浸透などにより、パフォーマンスにダイレクトに影響するメモリ容量の選定基準が大きく変わってきていることを感じています。どこに一番お金をかけるべきかといったら、メモリを最優先すべきだと思います。ちなみに、このインタビューを受けている私のマシンも16GBの構成です。

ディスプレイの解像度も重要な要素です。最近ではフルHDが基準になっていますが、モデルによってはWQHDを選ぶことも可能です。複数の画面を同時に立ち上げる要素では、WQHDの解像度はバランスが取れていておすすめです。一部のモデルでは4K解像度が選べるようになっており、画像や映像の編集などの用途で大きな効果を発揮します。一方でバッテリー駆動時間の観点ではフルHDの方が低消費電力であることから、利用シーンに応じてご選択いただければと思います。

どんなPCを選ぶかによって仕事体験も変わる

──「仕事道具」という点において、PCはいまも昔もこれからも変わらないかもしれません。ですが、ワークスタイルは大きく変化しました。これからの働き方に対する、レノボのアプローチについてお聞かせください。

「オフィスから仕事を開放する」、これを愚直に追求し、ツールという観点で支えていきたいという思いは変わりません。ですが一方で、働き方は非連続に変わってきていると思います。いま社会に何が求められているのか、企業は何を必要としているのか。お客様の声に耳を傾けながら、変えるところは変え、変えてはいけないところは変えずに、レノボとして進化して行きたいと思っています。

PCがコモディティ化したと言われて久しいですが、そんなことはないと思います。どんなPCを選ぶかによって体験が変わる、だからこそ生産性に直結するのです。

PCは高価なモデルだから良いとは限りません。本当に良いものとは「ユーザーに合ったモデル」です。企業でも個人でも、一人ひとりが最高の生産性を発揮するために自分に合ったモデルをしっかりと選ぶことが重要であり、そのための選択肢を用意するのが私たちの使命だと考えています。

──ありがとうございました。

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