生成AIの爆発的な盛り上がりは、インターネットが出現したときのように、その変革の可能性が大きな注目を集めている。一方で、インターネットについて、それ一般に登場した1995年ごろは、分からないことだらけで、どのように活用するのが最善なのか、従業員や学生に無制限にアクセスさせることが良いのかなど、仕事と教育の両面で見通しが立っていない状況があった。

生成AIは、今まさにその状況にあると言える。そして、不確実性には未知なるものへの恐怖がつきまとう。企業は、行動に移してトラブルに巻き込まれることを恐れ、また行動せずに取り残されることも恐れている。本連載の第1回目では、AIで成功するために、データが出発点となる理由と最善の道筋を探る。

すべてはデータにもとづく

生成AIは、大量のトレーニングデータを使ってデータのパターン、関係、構造を学習するため、データに依存している。

トレーニングデータは、モデルが新しく意味のあるアウトプットを生成するための基礎となる。簡単に言えば、データなくして生成AIはありえないということだ。データ、特に「正しい」データこそが重要であり、きちんと整えられたデータを揃えることがすべての始まりなのだ。

マッキンゼーが公開したレポートでは、新しいデータと技術スタックの実現が、生成AIへのアプローチを成功させるための重要な戦略であることが強調されている。

アクセンチュアの最新レポートでは、この新しいパラダイムが「データの課題を解決することは、すべてのビジネスにとって緊急の優先事項である」と報告している。

では、何から始めればいいのだろうか?私は、生成AIによるアプローチを成功させるために必要なデータの基本的なポイントが4つあると考えている。

1. データの多様性

AIを活用するには、複数のソースからデータをまとめる能力が不可欠だ。ご存知のように、今日のデータは組織においてかつてない速度で生成され、メインフレーム、SAP、ファイル、SaaSアプリ、複数のロケーション、さまざまなフォーマットなど、ますます多様なソースから発信されている。

複数のソースからのデータを統合することで、AIシステムは多様な情報にアクセスできるようになり、より包括的で正確な分析が可能になる。このように集約することで、AIモデルは貴重なインサイトを発見し、パターンを特定し、情報にもとづいた予測を行うことができる。

さらに、異なるソースからのデータを組み合わせることで、単一のデータセットに依存することで生じる可能性のあるバイアスや制限を緩和することができるため、AIアルゴリズムの全体的な品質と堅牢性が向上する。つまり、複数のソースからデータを統合する能力は、AI アプリケーションの有効性と効率性を高めるのだ。

2. データガバナンス

データをAIのソースとして使用するには、データが整理され、信頼できるものでければならない。

今日の生成AIの大きな懸念事項の1つは、データのセキュリティ、プライバシー、ガバナンスをどのように維持し、不正確または不完全な情報に基づく誤った結論のリスクをどうやって軽減するかである。

組織は、例えばヨーロッパで間もなく導入される新しい規則を含め、数多くのデータ・セキュリティやコンプライアンスに関する規制やプロセスを遵守する必要がある。

さらには、質の低いデータや管理されていないデータは、スマートなビジネス上の意思決定、優れたデジタル体験の構築、プロセス効率の改善、さらにはイノベーションを促進する組織の能力を損なう可能性もはらんでいる。

3. 使いやすいインサイト

AIのアウトプットを効果的に理解するためには、テキストと、他のアナリティクスとの関連性のあるチャート、グラフ、インタラクティブなビジュアライゼーションなどの視覚的な表現の両方を組み込んだ、使いやすい方法で提示する必要がある。

AIシステムには膨大な量のデータとインサイトを生成する能力があるが、これらのインサイトを人間が容易に理解、リアルタイムで連携し、行動を促すことができる形式で提示することが重要だ。

これはチャット・インタフェースよりもはるかに重要だ。生成AIはまた、導入の障壁となるデータリテラシーへの対策にも役立つアプリケーションがより多様でインタラクティブであればあるほど、あるいは複数のデータソースからデータを引き出せれば引き出せるほど、最終的に提供できる価値は高まる。

そのため、複雑なデータ問題に従来の人間による分析と機械による補強の両方で対処できるオープン・プラットフォームは、今後も真の測定可能な価値を促進し続けるだろう。

4. 接続システム

データから得られるインサイトは、それに基づいてアクションを起こすことができてこそのものだ。

生成AIのアウトプットを業務システムに導入し、プロセスが自動化することで、チームがアクションを起こせるようになれば、そのときこそ、ビジネスがこの新しい革新的なテクノロジーから真の恩恵を受けることができるときである。

統合されると、AIを活用したアナリティクスは、入力されたデータをリアルタイムで継続的に分析し、事前に定義されたトリガーや閾(しきい)値に基づいて、即時のインサイトや提案をもたらす。

これらのトリガーは、特定の条件が満たされたときに決まったアクションやアラートを実行するように設定できる。例えば、顧客データを分析したAIモデルが潜在的な解約リスクを検出した場合、顧客に自動でメールが送信され、解約を防止するキャンペーンを展開するなども可能だ。

データの未来は今

これまで、データと分析プラットフォームは人間が利用するために構築されてきた。しかし今後は、AIがこうしたプラットフォームの運用方法を再構築するだろう。

つまり、これからは生成AIのためにデータを整理し、統合し、キュレーションする方向へと明らかにシフトしていくということだ。これにより、人間が利用するためのデータインサイトが生み出され、すでに分類されている大量のデータをより効率的かつ効果的な方法で利用できるようになる。

データ分析にAI機能を組み込むことは、リアルタイムでより深い洞察を得るための方法である。私たちがすでに使っているシステムにAIを組み込むことは、AIを使い慣れたツールと融合させることで人間がAIを受け入れることを実証し、未知なるものへの恐怖を克服することを可能にするだろう。