本連載では、さまざまな業界で取り組んでいる「映像データによる“現場DX”」を現場担当者の声と共にご紹介していきます。どのような課題があり、そこでどう映像データを活用し、どのような成果が見られたのか。今回は、物流業界の現場です。
物流業界の作業効率化、安全面での取り組みに映像の導入が進む訳
物流業界における市場環境は刻々と変化し、顧客のニーズの多様化によるサービス拡充に伴い、取り扱い点数の増加とサービス品質の向上が求められています。物流施設が広大になったために、自動化システムを導入し、省人化や省力化の実現で人件費の削減などの恩恵を受ける企業も増えています。一方で、システムトラブルの対応や、さらなる作業効率化に伴う改善など多岐にわたる取り組みが、企業側に求められています。そのような中で、クラウド録画カメラを活用し、リモートから映像データで物流拠点の状況を確認している企業をご紹介します。
原因究明・再発防止に映像データを活用する近鉄ロジスティクス・システムズ
国内のBtoB物流で高品質な倉庫保管、流通加工など総合ロジスティクスサービスを展開する「近鉄ロジスティクス・システムズ」。医療機器・精密機械・半導体など、特殊な輸送や管理を必要とする分野で、最適な物流ソリューションを提供しています。同社では、京都と滋賀にある2つの輸送拠点で数十台のクラウド録画カメラを導入。イレギュラーが発生した時の原因究明、再発防止の対策に映像データを活用しています。
元々は、拠点に設置されていたアナログの防犯カメラの映像を使用して、イレギュラー時の原因究明を行っていたそうですが、現在ではクラウド録画カメラで撮影した映像をPCで確認、当時の状況を振り返り、原因を特定しています。クラウド録画カメラの導入により、その瞬間の映像データを切り出し、事実に基づいた説明を顧客に行えるようになったといいます。さらに、正確な原因特定ができることで、再発防止につながり、作業効率の向上を実現しています。
「PCはもちろん、スマホやタブレットからも視聴でき、管轄している複数拠点の様子が移動中や自宅からも見られるなど、業務効率化にも応えてくれるツールだと実感しています」(同社所長)
同社では輸送品の数量に合わせ、作業効率を最優先したラインのレイアウト変更を頻繁に行っています。そのため、カメラの選定にあたっては可搬性も重視したそうです。
「元々、設置されていたアナログの防犯カメラの場合、空間を俯瞰するような場所に設置されており、高い位置からの撮影になることが多く、手元が見えづらくなります。結果として、作業の細部や部品の数を映像で確認できないケースもありました。しかし、カメラの取り付け場所を簡単には移動できなかったのです」(同社所長)
新たに導入したクラウド録画カメラは設置が簡単なため、ラインのレイアウト変更にあわせて設置場所も変更しています。これにより、作業の様子をよりしっかりと確認できるようになりました。
また、思いがけないシーンでも、クラウド録画カメラが役に立ったことがあります。
「当初、想定していなかったメリットとして、労災が起こった時の状況把握に録画映像を役立てることができました。発生後すぐに映像で状況を確認し、原因を特定。防止策まで講じることが可能になりました」(同社チーフ)
このように、広い拠点の作業ラインの稼働状況を遠隔から把握するだけでなく、さらなる品質と安全性向上のための業務改善に、現場の映像データが活用されています。