2022年6月30日、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)は、フィナステリド、ミノキシジル以外の強力な発毛成分を発見したというプレスリリースを発表した。では、この新しい成分とはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

発見したフィナステリド、ミノキシジル以外の発毛成分とは?

では、UCIが発見した強力な発毛成分とはどんなものだろうか。それは、「SCUBE3」と呼ばれるシグナル伝達分子だという。今回のUCIの研究成果は、SCUBE3が毛乳頭細胞の成長を促進するメカニズムを特定したというものだ。

髪の毛は、毛母細胞の細胞分裂によってできた細胞の蓄積によってできている。そして、その毛母細胞の細胞分裂に栄養や指令を与えるのが、毛乳頭細胞だ。毛乳頭細胞は毛根の中央部にあり毛細血管と繋がっていて、血液から栄養を届けている。SCUBE3は、毛乳頭細胞から毛母細胞への栄養や指令の伝達を活性化させるのに役立っているというのだ。

研究チームはマウスによる実験を実施しており、その結果SCUBE3が過剰な毛髪の成長を促進する可能性があること、そしてSCUBE3がこれまで知られていなかったシグナル伝達分子であることを特定したという。

  • 発毛を促進するシグナル伝達分子「SCUBE3」

    発毛を促進するシグナル伝達分子「SCUBE3」(出典:カリフォルニア大学アーバイン校)

現在は薄毛治療に効果があるとして、フィナステリドとミノキシジルの2成分を含む商品が医薬品として販売されている。なかでもフィナステリドは、男性のみ使用が認められている。しかしながらその課題として、これらの成分は効果を持続させるために毎日の服用を必要とする。SCUBE3は、このような課題を解決してくれる次世代の育毛剤になる可能性があると期待されているのだ。

なお、この研究成果は『Developmental Cell』にてオンラインで掲載されている。

  • 論文の責任著者であるUCIのMaksim Plikus博士

    論文の責任著者であるUCIのMaksim Plikus博士(出典:カリフォルニア大学アーバイン校)

いかがだっただろうか。日本では数多くの男性が薄毛で悩んでいるというデータがある。今回の発見は、彼らの悩みを解決してくれる大きな進歩になるかもしれない。またUCIは、SCUBE3の育毛剤に関する仮特許出願を提出しているという。2014年時点の古いデータではあるが、薄毛マーケットの市場は約4,414億円規模だとされている。今回の研究成果も、今後ビッグビジネスになる可能性が高いだろう。

  • 日本国内で見ても薄毛に悩む人は多いが、SCUBE3はその悩みを大幅に改善する発見になるかもしれない

    日本国内で見ても薄毛に悩む人は多いが、SCUBE3はその悩みを大幅に改善する発見になるかもしれない