習慣を作るために、あらかじめカレンダーに、毎日あるいは毎週やると決めた行動を登録しておくという話を前回しましたが、Google Calendarで予定を入れようとすると、デフォルトが1時間枠になるんですよね。たとえば、12時の枠をクリックして新しい予定を入れると、他に何も指定しなければ12:00から13:00の予定として登録されてしまいます。

佐々木 デフォルトが1時間枠ではやはり大きすぎるということですね?

そうなんです。以前、43FoldersのMerlin Mannもポッドキャストで息巻いていたのですが、これですと、一日の仕事の中でなんとなく8つの予定やタスクしか入れられないような錯覚に陥ります。Merlinは、新しい予定を入れた場合のデフォルト時間を30分にするだけで、何百万人ものGoogle Calendarを使っている人々の生産性が底上げされるのにと怒っていたのを覚えています。

佐々木 なるほど。それで私はGoogle Calendarを、メインでは利用できていないんですね。私のタスクで、1時間を超えるものはほとんどなくて、多くは10分以下です。今調べてみると、タスクの数は1日平均70個以上になります。

70個! それだと一つあたり10-15分という細かさですよね。佐々木さんはタスク管理にToodleDoやタスクシュートをお使いだと思うのですが、普段からタスクの粒度を意識して管理されていますか。

佐々木 タスクの粒度は自然と意識せざるを得ないですね。私は1タスクの大きさは、ばらけることから生じる混乱に陥らない限り、小さいほどいいと感じていますので、手をつけにくいと感じたら、分解する。これを繰り返したために、こんなに多くなったのです。

最も手がつけやすい粒度にまでタスクを分解している訳ですね。これは、手順というのとも違いますよね? 例えば、絵を描くのに、絵の具を開いて、絵筆をとるというタスクをToDoにいれる人はいないと思いますが...もうちょっと意味のあるまとまりなんでしょうか。

佐々木 もちろん、分解すれば前後の依存関係は生じますね。それに関して言えば、1日の時間をいくつかのセクションに分けることで解決しています。たとえば、10時から12時はセクションB。12時から14時はセクションC。5つに分解したタスクを、セクションB→C→D→E→Fと分散させれば、順番にしたがってやっつけていくこともできます。もちろん、日をまたいでやっていくこともあります。12日に第1工程、13日に第2工程、15日に第3工程、というふうにですね。

僕の場合は、論文を書くための1段落に当てる時間が、例えば30分が一番やりやすいとか、プログラムを一つ作成するのには1時間では難しいけれども、90分なら楽にプロダクトが作れるといった具合に、その仕事に最適な粒度を意識するようにいつの間にかなってきました。そうして、15分のタスク同士をまとめたり、90分・15分・90分というようにペースメーカーに利用したりといった遊びもします。

佐々木 私も似たことはよくやります。もっと短くなるので、15分・3分・10分とかですが。

ありがちなのは、「10時から11時」といった時計の単位を基準にして仕事をしようとして時間が余ったり、足りなくなってストレスを感じたりすることだと思うのです。余るはずだった時間は実際は「パーキンソンの法則」に従って無駄なディテールをいじくる時間になって消えていきますので、実際には仕事はほとんど必ずといっていいほど遅れがちになってしまうわけです。こうしたことをなくすためにも、与えられたタスクが15分なのか、30分なのか、90分なのかといった自分だけの物差しを早めに作っておくことだと思います。

佐々木 タスクには、堀さんがおっしゃるとおり15分のものや30分のものが多くなると思います。が、私自身のタスクで多いのは「5分」というタスクです。だから「5分でできること」を肌で知るためにも、「5分タスク」をどんどん見積もって増やしてくのがよいかと思います。そうすると、あまり多くの時間は残っていないのです。(「5分タスク」が20個あれば2時間がそれで消えます)。その残った時間で、「15分のタスク」や「90分のタスク」もこなさなくてはならない。まずこのようにサイズに合わせて見積もっていくのがスタートになるでしょう。

最も手がつけやすい粒度にまでタスクを分解する

対談後記(堀 正岳)

GTDでは「紙に写しとるのではなく、今すぐ実行する」アクションは3分程度のものとされていて、その長さがどのくらいなのかを肌で知るまでにタイマーをかけて意識することが奨励されています。正確に時間を意識して、仕事にあわせたビートを刻めるようになるまで、時間を見積もることをやめないことが、タスク管理上達の極意なのかもしれません。子供のころに「7時から10時まで全部勉強」という風におおざっぱに予定を組んでいた人は要注意!ですね。

佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト

「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。

ブログ「ライフハックス心理学」を主催

堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者

1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」(日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2(技術評論社、共著)がある。ブログ「Lifehacking.jp」を主催