主に中小規模企業に向けて、ビジネスに必須のオフィス設備全般を幅広く提供するスターティア。同社では「存続と成長に寄り添う」という企業理念を掲げ、顧客に向けたサポート体制の強化と、業務プロセスの改革に、全社を挙げて取り組んでいる。このチャレンジを支えるITシステムとして「Salesforce Sales Cloud」および「Salesforce Service Cloud」の導入を決定。スターティア 取締役 兼 執行役員である平澤有一氏と、導入を中心的な立場で進めたマーケティング部 情報活用グループ シニアマネージャーの林宏樹氏に、導入の経緯や今後の展望を聞いた。
営業戦略の大規模な転換が新システム導入の契機に
スターティアが取り扱う商材は、法人向けトータルサポートサービス「ビジ助」をはじめ、電話回線やビジネスフォン、複合機、ネットワークを含むITインフラ、さらには業務用エアコンやLEDのような照明機器など、非常に幅広い。導入後のメンテナンスやサポートまでを手がけており、導入企業が限られたリソースを本業のビジネスに集中できる環境作りを、ワンストップでサポートすることを事業の核に据える。
設立から24年、中堅・中小企業顧客向けの商品別営業・サポートで成長してきた同社だが、今から 5年前に行われた営業戦略の大規模な転換が、今回のシステム導入の大きなきっかけになったと平澤氏は話す。
「事業を長く続けていると徐々に既存顧客の比率が増えていきます。10年ほど前の時点で、営業リソースにかける割合が、新規顧客開拓が6割、既存顧客営業が4割くらいといった状況になっていました。そうしたなか5年前に、新規顧客の開拓を一切やめ、『既存顧客と向き合い、お客様のスターティア比率を高くするために全リソースを投入する』といった経営上の決断をしたのです」
この決断の背景には、事業を続ける中で取り扱い範囲を広げていった多様な商材が、グループ企業や事業部に分散し、社内での情報連携が難しくなっていたという課題があったのだ。
「当時弊社では、取り扱う商材ごとに事業部制をとっていました。お客様に関する情報は事業部ごとに別のシステムで管理していたため、同じお客様に対して各事業部が別々にアプローチするといった非効率な状況が起こっていました。これはお客様のためにもスターティアのためにもなりません。そこで一度、既存のお客様との向き合い方を見直すことに全リソースを集中し、サポート体制もアカウント制にするなど、営業戦略を大きく変えることにしたのです」(平澤氏)
この決断が、新たな情報システムに対するニーズを生んだのだ。「新たな顧客を効率的に見つけ出す」ためのシステムではなく、「既存顧客に対し、自社製品・サービスの導入率を高めていく」ことに主眼を置いたシステムが必要になったのだ。
パイロット運用で得た「Salesforceならできる」という手応え
このスターティアのチャレンジを中心的な立場で推進しているのが、林氏だ。長く営業畑を歩んできた同氏は、自社の事業内容とその業務プロセスの双方に精通している。顧客との向き合い方を変革するという今回のチャレンジには最適の人材だ。
林氏は、新システムを検討するにあたり、4~5名ほどの小規模なチームで「パイロット運用」を実施し、Salesforceによる顧客情報の管理機能を検証したという。
「まずは、各事業部で個別にあるお客様の情報を、横串で一覧できるシステムを作りたいと考えていました。特に重要なのは、お客様が持っている資産のうち、スターティアから導入した商品やサービスを一目で把握できることです。検証のためにSalesforceを使ってみて、画面や機能のカスタマイズが非常に柔軟かつ迅速にできる点がメリットだと感じました。この仕組みの上であれば、プロの手を借りることで、われわれのニーズに沿ったシステムを作れるだろうという手応えがありました」(林氏)
そしてそのパートナーとして、Salesforceのインテグレーションにおいて国内で豊富な実績を持つテラスカイを選定、両社による新システムの構築がスタートした。
徹底的に行った「業務の見直し」と「データクレンジング」
スターティアでは、Salesforceによる新システムの本格的な構築に先がけて、まずは社内の業務プロセスの整理と見直しを徹底的に行ったという。
「開発に入る前の3か月間は、各事業の業務プロセスの見直しと、すでにあるデータのクレンジングに費やしました。新たなシステムを作ったとしても、それと同時に業務プロセスを改善しなければ、現場にとっては新システムの使い方を覚える負担だけが増すことになります。同時にSalesforceの仕組みでは、記録された情報を必要な視点で可視化することができるようになります。可視化された情報を根拠に意思決定を行ったり、現場が次のアクションを起こしたりするためには、どのようなデータが必要なのかということを検討しました」(林氏)
この作業には、かなりの手間がかかったそうだ。というのも、それぞれの事業部が業務で利用していたシステムは多様で、自社開発のものを使っているところもあれば、オンプレミス、あるいはクラウドのデータベースアプリケーションを独自に開発しているところもある。システムが違えば当然データ構造も異なる。また、社名の表記揺れや事業所の所在地の違いなどから、同じ顧客であっても別のデータと認識されてしまうケースが出てくる。同社のニーズに合ったシステムを作るためには、そうしたデータの正規化、標準化が必須だったのだ。
約3か月の短期間で開発作業を完了
業務プロセスの整理と、データクレンジング作業にめどがつき、Salesforceによる新システムの開発が具体的にスタートしたのは2019年6月のこと。テラスカイによる開発は、そこから約3カ月という短期間で一気に進められた。細かい調整を経て、2019年12月に稼働を開始し、2020年より全社での本格的な運用が始まっている。
当時のテラスカイの対応について、林氏は「業務に対するエンジニアの理解レベルが非常に高いと感じました。弊社の業務内容やプロセスは、一般的な企業に比べてかなり複雑なほうだと思います。しかし一言二言説明するだけで、エンジニア自身が想像力を働かせて正しく理解してくれます。それをITでどう改善できるのかといった適切な提案をしてくれました。また、開発中の要望に対しては、『すぐに対応できるもの』『時間はかかるが運用後に改善できるもの』というように、明確に切り分けて提示してくれたため、納得しながら開発を進めることができました」と評価する。
「SkyVisualEditor」で業務改善が実現するUIを
今回のSalesforce導入にあたって、スターティアではテラスカイの提供するSalesforceの画面開発プラットフォーム「SkyVisualEditor」を合わせて導入している。
「例えば、メンテナンスエンジニアがお客様のオフィスで作業を行った場合、作業の完了後にお客様から確認のサインをもらいます。従前システムと同様に新システムでもタブレットに記入していただき、お客様のサインを直接Salesforceに取り込めるようにしています。サービスの現場の重要なプロセスであり、SkyVisualEditorでセールスフォースが不得意な部分を円滑に補うことができました」(林氏)
SkyVisualEditorを利用した独自の開発は、運用開始後も継続して行っており、今後は見積もりを社外から作成できるようにするなど、事務的業務がはかどるようにインターフェースの改善を進めていきたいという。
「新しい取り組みを始める場合や、業務プロセスを継続的に改善していく場合には、集計項目の追加やユーザーインターフェースの変更など、すでに稼働しているシステムの一部だけを細かく変えたいというニーズが出てきます。以前利用していた自社開発システムのまま、インテグレーターに変更を依頼した場合、反映されるまでに数か月単位の時間や数百万単位の料金がかかっていたことを考えると、Salesforceの柔軟性の高さは、大きなメリットだと感じます」(林氏)
また、旧システムと比較した場合の「ユーザーインターフェースの改善」は、エンドユーザーによるシステム利用率を高めることに貢献しているという。すなわちエンドユーザーの利用率が高まれば、Salesforce上に蓄積されるデータは「量」と「質」の双方で充実していくことになる。
「最大の目的でもあった契約情報の一覧表示については、社内でも『以前のシステムより見やすくなった』と大変好評です。また今回の導入を機に、これまで各事業部で個別に導入していたチャットツールによる情報交換も、Salesforce上に統合しています。お客様に関する社内でのコミュニケーション履歴がデータとして保存され、共有できるようになったことで、これまで以上に連携が進んでいくだろうと考えています」(林氏)
さらに、スターティアではSalesforce Service Cloudの利用開始と合わせて、顧客の電話対応にCTIを導入。電話を受けた段階で、システムに保存されているその顧客のデータを呼び出し、顧客側の利便性と電話対応の効率化を助けるものだ。現在は、データの整備を進めている段階だが、現時点でも着信に対するデータのヒット率は50%となっており、今後さらに整備が進めば、より利便性を感じてもらえるような電話対応が可能になるという。
あらゆるデータを蓄積し意思決定と活動の基盤に
Salesforceとテラスカイによって具体化した新システムについて、平澤氏は「今後、より迅速な意思決定や営業活動の基盤になるものに育てていきたい」と話す。
「まずは、Salesforce上に蓄積されるデータの量と質を同時に高めていくことを徹底したいと思います。新システムでは、これまで月次でしか見ることができなかったお客様の状況、営業担当者の活動などがリアルタイムに蓄積され、可視化できるようになります。より短いタイムスパンで状況を見ながら、意思決定や活動計画の立案をサポートできるようなシステムにしていきたいです。会議でも、紙資料の配布を廃止し、参加者がSalesforce上の情報を見ながら議論できるような環境を目指したいですね」(平澤氏)
「顧客に寄り添う」ことを目指して構築されたこのシステムは、今後の新規顧客開拓や関係構築にも有効なものになると、同社では考えている。将来的には、品質の高い顧客データを、Salesforceのサービスを活用したデジタルマーケティング、マーケティングオートメーション(MA)へ展開することも視野に入れているという。
「私たちのニーズに合ったシステムをSalesforceで実現するにあたって、テラスカイさんとは厳しいやり取りもありましたが、結果として、今では互いに何でも話し合える“戦友”のような関係になれたと感じています。業務についても良く理解してくれており、今後はこの仕組みをベースに『こんな新しいことをやってみないか』というような“攻め”の提案をいただけることも期待しています」(平澤氏)
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