英国Babraham Instituteから皮膚細胞を新しく若返らせる技術を開発したというプレスリリースが発表された。

この技術によって、30年は肌を若返ることができるすごい技術だという。では、この皮膚細胞を新しく若返らせる技術とはどのようなものだろうか。

今回は、そんな話題について触れたいと思う。

新手法MPTRとは?

英国Babraham Instituteが発表した研究成果は、科学ジャーナル「eLife」にも2022年4月8日付で掲載されているという。

彼らが開発したのは、MPTR(maturation phase transient reprogramming)という手法。

これはどのようなものだろうか。その前に人の老化のメカニズムから簡単に説明したい。人の細胞は、年齢とともに機能が低下し、そして細胞を複製する際にエラーを起こしやすくなる。このエラーが、疾患や老化につながるのだ。

その細胞を修復したり置き換えたりする治療法が再生医療。再生医療の中にiPS細胞がある。iPS細胞は誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥教授が開発したものだ。iPS細胞とは、あらゆる種類の細胞に成長する特別な能力を持つ細胞。皮膚など成熟した細胞に特定の遺伝子を組み込むことで、細胞が初期化されて多能性を持つ幹細胞に誘導(リプログラミング)することで作られるのだ。

iPS細胞を作るには、山中因子と呼ばれる4つの遺伝子を導入して、50日間という時間がかかるのだという。そしてiPS細胞は、皮膚、筋肉、臓器などそれぞれの機能を持つ細胞へと分化することができるのだ。

今回の研究では、この50日間を13日間に培養する時間を短縮することで、皮膚細胞としての機能を保ったまま細胞を若返らせることに成功したというもの。この手法がMPTRだ。このMPTRの手法で作製した細胞を確認したところ、30歳若い皮膚細胞のプロファイルと一致したという。

また、今回作製した皮膚細胞の線維芽細胞についてもMPRT処理をしていない細胞と比べて、多くのコラーゲンを産生し、修復に必要な部位に素早く移動することが認められたというのだ。

  • MPTRによりコラーゲンが多く算出されている結果

    MPTRによりコラーゲンが多く算出されている結果(出典:Babraham Institute)

いかがだっただろうか。他にも、アルツハイマー病に関連する遺伝子や白内障の発症に関与する遺伝子などの加齢に伴う疾患に関係する遺伝子にも関連していることが明らかになっているという。

皮膚細胞の機能である傷修復だけでなく、他の疾患の治療法につながる可能性もあるのだ。MPRTのメカニズムはまだ完全に解明されていないというが、再生医療にとって画期的な発見になるかもしれない。