生成AIがもたらす変革の可能性において注目を集め続ける中、従来のAIやML(機械学習)が影を潜めてしまう危険性がある。しかし、その一方でマッキンゼーは「生成AI以外のAIアプリケーションが、今も変わらずAIの潜在的価値の大部分を占めている」としている。

生成AIが従来のAIの違い

当社でも5年前に初めて自然言語処理と生成機能においてAIを導入し、現在は11の言語で完全対話型の検索、チャット、社内データの自然言語生成を実現している。このように、従来型AIの手法は依然として計り知れない価値と関連性を保持しており、近い将来には生成AIよりも重要になる可能性が高く、影を潜めてしまうという考えは間違いである。

本稿では、従来のAIが多くのユースケースで不可欠である理由と、データから付加価値を生み出すために生成AIと並行して従来のAIを活用する方法を探る。

生成AIが従来のAIと異なり、ここまで注目されるのはなぜだろうか?従来のAIがパターンの検出、インサイトの生成、自動化、予測に重点を置いているのに対し、生成AIはコンテンツ生成の指針となる関連データとともに、ユーザーが質問をすることができるよう促すところから始まる。

従来のAIアルゴリズムはデータを処理し、分析や予測など期待される結果を提示するが、生成AIのアルゴリズムは、既存のデータからのトレーニングにもとづいて、テキストや画像のような新しく合成されたコンテンツを生成する。

生成AIが急速に普及した理由は、エンドユーザーに影響を与えるからだ。現在、誰でもChatGPTにログインして使い始めることができる。これはAIアプリケーションとしては初めてのことで参入障壁がない。

従来のAIでは、良い結果を生み出すように設計されたモデルを開発しテストするために、厳密なデータ準備とプロセスが必要だった。生成AIでは、ただ会話を始めるだけで、あなたが何をしたいのかを理解し、答えてくれる。

では、なぜ従来のAIを使うのだろうか?なぜなら、生成AIは素晴らしい新機能ではあるが、コンテンツ生成や要約、あるいは従来のチャットボットの機能拡張といったユースケースに最適な、まだ新しい技術だからである。

一方、従来のAIは自動化されたインサイト(「前期の売上は前年と比較してどうだったか」)、予測モデリング(「来月の売上はどうなるか、何がその背景にあるか」)、インテリジェントなアラート(「顧客の支出が一定のしきい値を超えたことを検知したらアラートを出す」)、テキスト分類(「人名、組織名、契約金額を抽出し分類する」)といったタスクのための自然言語処理など、非常に効果的なアプリケーションを幅広く持っている。

したがって、マッキンゼーのような企業が、AIの潜在的な価値全体の大部分を従来のAIが占め続けると見ているのも当然である。

従来型AIにおける3つの事例

Qlikでは、データサイエンティストの枠を超え、ローコード機械学習の影響をビジネスアナリストに開放した結果、従来型のAIの活用事例を目の当たりにしている。AIがさまざまな規模や業界の組織に測定可能な価値をもたらしている例をいくつか紹介しよう。

事例1:従来のAIを利用して、大幅な経費削減と患者の転帰改善を実現

従来のAIで価値を向上させている組織の好例は、米国のアパラチアン・リージョナル・ヘルスケア(ARH)だ。ARHは自動機械学習を使って、どの患者が予約に遅れたりキャンセルしたりするリスクが最も高いかを割り出している。

データを使って、交通手段、距離、地域の天候など、さまざまな要素を分析している。この情報をもとに、看護師やサポートスタッフは、遅刻やキャンセルをするリスクの高い患者に適切な方法でリマインダーや安心感を与えることができる。

これにより、ARHは予約のキャンセルや無断キャンセルを減らし、何百万ドルもの経費削減に成功した。単純に聞こえるかもしれないが、実は非常に価値のあることなのだ。

事例2:新たなビジネスチャンスを発掘するための従来型AIの活用

米国のグレイ・アソシエイツ社は、高等教育に特化したソフトウェアとサービスを提供する企業であり、学生、学校、その関係者にとって成果をもたらす、データにもとづいた組織戦略の策定を支援している。

同社はAIを活用したアナリティクスと自動機械学習により、立地評価と予測モデリングサービスを提供している。クライアントからデータを収集し、米国国勢調査データなどのビッグデータソースや、地域の求人情報、既存の大学や専門学校のマッチングプログラムなどの競合指標から予測的インサイトを導き出す。

同社のサービスは数十社の教育関連企業で利用され、成果を上げている。例えば、StrataTech Education Groupは、グレイ・アソシエイツのアドバイスを受けてヒューストンに開校した学校から150万米ドルの収益を報告している。

事例3:気候目標を達成するための従来型AIの活用

C40(世界大都市気候先導グループ)は、世界の主要都市の約100の都市が参加するグローバルネットワークで、気候危機に立ち向かうために一致団結して取り組んでいる。2006年に東京都も加盟し、翌2007年には副議長都市に任命されている。

C40では、膨大になりがちな気候データセットに機械学習を適用し、AIツールと組み合わせることで、気候のトレンドや排出量データを分析し、C40やその加盟都市が行動を起こすのに役立つパターンを見出している。

これにより、ガーナのアクラなどは、住民の健康を改善しながら排出量を削減する具体的な対策を講じることができるようになった。現在、1万7000の自治体にまたがる84万人のユーザーが、C40のナレッジ・ハブを通じてこうしたインサイトを活用している。

有益なデータ活用を可能にするAI

AIがもたらす価値について私が最も興味をそそられるのは、こうした有益なデータ活用のエピソードだ。

今春、ニューヨークで開催された国連ウォーターカンファレンスにおいて、企業、政府および関連機関が新しいデータのインサイトと文脈を利用して、どのように現代の最も重要な意思決定に情報を役立てられるかを学ぶため、水と気候の危機を管理するためにAIが持つ可能性を探り、専門家とイノベーターと議論した。

その結果、AIが水供給の管理、水不足の予測、水の危機への対策において重要な役割を果たすことを確信しており、今後も継続して取り組んでいきたいと考えている。