リコーグループでドキュメントスキャナ「ScanSnap」やコンパクトキーボード「HHKB(Happy Hacking Keyboard)」などを手掛けるPFUは、2023年6月末にオフィスをリニューアルした。「Communication、Collaboration、Connect」を新オフィスのコンセプトとして、フロアを縮小しつつも生産性とウェルビーイングの向上を狙ったというこだわりのオフィスを紹介しよう。

  • PFU横浜本社オフィスエントランス

    PFU横浜本社オフィスエントランス

オフィスフロアを縮小しつつコミュニケーション拡大を促進

PFUは1960年、石川県宇ノ気町(現 かほく市)で中学校の古い講堂を借りて創業した。2014年に東京本社(川崎)と東京開発センター(町田)を統合して横浜本社に移転し、石川県と神奈川県の2本社体制となった。

横浜本社への移転時には、イメージスキャナを販売する同社らしく、紙文書の電子化を一気に進めたという。移転に伴いオフィス面積が小さくなったこともあり、各個人が保管していた紙の資料などを多量に削減する必要があった。

「最初は社内でも抵抗感があったが、資料を電子化するためのプロジェクトを立ち上げるなど実際に作業を始めてみると、意外とスムーズに電子化が進んだ。廃棄する資料の置き場所に困ったほどだった」と、当時の担当者は振り返った。

  • ScanSnapなどを使って紙資料を電子化

    ScanSnapなどを使って紙資料を電子化

同社は2023年6月に、コロナ禍が落ち着きを見せたことをきっかけにオフィスを見直したという。その結果、コロナ禍以前はビルの3フロアだったオフィスを2フロアへと縮小することに。フロアの縮小と合わせて全席フリーアドレスとしたため、各個人の資料などを改めて廃棄する作業が発生した。しかし横浜本社への移転時に多量の資料を電子化・廃棄していた経験が生き、フロアの縮小も順調に進んだ。

リニューアル後の新オフィスは、在籍社員数1500人に対し総席数が約790席。コロナ禍でハイブリッドワークを導入し平均出社率は4割程度に落ち着いたため、座席は十分にまかなえる計算だ。

同社はオフィスのリニューアルに際して、コンセプトやオフィスの使い方を社内に浸透させるため、さまざまな部門から代表者を集めて定例会を複数回開催した。約3カ月間かけて会社と従業員が会話を重ねることで、働く人がより使いやすいオフィス設計を目指したという。

  • 全席に電源を確保するなど働きやすさを最大化した

    全席に電源を確保するなど働きやすさを最大化した

多様な座席で柔軟な働き方をサポート

リニューアル後のオフィスのコンセプトには「Communication、Collaboration、Connect」を掲げ、以前の"作業の場"から"共創がメインの場"へとオフィスの目的を変えた。働く場所や時間を自由に選べるようにし、生産性とウェルビーイングにつなげている。

オフィス内は基本的にフリーアドレスではあるが、共創の場として活用するために会話しやすい空間設計とした。また、チームで出社して業務を進める日にも対応できるよう、グループワークを想定した4~6人ほどの席も確保している。

  • グループ席1
  • グループ席2
  • グループ席3

    複数人でのコミュニケーションが取れる席も多い

オフィス設計においては、「ワークポイント」の考え方を取り入れた。ワークポイントとは、デスク席以外の座席も考慮したレイアウトや、他社との距離感に配慮した設計とする考え方。いくらモニターや座席が設置されていても、集中したいときにあまり仲良くない人の隣では作業しづらいものだ。新オフィスでは、席をいくつか飛ばして座っても余裕のある設計としている。また、食事なども席でとれるよう工夫した。

  • 一人席1
  • 一人席2
  • 一人席3

    一人用の席だけでも複数のバリエーションがある

一方で、高いパーテーションなど目線をさえぎるオフィス家具を廃止し、フロア内の見通しを確保。仕事以外のコミュニケーションが生まれやすい工夫も導入している。

  • フロア全体を広く見渡せる

同社オフィスに届く郵便物はオフィスサービスセンターですべて電子化され、メールなどデータで手元に届く。このデータを確認して、現物を受け取るスケジュールを立てられるという。

加賀五彩にいろどられた会議室

石川県にゆかりのあるPFUらしく、会議室には加賀五彩をあしらった。加賀五彩とは江戸時代から加賀友禅や九谷焼などで用いられる伝統的な色で、臙脂(えんじ)、黄土(おうど)、藍(あい)、草(くさ)、古代紫(こだいむらさき)の5色のこと。

こだわりの会議室は来客との打ち合わせにも使われるようなので、機会があればぜひ加賀に受け継がれる美しさを感じてほしい。

藍は里海を表す染め重ねた青色で、浴衣や風呂敷などにも使われる。

  • 会議室1

    「藍」の会議室

古代紫は神秘的な日本古来のくすんだ紫色。江戸紫よりもほんのり赤みが強く、京紫よりも暗い色。

  • 会議室2

    「古代紫」の会議室

その他、黄土は豊穣の里山を表す黄褐色で、日本画の絵の具としても用いられる。草は神々の霊峰を表す黄緑がかった色。最古の色名の一つだという。臙脂(えんじ)は工匠の技「用の美」を表し、紅花などを用いた黒みを帯びている赤色。

また、同社オフィスではScanSnapをはじめとするスキャナやHHKBなど、歴史とともに実機を展示するスペースも楽しめる。

  • ScanSnapショールーム

  • HHKBショールーム

  • PFUオフィスエントランス

    PFUオフィスエントランス