ブリティッシュコロンビア大学(UBC)は、オメガ3脂肪酸をカプセル化する新しい方法の開発について、研究を進めている。では、なぜオメガ3脂肪酸に注目しているのだろうか。そして新しい方法でカプセル化する理由は何だろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

宇宙活動で必須なオメガ3脂肪酸のカプセル化とは?

UBCの研究チームは、なぜオメガ3脂肪酸に注目しているのだろうか。彼らはプレスリリースにおいて、オメガ3脂肪酸の重要性について以下のように述べている。

"Omega-3 is essential to mental sharpness. Even a couple of days without omega-3 in our diets may dull our brains and have us feeling less than our best(オメガ3脂肪酸は精神的な明晰さに不可欠だ。ダイエットとして数日間オメガ3脂肪酸を摂取しないだけで、脳の活動は鈍くなりベストな状態でないと感じるだろう)."

つまり、オメガ3脂肪酸は脳の活動や精神面において不可欠な成分なのだ。そして彼らは、このオメガ3脂肪酸が将来必要とされる場所として、宇宙空間での火星探査ミッションなどを想定している。長期間宇宙で活動する宇宙飛行士などの栄養補給として、その活用を重要視しているのだ。

  • 日々の活動に不可欠なオメガ3脂肪酸のカプセル化は、今後発展が見込まれる長期間の宇宙ミッションにおいて重要性が増すと考えられる

    日々の活動に不可欠なオメガ3脂肪酸のカプセル化は、今後発展が見込まれる長期間の宇宙ミッションにおいて重要性が増すと考えられる

しかし、オメガ3脂肪酸の消費・貯蔵期限は2年だという。それ以上経過してしまうと品質が悪くなる上に、発がん性を有するようになるというのだ。宇宙活動というものは、2年以上にわたって行われるが容易に想定されるため、これ以上の期間を高い品質で保てるようにしなければならない。

そこで彼らは、オメガ3脂肪酸の「カプセル化」を目指して、Ingredionという企業と協力しながらキヌアパウダーを使ってカプセル化する方法を検討している。ただし研究チームによると、この方法でオメガ3脂肪酸の品質を2年以上保つことは難しいかもしれないという。

  • UBCの研究チームは、オメガ3脂肪酸のカプセル化に向けて試行錯誤を続けているという

    UBCの研究チームは、オメガ3脂肪酸のカプセル化に向けて試行錯誤を続けているという(出典:ブリティッシュコロンビア大学)

そして別のアプローチとして、木材の繊維に由来するセルロースナノクリスタルという結晶を活用する方法に着手。この結晶は非常に細かく、油と水をうまく繋げてくれるものだといい、もしこの方法がうまくいけば、サプリメントのようにカプセルを摂取する方法以外にも、コーヒーやスムージーに入れるクリームのような形で利用できるかもしれないという。

いかがだっただろうか。今回紹介したUBCでの研究は宇宙での活用を想定しているが、現在のヨーロッパで見られる戦時など、物資のサプライチェーンが崩壊するシーンでも有効に活用されるものになるだろうとしている。