本連載では、さまざまな業界で取り組んでいる「映像データによる“現場DX”」を現場担当者の声と共にご紹介していきます。どのような課題があり、そこでどう映像データを活用し、どのような成果が見られたのか。今回は、インフラ工事を担う建設業の現場です。

建設業界が安全性の向上や業務効率化に取り組む訳

多くの建設、工事の現場でポータブルクラウド録画カメラを活用し、ベテラン作業員が遠隔で現場を見守り、困った時には迅速にフォローできる体制が導入されつつあります。昨今、建設業界では深刻な若者の働き手不足に悩んでいる企業も多く、働きやすい環境にしなければならないという意識がこのような取り組みにつながっているのです。また、官公庁が発注元となる仕事では、工事現場におけるICTの活用度やワークライフバランスへの配慮も評価の対象になることがあり、この点に注力している企業も増えています

現場作業の安全性と現場監督の業務効率を映像データで向上させる協和日成

ガスを中心に生活のインフラを支える総合設備会社「協和日成」。ガスを供給するための導管の敷設・改修と道路工事をはじめ、ガス・上下水道・空調の設備施工、都市の地下電源や上下水道を整備する電設土木工事などを手掛けています。工事中は現場に立ち会い、作業後はそれらに付随する事務仕事を行う必要があり、長時間労働につながりやすいことから、業務の効率をいかに向上させるかという課題がありました。

「カメラが人の目の代わりになり、現場にいる時間を削減できるのではないかと考えたのが、クラウド録画カメラの導入を検討したきっかけです。また、現場の安全管理にも使えるのではないか、使っていくうちに新たな活用法も見つかるのではないかという期待感もあり、導入に踏み切りました」(同社現場担当者)

同社では、充電式バッテリー搭載でLTE通信機能(映像・音声)内蔵のポータブルクラウド録画カメラを導入。実際に使用してみると、現場から「全体の様子を定点で撮影するのに1台。重機に取り付け、掘っている様子を撮るのに1台と、少なくとも1つの現場に2台は必要だ」という声が上がったといい、台数を増やしました。

  • 1つの現場に最低2台のカメラを設置。いくつもの現場でローテーションしながら、クラウド録画カメラを使用している

「重機の安全バーにクリップでカメラを装着し、重機で掘っている様子を撮影しています。細心の注意が必要なシーンですが、ベテラン管理者が遠隔でカメラの映像を通して見守り、リアルタイムでアドバイスができ、事故を未然に防ぐといった活用を考えています。万一不測の事態が起こった際は、作業の様子がリアルな映像で残ることで、再発防止にも役立ちます」(同社マネージャー)

  • 現場で安心してカメラを使えるよう、カラーコーンの先端にオリジナルの治具を作成

現場管理者は映像を常にどこでも視聴できる状況にしていて、デスクワークをしながら、他の現場に向かいながら、複数の現場の様子を見守ります。結果的に移動時間や現場滞在時間の削減につながり、他の業務に充てる時間が確保できるようになったと言います。

「これまでは現場の状況を電話で伝えてもらっていたので、イメージの共有が難しく、わざわざ現場に駆けつけることもありました。クラウド録画カメラの導入により、若い現場監督からの問い合わせや相談、応援要請にもタイムリーに対応できるようになりました」(同社マネージャー)

現場にクラウド録画カメラを導入することで、タイムリーに指示出しやアドバイスできるようになり、時間のロスも防げるようになってきています。今後は、工事の映像をタイムラプス映像に加工し、教育・研修、技術継承のリアルな教材として活用することや、映像をエビデンスとした品質管理と監査に関する業務での利用も考えているということでした。