エアロゲルをご存知だろうか。90%以上は空気でできているという地球上の固体で最も軽く、最も屈折率が低くて、最も断熱性能の高い素材。そのエアロゲル市場にメスをいれようと尽力しているのは、ティエムファクトリ。
では、ティエムファクトリのエアロゲル「SUFA」とはどのようなものなのか、どのような取り組みを実施しているのか、今回はそんな話題について、紹介したいと思う。
ティエムファクトリのエアロゲル「SUFA」とは?
今回、主題となるエアロゲルは、1931年にスティーブン・キスラーによって発明されたものだ。
エアロゲルは、超臨界乾燥装置という非常に高価な装置で製造する必要があったという。そしてこの超臨界乾燥装置自体のサイズに、製造されるエアロゲルのサイズも制限されてしまうなど、エアロゲルの実用化や市場拡大に少なからず影響を与えてしまっていることは否定できない。
そのようなエアロゲル市場にメスを投じるべくティエムファクトリは始動する。同社は、山地正洋氏がCEOを務める企業。山地正洋氏は、慶応義塾大学で博士号を取得。その後、京都大学に在籍中にティエムファクトリを設立。2008年にはMicrooptics Conference(MOC)微小光学国際会議にて最優秀論文賞受賞するなどすごい人物だ。
ティエムファクトリは、京都大学とともに超臨界乾燥装置を使わずともエアロゲルを製造できる手法を開発。
開発したエアロゲルがSUFA(Super Functional Air)だ。SUFAは、常圧での製造が可能。乾燥装置のサイズに影響されず、大判のモノリス(透明板状)をリーズナブルな価格で生産することが可能だ。他にもSUFAは、柔らかく、非常に微細、強力な撥水性を有しているため、従来のエアロゲルに比べて扱いやすくて、透明度も高く、劣化も起きにくいという特徴を持っているのだ。
SUFAの詳細な物性については、省略するが、SUFAは、世界で最も使われている断熱材であるグラスウールの約3倍の断熱性能を持っているという。それは、従来の断熱材と同じ性能であれば、厚さが1/3で済むことを意味する。
そして、透明である点、軽量である点、撥水性、柔らかいなどの特徴を活かせば、今後の建築、モビリティ、宇宙など市場への実装において大きな変革をもたらすことは間違いないだろう。
ティエムファクトリのスゴいところは技術だけじゃない! 緻密なビジネススキームとは?
ティエムファクトリは、単にSUFAの製造、サプライヤーとして活躍するだけではない。緻密なビジネススキームを計画している。プレイヤーは、生産パートナーと共同開発パートナーなどが存在し、知財を提供したり、共同開発を行うなど、より多くの製品化や市場拡大を目指しているのだ。
いかがだっただろうか。SUFAの量産に成功することができれば、ティエムファクトリは世界初の透明断熱材サプライヤーとなるのだ。これは、さまざまな市場に大きな変革をもたらすことが期待できる技術とビジネススキームだ。